買い物終了と誘拐(?)
慌てて店から出て、向かいの庶民向けの服屋に駆け込む。
「いらっしゃい」
にこやかな顔で恰幅の良い夫人が話しかけてくる。
「えっと、どんな服が良いかな・・・フェル、なにが欲しい?」
「さっき見た可愛いいのが欲しい‼︎」
妹よ、あれは高いぞ。
「えっと・・・フリルとかたくさん付いてるのってあります・・・?」
私達は黒とピンクの揃いのワンピースを、母に赤いロングワンピースを買う。
「ううむ」
お揃いのワンピースが合わせて銀貨一枚、ロングワンピースが銅貨60枚だ。
やはりそれなりにいい物を買おうとするとお値段が・・・。
早速着替えた私達は町を練り歩く。
「可愛いフリルだね、私達も縫えるかな」
フェルがくるりと回る あまりの女子力に存在が霞そうになる
だが縫えれば・・・と言うのはいい考えかもしれないなぁ・・・。
「あ、美味しそうなパンだなぁ、焼き立てだって‼︎」
焼き立てパン銅貨10枚か、相場ぴったりの値段だ。
「そろそろお昼ごはんにする?」
「うん‼︎」
広場の噴水に座ってパンを食べる
「えっと・・・パンが銅貨10枚で、コムギが一キロで銅貨30枚でラストスが銅貨2枚で・・・?うむぅ」
コムギは小麦で、つまりそのままである
というか穀類は大体そのままだった気がするが。
「エルねぇ、私も覚えるから頑張ろう?」
天使が微笑みかけてくる。
「うん‼︎」
可愛い妹のために、私は頑張るのだ。
「ッ‼︎」
じつは今朝から視線を感じていた。
ボロを着た私達が街に出ているのが不思議だったのかと思っていたが建物の陰から 明らかにこちらを見ている人影があった。
まだ若い男だ 身なりが良いのを見ると貴族からの差し金か?
「フェル・・・そろそろ行こうか?ほらほら、お菓子買って帰ろうか」
「え?良いのかなぁ〜 へへへ」
私達が移動すると男も移動する。
間違いない 尾行だ。
(まさか・・・誘拐とかかな)
ありえない話ではない、かわゆいフェルに目をつけるのは当たり前だ 腐った貴族は当然の様に人身売買に手を出すという。
最近は国が荒れて治安が悪くなりつつあると言う。
私の髪の色は珍しいし、フェルは天使の様な可愛らしさだ 人攫いからすれば格好の獲物だ、私達は高く売れる 取り敢えず長い前髪で顔を隠し直す。
兎に角まいてから家に帰ろう。
そう思いフェルの手をひいて人ごみに溶け込むことにした
彼が本当に誘拐犯なのか
それとも言えない立場の人間なのか