第15話 協力と収穫
「えー、また行くのー?」
「だって調べるには入って試すしかないよ」
ここは新海清彦の家の部屋。また本の世界に行くことを拒む東条アリスと調べたくてしょうがないフランソワ・ヴィドックがいる。
「しかし、いつも短時間でしか本の中にいる事が出来なくてなかなか情報を集めにくい環境だと思うんだけど……」
「その点に関しては問題ない。とりあえず死ななければ大丈夫だよ」
「私が暴走したら?」
「それも考えがあるから大丈夫」
「……本当に信じていいのか?」
「ふふん、任せなさい!」
疑心暗鬼の新海と東条に、自信満々のフランソワ・ヴィドック。今までは意味もなくただ本に入ってはアリスに殺され謎の人物にも殺されて、成果が全くなかった。しかし、彼が言うにはそれ以上に期待ができるそうだ。本の中に入って確かめている俺たちからしてみれば、にわかに信じられない話だ。
全員の準備が整い、本の中へと入ろうとする。最近はあまり本を使っていなかったからか、今回は本の方から襲っては来なさそうだ。
「それじゃあ皆、準備はいい?」
「えぇ!」「おう!」
「ひらけ〜ゴマ!」
『『圧倒的カッコ悪いッ!!』』
フランソワ・ヴィドックが締まりの無い合言葉で本の中に入った。
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今回のスタート地点も毎度お馴染みあの薄暗い森だ。ランダムリスポーンかと思っていたが意外と違うらしい。決まってこの森のどこかで異世界入りしている。
周りには……寝ている東条と今しがた起きたフランソワ・ヴィドックがいる。今回はバラバラにならなかったようだ。
いきなりヴィドックが短剣を構えてアリスの首元を切り裂く。
「な、何をしているんだ?!」
「起きられたら困るからね、先に殺しておくんだ。といってもこの人は死ぬ事は無いし所詮瀕死程度にしかならないからただの時間稼ぎだね」
恐らく起きる前に仕留めて新海らが行動しやすくしておくのだろうか。
「さ、新海清彦くん。東条さんが起きる前に一旦王都を目指そう」
「お、オウト? 吐くの?」
「それは嘔吐。この世界で一番大きな国で王様がいるところさ」
「そんなところ本当にあるのか? そもそも、なんでそんなものがあるって分かる?」
「異世界系のお決まりだよ。それじゃあ、新海君は東条さんを背負って貰おうかな。なんせ僕に力仕事は向いていないもので」
なんか決めつけてるというか、定石を押し付けられている気がするが……異世界に常識は通用しないと思うし仕方ない。あまり人を"おんぶ"したことが無くぎこちない背負い方で東条を運ぶ。女子を初めて背負うからか、背中に違和感を感じる。と言っても想像よりも柔らかくなかったが。
何時間歩いただろうか、やはりこの森は抜けられる気が全くない。富士の樹海よりも危険な気がする。それに比べて東条は相変わらず起きる気がしない。本当に死んだんじゃないのか?でも俺の右耳は確かにアリスの息を聞き取っている。一体どうなっているんだ……。考えても考えても納得のいく理由が見出すことが出来ない。
ヴィドックが暇を潰そうとしてるのか、新海に話しかけてきた。
「この森……抜けられる気がしないね」
新海はどうにでもなって欲しいせいか、まるで頭のネジが抜けたような言動を繰り広げた。
「あーそうだな、なんかワープとか出来ればいいな。まぁ無理だろうけど」
「ワープ……ワープ……そうだ! 君が持っている本の仮想空間を使ってワープをしよう!」
唐突すぎて意味がわからない。
「要するに?」
「その本を使ってワープをする」
どこをどう考えたらその答えや考えが導けるのかがわからない。
「え、えっと……つまり?」
どうしてこんなことが考えつくのか不思議でしょうがない。が、とっても頭の回る探偵ということで納得しておこう。さっきから非常識なことばかりで考えるだけでも頭が破裂しそうだ。
彼の考えはこうだ。本は異世界を"移動"できる。ならば短距離の移動も可能であると考えたようだ。では、どうやって移動するか……。
空白のページを使う。
彼は確かにこう言った。空白のページは何も無い、異世界でも現実でもない、いわゆる仮の世界ができる。……らしい。
「しかし、仮にだ。もし仮に……その仮想空間とやらに入れたとしよう。どうやって元に戻る?」
「君は……魔性力を使う時に何をする?」
魔性力……そういえば俺が銃を使えるのも魔性力の一つだったな……。魔性力を使う時に何をするか……か。はっと俺は思いつき、口に出してみる。
「……ソウゾウ?」
「そう、恐らくこの世界の能力の大半はでは想像力を中心に動いている。つまり、出る場所を想像すれば? その場所に出ることが出来るんじゃないかな?」
この本の持つ能力はすべて想像で決まると仮定したのか。この頭が回らない状況下でこの答えにたどり着いたのは上出来だろう。しかし、想像するったってまだ行ったことがない場所だ。なのに、彼は自信満々にこっちを見ている。何を考えているのか、本当にこいつに任せていいのか心もとない。
「どうする? ワープ、使ってみる?」
何が楽しいのか、目を輝かせながらやつは聞いてくる。初めての事で正直不安だが、俺は背負っているアリスが起きるまでに森を脱出するとも到底思えない。一か八か……賭けてみるか!
「あぁ! 使おう!」
背負っていたアリスを地面に下ろし、本も開いて地面に置く。そして開いたのは空白のページ、仮想空間と思われるページだ。一つ目の問題はこのページの中に入ることが出来るかだ。
何も書いていないまっさらなページに俺の右手を置いてみる。すると、この前に田部さんがやっていたように、俺の手も泥沼の中にずぶずぶと入っていくような感覚を味わった。
「やった! 入れるぞ!」
「よし、そのまま皆で本の中へ入ろう! 東条さんも忘れないでね」
「言われなくても!」
俺たちは仮想空間に入った。




