表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

遭遇

お久しぶりです。

投稿が遅くなって申し訳ありません。

これから少しづつ更新していきたいと思います。

 家を出た俺は魔獣を探し最初の目撃現場と思われる場所に向かっていた。

 何か解るかもしれないからだ。せめて属性ぐらい解れば良いが……。また火属性だったら困るし。


『火属性は厄介ですからね。燃えるだけで被害は酷くなりますから』

「今の念話したつもりはないんだが……」


 俺とエスクの会話は基本的に念話で行っている。


『意識して切り替えないとたまに思考が伝わりますよ?』

「……気を付ける」


 ちなみに今は念話ではなく、ちゃんと会話している。


『マスター、もうすぐ最初の目撃現場です』

「了解」


 さて、何か解れば良いんだが……。


辿り着いた場所は商店街の端、東側は民家と貸倉庫や駐車場が有るだけで人通りが少ない。ミルキーウェイが有る西側は住宅街で時間帯にもよるが人通りも多い。魔獣の目撃情報は少ないかもしれないな……。


『まずは情報収集……といきたいですが』

「誰もいないな……」


 訂正、少ないどころかそもそも人がいない。近くの店にすらも。


「店が開いてないのはともかく人の気配も感じないな」

『ここで魔獣が出現したのでしたら間違いなく目撃していますからね。避難所に居るのかもしれませんね』


 避難所は基本的に魔獣に家屋を破壊された人が利用するものなんだが……。


「それにしては綺麗過ぎる様な……」

『そうですね。まさか、どこも破損していないとは思いませんでした』


 そう、魔獣が出現した割には暴れた痕跡が何処にも無い。いつもの風景が広がっているだけだった。


『これでは魔獣が出現したかどうかも解りませんね』

「そうだな……」


 せめて魔獣が出現したのかどうかが解れば良かったんだが……。これじゃそれすらも解らないぞ。


「とりあえず散策するか」

『何か見つかれば良いんですが……』


 何も解らなかったら別の場所まで範囲を広げないとならないからな……。

 そう考えて周辺を見渡しているとカタンと物音が聞こえてきた。


「? 風で何か倒れたのか?」

『いえ、誰かいます。衣擦れの音が聞こえます』

「よく聞こえたな」

『高性能ですので』


 自分で言うなよ……。まあ、誰かいるならちょうど良い。ここで起きた事を聞くとするか。

 俺は物音が聞こえた路地まで近づくと声が聞こえてきた。


「う~ん、居ないなー。本当に何処に行ったんだろ……」


 聞いた限りだと何か探している様だ。魔獣について聞こうかと思ったが……仕方がない、放っとけないし手伝うか。

 俺は路地を覗き見た先に居たのは赤みが掛かった茶髪を後ろで纏めたパーカーに短パンを穿いた女性だった。


「あのーすいません」

「え?」


 俺が声を掛けると女性は若干驚いてこちらに振り向いた。


「あ……」


活発な印象に少し幼さを残したその顔は美少女と断言できるほど整っていて思わず見惚れてしまった。だが同時に俺は既視感を感じていた。

この娘……どこかで見た様な?


「あのーどうかしましたか?」


 あ、いけね。自分から声を掛けておいて黙ったままになっていた。


「えっと……何をしているのかな、と思って……」


 って、違うだろ! 何か探しているのを手伝うつもりだったんだろうが! 動揺するなよ、俺!


「えっと、その、探し物をちょっと……」


 うん、知ってる。


「……何を探しているんだ?」

「え! えっと……それは……」


 少女は何故か凄く言い辛そうに目を逸らして言葉を濁している。


「良かったら手伝おうか?」

「い、いえ! これは私がすべきことですので!」


 なんで物を探しているだけでそこまで責任を感じているの!? 宝石でも落としたのか!?


「いや、今は魔獣警報も出ているから女の子一人にする訳には……」


 魔法少女なら別だが……。ちなみにこの町では魔法少女は基本的に宙女の制服を着ているため魔法少女かどうかの見極めの基準になっている。


「大丈夫です! 私、強いですから!」


 そう言って力こぶを作るが腕が細い為に強そうには見えない。確かに見た目は運動部で活躍しそうな活発さ浮き出るような感じだけどさ……。


「だからって魔獣と戦える訳じゃないだろ?」


 まあ、発言からしてなんとなく察しはつくけどさ……。


「戦えますよ! 私は魔法少女ですから!」


 え? 正体ばらして良いのか!? まさかはっきり言うとは思わなかった。


「そこは隠すところじゃないのか!?」


 思わずツッコミを入れた俺は悪くない。基本的に魔法少女は変身時に正体がばれない様に顔を認識できない魔法が掛かっているらしい。実際、俺もこの間出会った魔法少女の顔を覚えていない。


「平気ですよ~」

「いや、普通に正体ばらしたら危険と思わなかったのか!?」


 魔法少女が正体を隠す理由は複数あるが、その中で一番の理由は魔獣が人間である為に『人殺し』と蔑む人達がいるからだ。そのため彼女達の個人情報を知られると危険と判断して付けられた機能らしい。……まあ、それを利用する悪趣味な魔法少女もいるが。

なので、魔法少女達の個別認識の基準は服装だったりする。


「うーん、なんとなくあなたは良い人そうだと思ったので」

「そんな理由で!?」


 もう少し危機感を持て魔法少女!


「そんな理由とはなんですかー、私これでも人を見る目は有るんですよ」


 そう言って不満げに口を尖らせて抗議する魔法少女。……不覚にもちょっと可愛いとか思ってしまった。……ってそうじゃなくて!


「だからって初見の人に正体ばらすか!?」


 俺がそう言うと彼女は優しげな笑みを浮かべる。


「なんで笑ってるんだよ……」

「いえ、やっぱり良い人だなーと思って」

「え?」


 どうしてそうなる? 訳が解らないぞ?


「だってそうやって心配してくれるってことは良い人な証ですよ」

「いや、普通だろ」

「今時の男性は魔法少女相手に紳士的な行動は取りませんよー」


 それはどうだろう? 原嶋だったら――いや、あいつの場合、欲望のままにセクハラ発言をするな。間違いなく。


「だからってな――」

「それにあの時も助けてくれたじゃないですか」

「あの時?」


 あの時って何時だ?


「この間出現したオーガの時です」

「……え」


 あの時の赤い魔法少女かよ! 確かによく見ると面影が有るけど……。


「気づいていなかったんですか? ……認識阻害の魔法って効果ちゃんと有るんだ」


 そりゃ一般人の俺じゃ魔法を使われたらどうしようもないからな。と言うか小声で聞こえにくかったけど魔法の効果を疑っていたのか魔法少女。使っているのはお前だろ。


「それでは改めて! 私は火之浦ひのうら赤理あかりです!」

「天動星司だ」


 火之浦は元気よく名乗ったのでこちらも名前を伝える。……名前を教えていいのか? いや、偽名の可能性も――無いな。絶対にそこまで考えてないよこの娘。


「しかし俺が助けた相手だとよく気づいたな」

「魔獣相手に瓶を投げつけていれば覚えもしますよ」


 まあ、確かに。わざわざ危険な魔獣に物を投げつけるバカが居れば嫌でも覚えてしまうよな、うん。


「……なんで逃げなかったんですか?」

「え?」

「魔獣が危険なのになんですぐに逃げずに私を手助けしようとしたんですか? 下手したら殺されていたんですよ?」


 そう言われてもなあ……。まあ強いて言うなら――


「お前が良い奴だったから、だと思う」

「え……?」

「良い奴が死ぬのは勿体ないと思った。それだけだ」


 魔法少女嫌いな俺が火之浦を助ける理由が有るとするならそれぐらいしかない。……自分のことなのに理由が明確にできないとか言うな。何となく助けなきゃと思ってしまったんだから仕方がない。


『マスターは基本的にお人好しですからね』


 うるせえ。わざわざ念話で言わなくていい。と言うか何故知っている?


「……やっぱり良い人ですね」

「…………」


 理由が理由だけに否定し辛い。魔法少女が嫌いなくせに手助けするような人間じゃ言われても仕方がないな。まあ火之浦は俺が魔法少女嫌いなのは知らないが。


「で、火之浦は何を探していたんだよ」

「赤理で良いですよー。私も星司くんと呼びますから」


 勝手に決めるなよ……。別に良いけどさ。


「わかった。お前も敬語で話さなくていいからな」

「はい――じゃなくて、うん、わかった」

「で、赤理は何を探していたんだ?」

「魔獣の痕跡」


 ………………は?


「いやいや、なんでお前が探しているんだよ!? ジケルヘイトには専門の部隊が居るはずだろ!?」


 正確には魔法少女の中でも捜索に特化した部隊が存在している。何らかの理由で魔獣を見失った時にはこの部隊が出撃して魔獣の捜索を行う……だが、そういった魔法を使える魔法少女は数えられる程しかいない為、見る機会はほぼ無い。……ちなみに、これらの情報は原嶋から提供されている。本当に何処から仕入れたんだか……。


「その……捜索部隊サーチャーズは別の任務なんだ……」


 あー、数少ないからそういう事も有るか……。


「なら他に仲間はいないのか? 流石に一人でやる事じゃないだろ?」

「一人じゃないよ? もう一人――あれ?」


 疑問の声を上げた赤理は周りを見渡し、更に路地から出て大通りを見渡すと――


「み、みどりちゃぁあああああん!?」


 誰かの名前を大声で呼んだ。多分仲間だろうけど、一般人の前で本名を呼ぶなよ。それ以前に今気付いたのかよ。


「ど、どうしよう!? またはぐれちゃったよ!?」


 また!? 同じ事が前にも有ったのかよ!?


「そ、そうだ! こういう時は青波あおばちゃんに聞けば! えーと、えーと」


 また仲間の名前言ってるし……。と言うか落ち着け。さっきから番号を押し間違え過ぎだろ。いや、それ以前に――


「電話帳に登録していないのか?」

「そうだった! 忘れてた!」


 おい! だから落ち着け!


***



 しばらくして冷静になった赤理と魔獣捜索から翠ちゃん(仮)捜索を行っている。どうしてこうなった。


「翠ちゃんはよく道に迷うからいつもは青波ちゃんが見張ってるんだけど……」

「今回は別行動なのか?」

「青波ちゃんは目が良いから高い処から魔獣を探す様に頼んだんだよ。……今は翠ちゃんを探しているけど」


 難儀な……。


「自然が多い処だと迷わないんだけどね……」

「なんでだ?」

「わかんない。けど森とか山だと絶対に迷わないし、むしろ先導するぐらいなんだけど、街中を歩くと三回に一回は行方不明になるんだ……」


 何その都会限定方向音痴は? 俺の中で翠ちゃんが自然の中で育った野生児みたいなイメージになったんだけど……。


「これでもましになったんだけどね……」

「それで!?」

「前はそれに加えてトラブルに巻き込まれると言うか、遭遇していたと言うか……」


 実は物凄く運が悪いのか? もうどんな人か解らなくなってきたんだが……。


「大変だな……」

「もう慣れたから平気、平気」


 それはそれでどうなんだ?


 それから少し時間が経って――


「「…………」」


 お互いに話す事が無くなり無言になる。恐らくだが赤理の考えている事は解っているつもりだ。彼女がオーガと戦った時の魔法少女なら、そして後にエスクから聞いた事だが俺がオーガと戦っていた姿を見られていたそうだ。幸い俺の姿は認識疎外魔法が自動で掛かっていたので正体まではバレてはいないらしい。だが疑われているはずだ。あの場にいた男は俺と流星くんだけだからだ。流星くんは年齢的に有り得ないから必然的に俺に疑いの目が行く。だから確認したいはずだ。


 恐らく赤理はどう切り出そうか悩んでいるのだろう。若干だが眉間に小さく皺が出来ている。


「……あの――」


 プルルルルルルルル


 赤理が何かを切り出そうとした瞬間、電話が鳴り響く。……俺のじゃないな。


「あ、青波ちゃんからだ」


 そう言って赤理は電話を取る。


「もしもし青波ちゃん? どうかしたの? ――ふむふむ。……え?」


 赤理は電話をしている途中で上を見上げる。


「どうかしたのか?」

「あ、えーとね。青波ちゃんが『上から来る』『気を付けて』って――」


 上? 赤理の言葉を聞き、上を見るが時に何も見つからない。


「青波ちゃん。何もないよー。え? 看板に魚が描いて有る建物の上?」


 赤理と青波ちゃんと言う子の会話を聞いて俺も同じ方向に顔を向ける。そこには――


「ギッ?」

「「………………」」


 青い肌、子供の様に小さい身体、体に対して大きく尖がった耳と鼻。あれは――


「「ゴブリン!?」」


 魔獣ゴブリンがそこに居た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ