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そうぞうしたタンサイボウな異世界で  作者: 吉田玲
チャプター1 序章
13/22

第13話 悲報



 新海清彦は学校に向かう準備をしていた。皆は元気にしているかな、この謹慎中に何を考えてたんだろうか、など空想しながら目の前のバックに持ち物を詰め込んでいた。


 俺はゴミ捨て場にゴミ袋を置き、学校へと向かった。




 独り歩く。何処までも澄み渡る、朝によくある独特の余寒。足元から頭のてっぺんにかけて寒気が伝わっていく。






 学校に到着し、自席に着く。まだ誰も居ない。まるで、世界から人がいなくなったように。そんなことは有り得ない、と変な妄想をした自分に嘲笑けた(あざけた)ような独り言を薄暗い教室に投げ捨てていく。声がとても響く。






 刻限は8時になるところ。人が集まり、次第にクラスにも活気が出てくる。ショッキングなものを見た割には元気なものだなと、周りを不思議そうに観察する。

 それと同時に、どこか恐れをなしている。何に対して恐れるのか自分でもわからない。


 そんな中、また彼に来訪者が現れる。少しやましいことを隠しているせいか話しかけられるのが嫌な気分だ。


 短髪で茶髪の男。普通にしてはまぁまぁ顔立ちのいい方。かといってイケメンってわけでもない、可もなく不可もなくっていう言葉がしっくりくるような男が新海に話しかけてくる。


「やぁ、おはよう」


 なんだ、普通の人か。友達でも作りたいのだろうが、生憎(あいにく)そんな気分ではない。が、普通に接しないと怪しまれてもアレなので、いつもどおりに接する。


「うん、おはよう」


 すこし警戒しすぎてどう話せばいいかがわからない。


「僕の名前はフランソワ・ヴィドック。よろしくね」


「へぇ、珍しい名前。親がフランス生まれとか?」


「そうなるね。たまーにだけど、勢い余ってフランス語とか行っちゃうけど、気にしないでおいてよ。癖なんだ。」


「いいな、俺は外国なんて行ったことがなくてね。貧乏でさ、行く金がないんだ。」


「へぇ、いまどき珍しいね。確かに数年前まではあまりグローバルでは無かったからね。なれていないのも仕方が無いよ」


「世の中便利になったな。様々なところへ簡単に行くことが出来る」


「そのうち、技術が進歩して別次元の世界に行けたりなんてするのかもね」


(うっ、なんかこいつ怪しく思えてきたぞ。もしかしてこいつも……? いや、まさかな)


「あ、あぁ。いつしかネットの世界とか行けたりするんじゃないかな」


「ははっ。いいね、そういうの面白そう。新海くんは、アニメとか好きかい?」


(ん? 今、俺の名前を呼んだ? コイツには一度も教えてないのに……。ますます怪しいぞ)


「な、なぁ。なんで俺の名を知っているんだ?」


「なんでって、あんな大事件を起こした張本人がなにを仰ってるんですか。」


「……は?」


 大事件?張本人?意味がわからない。まるで新海自身が犯罪を起こしたような事を言ってるではないか。

 途端に彼は人が変わったように、教室内に響き渡るような大声で、


「分からないんですか?! 貴方は、この教室で、東条アリス(クラスメート)を! あなたの手で殺したじゃないですか!」


「い、いや、違う! 俺は何もしていない!」


 身も蓋もないことを言われ、動揺している俺に、奴は言葉を巧みに使って怒涛な勢いで追い込んでいく。それに合わせて周りの奴らもざわついていく。


「っは!なぁに、とぼけちゃってぇ。」


「だから、俺は何もしていない! 本当に何もしてないんだ!」


 本のことなんて口に出せないし、かといって下手な嘘をつくことは新海にはできない。何もしてない、としか言えない。


(こんなとき、田部さんならどう切り抜ける……? …………あれ? 田部さんは? まだ来ていないのか! このままじゃ俺が殺人犯に仕立て上げられてしまう。くそ、万事休すか…………)


 そのとき、激しい喧騒の中で微かに聞こえたあの人物の声が、俺の耳に届く。


「おはようございあーす。ってお! なんか楽しそうじゃーん」


(この声は間違いない、アリスだ! ここはとりあえず、)


「アリス! いい所に来てくれた!」


 俺のその一声で、新海とアリスを除くクラスにいた全員が一斉に息を呑み、肝を潰した。そして、皆は声を揃えて、


「「「い、生きてる?!?!」」」


 と、叫んだ。誰もが同じことを思っていた。特にフランソワ・ヴィドックとやらは笑ってしまうほどに口を開けている。

 全く状況の掴めない、当の本人(アリス)は目を見張っている。


「へ? は? どゆこと?」


 そんなアリスを置いといて、新海はフランソワに、


「ふっ。どうだ! これが証拠だ! アリスが生きている! 俺は何もやっていない!」


 本当はアリスはここに来ては行けない気がするのだけれど、そんなことはどうでもいい。


 動揺したままのフランソワが、


「しかし、しかし、あんなことが起きたのは事実ですし……なんで、生きてるの?」


 と、俺達に問いかける。するとアリスが、


「そんなの簡単でしょ、私は自己さ────もが! ちょっとなにすんのさ!」


(まずい! うっかり自己再生のことを話してしまう! 口を塞いでどうにかしよう)


「ちょっとまて、その事を話してはマズイだろ。そう簡単には理解してもらえないぞ?」


 彼はアリスの口を塞ぎながら小声で話しかける。


「えー、別に良くない? どうせ『キャー! キモイー! 』とか言われるだけっしょ」


「よく考えてみ。もしかしたらこの場にも俺たちの敵はいるかもしれないんだぜ? となると、自己再生能力の事について言ってしまうと敵に有力な情報を与えてしまう。だから、アレ関係のことについては何も言わないに越したことは無い。」


「……わかったよ。めんどくさ」


 新海らが話し合ってる間に、向こうたちも何やらお話をしているようで、


「え、何あいつら。きもっ」

「何の隠し事をしてんだか」

「あいつらバケモノじゃね?」

「もうこの時期にカレカノですかー?」

「東条さん、今日も可愛いでござる」デュフ


 と、思い思いに喋っている。しかも最後のやつに関してはただの変態じゃねーか。



 クラス内において、新海とアリスの評価は最悪だ (一部を除いてだが)。アリスは別にお構い無しって感じだが、俺にとっては普通に辛い。これってもはや友達とかできるレベルではないぞこれ。




 そんなこんなで、納得してもらえたようなので、新海は自席に戻る。フランソワはまだ驚いている。


 何か用があるのか、フランソワがまた新海に話しかけてきた。


「あ、あのー。さっきはごめん。なんか勝手に決めつけた事で犯人扱いして」


「いや、いいんだ。いろいろ事情があってね。分かってもらえないだろうけど、察してくれ」


「あのさ、もし良かったらなんだけど、僕も協力していいかな?」


「え、何に?」


 やはり、こいつも知っていた。怪しい、絶対に何かあるぞ。


「君たちがどんな事に苦しんでいるのかわからないけど、協力できる気がする。いや、協力してみせるよ! 僕はね情報量は誰よりも、ネットよりも多いと自負しているんだ。だからさ、僕の情報を使ってできる限りの協力をしたいんだ!」


「ちょっと待ってくれ! なんだ急に。何が言いたいんだ」


「そうだね。まだ信じてもらえないだろうからこれだけは言っておくよ」


 彼はそう言って、すこし躊躇った後に不思議な言葉を残した。








「田部さん、残念だったね」








 新海は全く意味がわからなかった。残念? どういう意味だ? 何がどう残念なんだ? もしかして彼女がいない事になにか関係しているのだろうか?


「おい、それはどういう意味だ!」


「ふふっ、すぐに分かるよ」



 そういって去ってしまった。

 もう鐘が鳴ってしまい、ショートホームルームに入る。


 担任が衝撃の真実を口に出す。


「えー、皆。悲しいお知らせだ、交通事故速報がでた。被害者はうちのクラスの…………」









「田部日和さんだ」









 その名を聞いた瞬間、俺は慟哭した。同時に、殺意が湧いた。

フランソワ・ヴィドックの呼び方が安定しない。いいニックネーム的なのがあればいいですが……。

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