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不安

 訓練を始めて二日後。


「……おかしい」

『おかしいですね』


 現在十四時十三分、俺は自宅のリビングでソファに座り地方放送のニュースを見ている。桜花は二階の自分の部屋に居る。なのに。学校の創立記念日でも何でもない。原因はただ一つ、未だに「外出を控えて下さい」と春宙市に警戒警報が出たままだからだ。

 オーガは既に俺が人間に戻したから警戒する理由がないはずだ。仮に魔獣が人間に戻った情報が知られて「また魔獣化するんじゃないか?」と疑われていたとしても何処かに隔離すれば済む話だ。……よく考えてみたらその可能性が有ったなぁ……。人目に付かない所まで運ぶべきだったか?

 まあ、それは置いといて。とにかく出現した魔獣は既にいない。しかし警報は出たまま。何故だ?


「……どう思う?」

『考えられる可能性は二つ。一つは魔獣を退治したのを確認できなかった為ですね。魔法少女自身が倒した訳ではないので魔獣が突然消滅したと言う形で伝わっている為にどこかに潜伏していると判断されているのかもしれません』


 妥当だな。確かに魔法少女しか倒せない魔獣が突然消えれば何所かに隠れたと思うだろうからな。


『もう一つはまだ魔獣がいる可能性です』

「いや、オーガは俺が元に戻しただろ?」


 まさかまた魔獣化したとか言うんじゃないだろうな?


『……考えたくは有りませんが他にもう一体魔獣が存在する可能性が有ります』

「な!?」


 そ、それは! 確かに可能性は有るがいくらなんでも――


『マスター、可能な限りで構いませんのでオーガが出現した時にどういう形で情報が伝わりましたか? その時の情報で違和感は有りませんでしたか?』

「そう言われても……」


 違和感か……。何か有ったか? 確かあの時はミルキーウェイでバイトしていたら外が騒がしくなって店内に人が入ってきて――


『はあ、はぁ、空生さん! 魔獣が! 魔獣が現れた!』

『魔獣は今どこに!?』

『はあ、商店街の、反対側に現れた、みたいだ』


 ……あれ? 魔獣が現れたのは商店街の反対側、つまりミルキーウェイが商店街の西側だから東側に出現したと言う事だよな? だから俺は桜花達が遊んでいた公園に急いで向かったんだ。公園は商店街の真ん中ぐらいの位置だ。あの時は相手がオーガだったから暴れながら移動していたはず。だから俺の方が先に公園に着くと思う。だけど俺がオーガと遭遇したのは確か――公園から数十メートルぐらいの距離だった。

 それにいくら子供とは言え桜花と流星くんがオーガから逃げ遅れるとは思えない。オーガが東側に現れていたとしたら避難できる時間は充分に有ったはずだからだ。……避難する時間も無かった?

 そこから……考えられるのは――


「……オーガより先に別の魔獣が出現していた? その後にオーガが公園付近に出現した?」


 そう考えたら辻褄が合う。魔獣が商店街の東側に出現し、近くにいた人達が大声で注意を促しながら避難してそれを聞いた人達が更に避難する。恐らくミルキーウェイに注意に来た人は後者だろう。魔獣の位置は逃亡する人達の走っている方向から推測したんだろう。

 その途中でオーガが公園に出現。恐らくタイミングはあの辺りで魔獣出現の報が届いた直後か直前かにだ。避難する暇も無かったのはそのためだろう。同時にミルキーウェイに知らせに来た人はオーガが出現した時には通り過ぎていたから知らなかったんだろうな。

 そしてオーガは暴れながら俺と遭遇した位置まで移動したと言う事か。


『それで間違いないと思います。恐らくですがマスターがオーガと遭遇した時に魔法少女が一人しか来なかったのも発見報告が重複して混乱したからだと思われます』

「だが、今回みたいな事態の前例ぐらい有るはずだろ? なんでこんな状況に?」

『これも予想ですが一体目の魔獣が出現してすぐに姿を眩ましたからだと思われます』

「それだけで?」

『現場にいる人間が混乱状態でなおかつ逃走している為にまともに報告もできない状態では情報の正確な精査ができると思いますか?』


 ……まあ、確かに。普通は自分の命優先で逃走するのが精一杯で通報も儘ならないよな。


「もう一体、魔獣がいるのはほぼ間違い無しか?」

『そう考えてよいと思います』

「だとしたらなんで姿を見せないんだ?」


 仮にもう一体いるならなぜ暴れ出さない。魔獣は出現したら必ず暴れるものだと聞いたが?


『……魔獣にはランクが存在します』

「? 初耳だがそれがどうかしたのか?」


 なんでそんな話に?


『ランクはチェスの駒で表されておりそれぞれある特徴で分けられます』

「?」

『基本形態の“ポーン”、魔法能力を得た“ビショップ”、身体能力の高い“ナイト”、指揮能力のある“ルーク”。これらのランクが基本となります』

「え~と、キングとクイーンは?」


 エスクの説明が気になった俺は疑問を口にする。何か理由が有って話を始めたのだろうし。

 

『“キング”はルークの能力にビショップ又はナイトのどちらかの特徴が有る個体です。強力ではありますがクイーンに比べれば楽な方ですね』


 いや、かなり強そうだけど? そんなにクイーンは厄介なのか?


『“クイーン”は自分の下位ランクの個体を産みます』

「……え?」

『虫でも女王が子供を産みますよね? それと同じでクイーンランクの魔獣は自分の下位個体であるポーンやナイト・ビショップ・ルークを産み出して魔獣を量産します』


 待て待て! いやな予感しかしないぞ!?


『そのためクイーンは出現してすぐに身を隠して安全な所で魔獣を産み出す準備をします』

「……おい待て。考えたくないけどもしかして――」

『もう一体の魔獣はクイーンランクの可能性も有ります』


 …………最悪の可能性だな。その場合、今もどこかで魔獣が増え続けているってことかよ……。


『あくまでも最悪の可能性です。もう一つの場合もあります』

「それは?」

『ランクアップの為に力を蓄えているという可能性です』


 そっちも嫌だよ! 下手したらクイーンになるかもしれないだろ!


「どっちにしても急がなきゃいけないってことか……」

『……そうなりますね』


 だとしたら俺が取るべき行動は――


「…………」

『マスター?』

「外に出るぞ」


 ここまで聞いたらただ家に居る訳にはいかないだろ!


『……ここまで言っておいてなんですが、あくまで予想です。実際は解りませんよ?』

「間違っていたらそれはそれだ。何事も無くて良かったって笑い話すれば良い」


 俺はエスクと会話しながら立ち上がり出かける準備を始める。


『……笑い話にならないかもしれませんよ?』

「? なんでだ?」


 エスクが不安そうな声で話したために準備の手を止める。


『マスターの存在を知られていると仮定して考えますと誘き出す為の策と言う可能性があります』

「誘き出す為に警報を出し続けるのか?」


 なんでそんな事をする必要があるんだ?


『マスターが魔獣を人間に戻せる以上、魔獣が居る可能性がある場合、魔獣を探すと考えられるからです』

「なんでそう言えるんだ?」

『魔法少女は魔獣を“殺す”からです』

「それは……」


 関係あるのか? と口に出す前にエスクの考えに思い当たり口を閉じる。


『魔獣は元人間で魔法少女は魔獣を殺す者ですよ? 実質人殺しです』

「身も蓋もないな……」


 否定はしないけどさ……。


『そんな中、魔獣を人間に戻す能力を手に入れたまともな人間ならどうするかなんて決まっています』

「……魔獣と戦うってことか? でも普通は怖がって戦わないだろ?」


 いくら力を手に入れても怖いものは怖い。


『ええ。ですが本人は証明してしまいました。魔獣と戦える事を魔法少女の目の前で』

「!」

『そして人間、自分の暮らしが大切です。ずっとこの状況が続き魔法少女が動かなければ戦える人間は動かざるを得ません』

「…………」


 確かにな。学校は休校、店も閉めている所が多く買い物もできないし、何より重要なのは! 桜花が襲われるかもしれないと言う事だ! だからこそ今まさに動こうとしている訳だし。


『恐らく魔獣と戦い消耗したところを狙って捕獲か最悪の場合、抹殺も考えられます』

「ま……!」


 流石にそこまでやるか!?


『組織と言うのは都合が悪い場合なにするか解りませんよ? 言い過ぎかもしれませんが魔獣を探すならそれぐらいされるかもしれないという覚悟は持って下さい』

「…………」


 俺はエスクの言葉を聞き黙考し――


「……行くか」


 呟き準備を再開する。


『……良いんですか? 危険ですよ?』

「いいさ。このまま放っといても事態が好転する訳じゃないし」


 出かける準備を終えた俺は玄関に足を運びながらエスクに話し続ける。


「何もせずに後悔するよりは良い」

『……そうですか』


 どこか嬉しそうな声でエスクは答えた。なんでだ?


「おっと、桜花―! ちょっと出かけるから留守番しといてくれ!」

「わかりましたー」


 俺は二階に居る桜花に向けて大声で伝えて家を出た。



遅くなって申し訳ありません。

ちょっとデータが一部消えて修復していました……。

書いている途中で消えるとか反則でしょ!

すいません。ショックで手が止まってしまっていたのですが漸く書けるようになりました。

今日から再開です!

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