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そうぞうしたタンサイボウな異世界で  作者: 吉田玲
チャプター1 序章
7/22

第7話 秘密と死体消失

 新海清彦は朝から悩んでいた。本を持っていくかどうか、である。まさかとは思うがこの時に限って空き巣とか来ることはないだろう。しかし、だからといって学校に持ってって国田さんみたいになっても困る……。あぁ、あんな風に「この本を守るよ!」なんて安受けするんじゃなかった。おそらく一番安心するのは、自分の目から話さないようにすれば大丈夫だろう。もしトラブルがあったらあったでその時だ。責任はしっかり自分で持つことにしようと心に決める。


 もう少しで待ち合わせの時間だ。しっかり家の戸締りとか確認して外に出る。外に出ると国田真希はもう先に出ていた。


「おはよう、国田さん。早いね、いつも待ち合わせは早めに来るんだ?」


「うん、約束した方から待たせるのは良くないって思って、2時間前に来てみたんだけど……」


(早すぎるわ)


「え、大丈夫? 体とか何ともない?」


「大丈夫だよ。これくらい多分大丈夫だよ」


 まるでギャグ漫画のようなボケを国田にかまされながら学校へと向かった。因みに本当に2時間前からいたらしい。


……



………………



(とりあえず、今日は何も無いといいな)


 新海の祈りが届いたのか、本当に何も無かった。それもあって今日は隣のクラスにいる東健(あずまたけし)と話していた。


「へぇ、そりゃあ災難だったな。」


「────。」


 想像していた学校生活とは、かけ離れた何かに触れてしまっては楽しみなものも楽しめなくなる。非常に肩が重い。


「まぁ、そう気を落とすな。何かあれば相談に乗る。何かしてあげられる訳でもないが、小さい頃からのよしみ(・・・)ってやつだ」


 東と新海は幼なじみであり、お互いのことはよく知っている。東は出来がよく、新海が小さい頃から何かあれば助けられていた。要するに新海は東に借りが多い。だから新海はこんなに頼っていていいのかと、今まで自問自答を繰り返していた。しかし人間そうもいかず、1人ではなにかと限度がある為今回も頼ろうと思ったわけだ。


「いつも悪いね。いつかこの分の借り……返さなきゃな」


「そんなくだらないことを考えてたのか。俺がお前を助けるのに理由はないし、好きでやってるからいいんだよ」


 少し心が軽くなったように感じた。中学校が違ったためしばらく話していなかったが、理解し合える人と話すのはとても気持ちがいいものだ。などと考えていたら昼休みが終わった。2人は上がっていた学校の屋上から元の教室へと戻った。このあとも特に何も起きなかったので新海としては一安心だ。




 次の日の朝……。



 今日も国田と一緒だ。だんだん国田と口数が少なくなってきた。ちょっと心配になる。体調が悪いのか聞いても大丈夫らしいから特に言及はしない。


 こんな感じで何とか普通に過ごせた。以外にもあっさり過ごしちゃってこのままでいいのかと思ってしまうほどで、逆に何も起きないあの日だけの非日常は何だったのかと思う。





 1週間後…………。






 国田はすっかりあの本のことについては気にしていないようで、いつしか俺達は普通の学校生活を送っていた。やっぱり持ち歩いて正解だった。そういえば、国田は友達ができるか心配だったって言ってたけど、なんか田部日和(たなべひより)とか様々な女子と仲良くなってるみたいで良かった。新海も国田に負けないように友達作る。



 〜昼休み〜


 新海は一人でご飯を食べていた。そしたら、東条アリス(とうじょうありす)が新海の机の前にやって来て、


「あんたさぁ、なーんか引っかかるんだよね。なんというか、あんた、隠してるでしょ」


「なんのこと?」


「うーん、違うかなー。なんかあんたの事が無性に気になるのよね。いや、違う。あんたの持っているものかな」


「これといって面白いものはあいにくもってないよ」


「ちょっとカバンの中見せて」


「ちょっと! ま、待ってよ! 勝手に人のカバン漁らないで!」


「いいから、見せてよ!」


「いいじゃん〜ちょっとぐらい。減るもんじゃある」


 彼女はセリフを言いきれなかった。そりゃあそうだ。突然、東条の体から血が飛散するのだから。


「キャーーーーーー !!!!!」

「なんだなんだ !?」

「血だ! 血が出てる!」


 突然のことにクラスがざわめく。そして一斉に教室から逃げ出す。さぞかし驚くだろう。いきなり東条が全身から血を吹き出したのだから。水風船が破裂したみたいに血が爆散していく。


(やばい! それを見た国田さんが絶叫している!)


 彼らは思い出した。忘れていた悪夢を、目の前に広がる非日常を。


「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 嫌ぁ!! 嫌ぁ!! 嫌ああああ!!!い"や"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ" !!!!! 」


「国田さん! 落ち着いて! まず見ちゃダメだ!」


 新海は国田に話しかけるも全然声が届かない。耳を塞いで首を大きく横に振りながら、発狂している。現実を見たくない一心で。


(どうしよう。いきなり人が死ぬなんて思っていなかった)


 依然として東条は体を痙攣させながら全身から血を垂れ流して倒れている。あまりの状況に少々意識が飛びそうになるが我を取り戻す。


「きゅ、救急車だ! 救急車を呼ばなきゃ! でも、学校でスマホを使っちゃいけないし……い、いや、そんな事考えてる場合じゃない! 今は緊急事態だぞ?! まず落ち着いて119だ!」


 急いで119番にかける。だがしかし、どうやって説明する? 急にクラスメイトが血を出したなんて言ったってどうせ信じないに決まってる。


(どうやって、説明をする? ……落ち着け…………落ち着け………………)


『火事ですか? 救急ですか?』


「きゅ、救急です! 人が怪我をして倒れてるんです!」


『落ち着いてください。場所はどこですか?』


(……あれ? アリスさんは? さっきまでいたのに、目の前にいたのに、消えている? 血の池は俺の足元にあるのに、亜里子さんだけ消えている……。どういうこと? あの状態で動けるはずがない。大量出血とか全身に傷とかあって簡単に動ける状況じゃないぞ……ますますわからなくなってきた)


『聞こえますか? 場所はどこですか?』



「あ、あの、怪我人が消えたんですけど……」



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