思い出す
「え」
古びた鏡を見ると銀の髪に母親譲りの碧の瞳の痩せた少女が映る、古いワンピースに身を包み呆けた顔をした私だ。
問題はその顔。
かなり痩せてはいるものの、整っていて美少女ではあるかもしれない、自分で言うのもアレではあるが。
問題はそこであってそこではない、私はこの顔に見覚えしかなかった、勿論自分以外でである
「乙女ゲーム」
テンプレだとヒロイン、もしくは悪役令嬢、或いはモブに転生した人が見事攻略対象とゴールインする話が多い
だが、私の顔は前世プレイしていた乙女ゲームの「攻略対象」の顔に瓜二つでは無いもののそっくりであった。
そう、前世。私は思い出してしまったのだ
あの胸糞悪すぎる乙女ゲームランキング堂々の1位、何ぜ作ったといわれた伝説の西洋ファンタジー乙女ゲーム・・・その世界に転生したと・・・‼︎
ここで疑問を持つ人も居るだろう
西洋ファンタジー乙女ゲームならば攻略対象は主に貴族でありその娘が間違ってもこんなボロを着て痩せ細っているはずなど無い。
だが私には心当たりがある、このゲームの胸糞悪さの一端である
まず典型的なビッチヒロイン、騙される男達に捨てられる当て馬達への余りの仕打ち・・・
特に私の母は第二皇子ルートのライバルキャラで公爵令嬢だったがヒロインに断罪されて身分を剥奪される。
ありがちだが婚約者持ちの男に言いより、それを盾に断罪なんて普通は不可能だ、それだけではない、城を追われるスチルでの母は・・・お腹が膨らんでいた、即ち私達を妊娠していたのだ。
そして私は攻略対象・・・第二皇子に似ている。不義の子ですらなかった訳だ。
うぅ、思い出していて気分が悪くなってくる、好奇心で始めたゲームだったが最後までやってしまっていた私は二度と乙女ゲームをやらなかった。
いや、やれなかったのだろうきっと
それ以降の記憶は無いし現に私は生まれ変わりここにいる。
だが思い出してしまったものは仕方ない
この世界でなりあが・・・生き残っていくだけだ。