第5話 救世主
(くっ……、もうこれまでか……)
そう思った矢先、幼児の叫び声が聞こえた。もう大丈夫かと後ろを見ると、矢の形状をした電気エネルギー状の何かで貫かれた肉塊が、もとい幼児が脳天から貫かれ、鮮血を至るところから垂れ流している。幼児の顔はこの世では見たことのないおぞましい顔をしていた。
「お怪我はないですか?」
どこからともなく声が聞こえる。大人しい男の声だ。
「な、なんともない。ありがとう、助けてくれて。ってどこにいるんだい?」
「はは、見つけられなくても仕方が無いですよ」
「そ、そう。名前は?」
「そうだね。君の救世主とだけ言っておこう」
「名前はないのか」
「まぁ、そのうち会えるさ」
「気持ち悪いです」
「おやおや、命の恩人に向かってそれは無いですよ」
未だに姿を見つけることが出来ない。ここから矢を打てる場所など、周りは背の高い木だらけであり見つけようにもなかなかに難しい。
「そういえば他に見かけなかった? 外の世界から来た人」
「外の世界? 私が知っているのはこの世界だけさ」
「じゃあ、なんか人が集まりそうなところとか知らない?」
「そうだね、ここら辺は森一帯となっているしここから出るにも2日はかかる。」
「なんてこった……」
そんなに時間がかかるとは想像していなかった。さっきまで歩いていて広い森だと思っていたけど、まさかそこまで大きいとは思ってもいなかった。
「ここらか出してほしいかい?」
「え、できるの?」
「私の手にかかれば御茶の子さいさいですよ」
これは利用しないわけには行かない。だがその前に国田さんを見つけなければならない。一人で勝手にこの森から脱出するわけにもいかない。
「どうします?」
「帰りたいのは山々なんだけど俺には探している人がいてね。そいつを見つけてからにしたいんだ」
「なるほどね……それなら私も手伝ってあげるよ」
手伝ってくれるのはいいが、この男は一体何なのだろうか。
「うん、有難いけどそろそろ姿を見せようか」
……
…………
……………………
「こっちの方によく迷ってる人を見かけるんだ」
こんな台詞をどこかから言われながらその声に導かれるように辿っていく。
「そうだね……ここ辺りを探してみたらどうだい?」
と、案内されても同じような光景しか新海の目には入ってこない。そろそろこの男がなにか企んでないか怪しく思える。
「おい、どこに行っても同じ光景ばかりじゃないか。本当に協力してるの?」
「……そろそろかな」
と、謎の声はそう言った途端に背後に悪寒がする。背後から迫り来る何かを察知して振り向いた瞬間。
目と鼻の先にはあの大きな矢のようなものがあった。