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そうぞうしたタンサイボウな異世界で  作者: 吉田玲
チャプター1 序章
4/22

第4話 Otherworld


 時は放課後、国田真希が新海清彦の見つけた本を使ってなにやら試したいことがあるとのことで、二人で新海清彦の家にいる。

 新海清彦の家と学校は近すぎず遠すぎない場所にある。徒歩15分と言ったところか、距離にして1.5kmだ。

 もう待ちきれないのか国田真希が食い気味に話しかける。


「ねぇねぇ! それとりあえず何か書いてみようよ!」


「とりあえずって言ったって……」


「じゃあ、好きなアニメの世界とか、ゲームの世界とかそんなんでもいいんじゃない?」


「そんなにいうなら国田さんが書いてよ」


「んー、じゃあ……適当に異世界って書いておこう」


「え、ふざけてるの?」


「だって、それ以外に何を書いたらいいか分からないし……ってもう書いてあるじゃん」


「あ、本当だ。パッと見た時は特に何も書いてなさそうだったけど既に書いてある」


 どうやらこの世の文字ではない何かで書いてあった。それはそれは魔法の書といえば如何にもなものである。ここまで書いてあるとにわかに嘘ではないような気もしなくはない。やはり信じたくはなかった。




 準備は整っていそうなのだが……特に何も起きない。国田が不思議そうな目で本を見ているとあることに気がつく。


「これさ、なんか呪文とか必要なのかな」


「呪文か、たしかにこういうのは引き金みたいなの必要そうだよね」


「でも、呪文っつったってなー……じゃあ適当にー、Erster Start!」


「な、なんて?」


 国田が英語? を唱えると、突然あたりは光に包まれる。








 気を失っていたようで新海は地面と熱い接吻をしていた。しかも結構ディープなやつのようで口の中がジャリジャリする。彼にそういう趣味は持ち合わせていないが、地面に少し埋もれてたというのが正解か。


(しかし、ここはどこ? とりあえず外にいるのはわかる。あたりを見渡すと、湖と林がある。しかも、俺は謎の本も持っている。あ! そういえば国田さんはどこだろう? 少し探したけど近くにはいないらしい)


 見知らぬ世界で一人。寂しささえも誰にも構ってもらえず、時が経つにつれ不安感を煽るばかり。悩んでいても仕方が無いので適当に歩いてみることにする。



……



…………



…………………………。




(1時間ほど歩いて誰にも合わないとかどれだけ過疎ってるんですかここは)


 他に手がかりとか無いかな、と辺りを見渡す。だが辺りよりも自分が今手にしている本のほうが気になった。


(そういえば、この本ってなんだっけ? もう一度見てみるか)


 本のページをくまなく見てみると、また更に発見した。なんとこの世界に行くととある能力が使えるようだ。この本を開発(?)した誰かがこうやって異世界に行っても苦労しないように追加でつけたのだろうか。なんにせよ、今の自分にとってはとてもありがたいことだ。


 新海は強く念じてみる。心の内側から力が溢れ出るように。

 すると、なぜか銃器が出てきた。もしかしてと思い思考を巡らせる。この能力は、銃器を使える能力。そして自分はミリタリーが好きである。つまり自分の趣味嗜好にあった能力が付与される仕組みなのだろうか。悪くない。


 とても心強いことを知り、また国田探し出す気力も戻ったところでもう一度探索を開始する。



 2時間くらい歩いただろうか。森を散策していると、木の影から幼い男の子が出てきた。ここは幼児がフラフラと出歩けるような場所ではないはずなのだが……。


「ねぇねぇ、君はどこから来たのー?」


「え、どこからって言われても、たぶん説明出来ないよ」


「へー、じゃあ、君は外の人間?」


「外?一体さっきから何を言ってるんだい?」


「そっかー、じゃあ……食ベテモ問題ナイネ……アハハハハハ!!」


 瞬間、新海の脳裏に最悪のシナリオが描かれる。そしてこの幼児は悪魔のような形相を作り、一気に新海へと距離を詰める。


「────っ!」


 逃げる。何も考えずに。でも、向こうは簡単にそうはさせてくれない。幼児とは思えない位の足の筋肉が発達しているのだろうか。奴には背を向けて走っているのでよく確認出来なかったが、かなり離れていたはずの距離も目を瞑った後には、奴の手は俺の首元を鷲掴んでいた。


 生まれて初めて死の恐怖が全身に襲いかかり震え戦く(おののく)。思わずはしたない叫び声をあげてしまった。


「やだ! 死にたくない! まだ16だし、初恋してないしやりたいことあるし、とにかく嫌だぁぁ!!」


「つっかまーえたー♪」


 後ろからしっかりと首を絞めあげられている。恐ろしいことにこれだけでも逃げることは不可能なようだ。全く身動きが取れないうちに幼児は処刑対象(エモノ)を捕食する準備に取り掛かっている


「いっただっきまーー……」


 首を絞めあげられ、脳に酸素が行き届いていなく視界が悪いのでよく見えないが、おそらく口を開けて食べようとしているのが音でわかる。

(あぁ、楽しい人生だったよきっと。この本のことは国田さんに任せよう。あ、でも俺が持ってるから任せようにもできないな。……食べるなら早く食べてくれよ)

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