第2話 幽玄の淑女
〜登校日1日目〜
新海清彦は学校へと向かう一つの道を進んでいた。今日は自己紹介をするという一大イベントが行われる。イメージとか第一印象とかその人の持つすべてが決まってしまう日でもある。いや、あながち間違いという訳でもないが、本人達にとっては今日のスタートが学校生活の第一歩だと感じるように、それほど重要な日と捉えている。
こんなことを考えながら道をひたすら歩いていると、一つの何かを見つけた。
「なんだろう。………本? のように見える………」
なんとその本は何も書いていなかった。恐らくメモ帳なのだろうが、それにしてはやけに分厚い。しかも捨てられていたという割にはあまり傷がついていふようには思えない。むしろ驚く程に真っ白である。
このメモ帳のようなものが今後の物語を描くことは誰も知るよしもなかった。
道を抜けると校門が見え、新海清彦は敷地内に入る。玄関前には生徒指導の先生だと思われる人が立っている。遅刻指導等をしているのだろう。その先生達に一つ挨拶を交わし玄関に進む。
この一連の流れがとても速くも遅くも感じる。段々と教室が近づいて、それと共に胸の高鳴りを覚え、遂に教室のドアの前まで到達した。
そっと片引き戸の取手に手をかけ、ゆっくりと戸を開けると、
そこには誰もいなかった。
予想外の結果に思わず固まる。時間は家から出る時にちゃんと確認したし、先ほど玄関で先生と挨拶をしたばかりだ。こうなると先生が朝早くから玄関にたっていると思うと、ご苦労さまですとしか思えない。
頭を働かせていた矢先、突然後ろから
「おはよう!」
と女子が挨拶してきた。思わず驚いてしまい変な声が出たのは無かったことにしよう。
その子の容姿は、肩まで伸びた綺麗な黒髪でとてもお淑やかな感じ。黙っていれば淑女そのものなのだが、見た目によらずとてもお喋りで、特にオカルトの話になると地球が滅んででも話してる程に長いし輝いたように元気だ。今のところこの教室にはこの子くらいだ。
「君、名前は?」
「名前を聞く時はまず自分から。じゃなくて?」
「あ、あぁ僕は新海清彦。君は?」
「僕は国田真希よろしくね!」
彼女は一人称が「僕」らしい。本当に、中と外が割に合わない程に見た目とのギャップが恐ろしい。天は二物を与えずということだろうか。話してる分にはとても楽しいしそこまで気にしないことにした。
因みに誰もいなかった理由はただ単に新海清彦や国田真希が早く来すぎただけである。
ホームルームまでかなり時間があるし、暫くオカルト娘と時間を潰すことにした。