広がる夢と節制
メルクに手ほどきを受けつつ ファイアの練習をした次の日 私達はまたオベントウを売り切った後 四人で集まる
「ファイア‼︎」
ボワッ
「おおおおっ‼︎なんか出た‼︎」
「うん 合格」
「エルねぇ凄い‼︎これならパンが焼けるよ‼︎」
「フェルちゃんももう少しじゃないか 頑張って」
「う・・・うん‼︎」
フェルとメルクは練習を続け、ベクターはそれを黙って見守る
「私宿に戻るよ」
私は3人をおいて宿に戻る
「あら エル フェルは?」
宿に戻ると母が出迎えてくれる
「お兄さん達と居るよ」
「・・・あんまり 傭兵に近づかないほうがいいと思うわ どんな方々なの?」
「あれ 母さんまだ見たことなかった?」
「私は厨房担当だもの」
母が肩を竦める
「あら エルちゃん一人?珍しいねぇ」
「アニさん」
アニさんは上機嫌だ 何かあったのかな
「聞いとくれよ‼︎今うちのオベントウが話題になってるんだと‼︎」
「本当?すごい‼︎」
「薬草パンもそろそろ売りに出す時期だね、エルちゃん準備しなきゃ‼︎」
「はい‼︎」
薬草パンが成功したら 薬草クッキー サブレも良いかも
そしたらお菓子屋さんも十分視野に入る
あぁ でもお金があるなら異界料理屋とかも良いなぁ
この世界に無い 新しい料理で革命を起こすんだ・・・‼︎
・・・でも 目立ちすぎるのも駄目だな
家族にはちゃんとした 良い人生を送ってほしいんだ・・・
「エルちゃん?」
「あっ はい 何ですか?」
「・・・随分と思い詰めたような顔をしてたからねぇ」
・・・アニさん達にも まだ恩返ししていく段階の前だなぁ
「大丈夫です‼︎ 」
「私は厨房に戻るわね エル おやつ作るからフェル呼んできなさい」
「はぁーい‼︎」
「フェルー?」
「あ エルねぇ‼︎見て見て‼︎私ファイアとウォーターも出来たんだよ‼︎」
「えぇ‼︎ 本当⁉︎凄いじゃん‼︎」
「フェルは偉いぞ チビとは違って素直だしな」
「ふしゃー‼︎」
「まぁまぁ落ち着いて・・・僕達はそろそろ行くよ またねエルちゃんフェルちゃん」
「またなチビ共」
「またごきょーじゅおねがいするの‼︎」
「さよーならー‼︎」
2人に手を振り 見送って
「フェル 母さんがおやつ作ってくれるって‼︎」
「わーい‼︎」
「はい 今日もお疲れ様」
アニさんが皿に入ったフラン入りクッキーを出してくれる
お菓子屋をやるなら こういうのも出すんだ・・・‼︎
一人やる気を入れ クッキーに手を伸ばす
フェルはすでに2枚頬張っていた
「あのね、フェル オベントウが・・・」
「うんうん それで・・・凄い‼︎」
「いつかお菓子を・・・」
「うん‼︎やろう‼︎エルねぇ‼︎」
何時までも こんな平穏な日々が 続いていく
ささやかな変化はあっても 夢を追いかけて
私はずっとそう考えたかった
そう 考えていた
だけど
運命は既に回り始めていた
テスト終わった・・・
次回で10歳編最終話です
シリアスムードですがそんなには・・・
15歳編からは一気に物語が進み始めますので多少の矛盾は目を瞑っていただけると幸いですが
分かりにくい・致命的矛盾・誤字脱字はばんばん指摘して頂ければ幸いです