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物名歌合戦開始

 醍醐帝(仮名)こと「みかどっち」に、父親の宇多上皇(仮名)こと「じょーこー」から『物名歌合戦イベント開催のお知らせ』が届いた。


時平

「お父上のじょーこー様からみかどっちに物名の歌合わせのお誘いとは、珍しいですね」


みかどっち

「いや、親父のことだ。こっちに若い歌人を押し付けて、自分はベテランを揃えながら俺を潰そうと考えているんだろ」


時平

「じょーこー様は和歌に関しては冷静で平等だと思いますが」


みかどっち

「あの親父のどこが? 俺の女の事に口は出すわ、即位早々臣下への小言一覧表(寛平御遺誡かんぴょうのごゆいかい)をよこすわ、ぶっ飛んで勝手に出家するわ。あんなに短慮で不平等な人間、そうそういないぞ!」


時平

「いや、だから、和歌に関して言っているので……って、聞いちゃいねえよ、このボンボン」


アナウンサー

「レディース、エ~ンド、ジェントルマン! 皆さまようこそ! 本日はこの亭子院ホール特設会場にて物名歌合戦イベントが開催されます! わたくし、このイベントのアナウンス及び進行役の、『講師コージー』こと『コージー・ヨミヤ』。よろしくお願いしま~す!」


 ハイテンションなアナウンスに集まった観客が盛り上がる。


コージー

「そして、本日試合に華を添えるBGMは宮廷キューティ雅楽ガガク演奏楽団オーケストラの皆さんです!」


 華やかなのか、厳かなのか良く分からない派手な音色が雅楽隊オーケストラによって演奏される。


コージー

「さら~に! 注目度とライフポイントを示す、最先端システムkazusasi(数刺し)を操作しパフォーマンスで盛り上げるのは、人気絶頂アイドル『kazusaカズサ!』 いずれも劣らぬ美少年ぞろいのメンバーだ! 彼らの笑顔は乙女心を串刺しにしちゃうぞ~♡」


 紹介された美少年たちがアイドルスマイルを振りまくと、会場は黄色い声援に包まれた。


コージー

「この試合はじょーこー様率いる赤系の和風正装タキシードを着た『チームレッド』と、みかどっち率いる青系衣装の『チームブルー』で対戦する団体戦方式。ですが、個人のライフポイントも重視されます。ちなみに両チームには芸人による応援団『念人おもいびと』がそれぞれ自軍を応援します。相手チームへのツッコミも自由! 芸人の皆さん、どんどん盛り上げてくださ~い!」


 アナウンサーの解説にしびれを切らして、みかどっちはじょーこーに催促した。


みかどっち

「おい、親父。さっさと始めようぜ」


じょーこー

「良かろう。まずこちら、『チームレッド』から行くぞ。敏行、バトルステージへ」


藤原敏行

「では、私から肩慣らしの一首を。


   来べきほど時すぎぬれや待ちわびて鳴くなる声の人をとよむる

  (来るべき時をすぎてしまったからか。待ちわびてから鳴くほととぎすの声が、人のどよめきを呼んだのは)


『ほど時すぎ』で『ほととぎす』の物名。そして鳴くべき時が過ぎたことの縁語攻撃! しかも鳥の鳴き声と人のどよめく声のコンボ。どうだ若造ども。これがベテランの腕だ」


 そこにステレオ放送でほととぎすの声が流れ、プロジェクションマッピングに山の稜線と、飛び交うほととぎすの姿が映し出される。雅楽のBGMの中、観客の拍手とともに敏行の注目度ライフゲージが上がっていく。応援団おもいびとたちが「ほととぎす!」コールを繰り返して盛り上げる。


 一方オーロラビジョンに点数ゲージが表示され、敏行とチームレッドの注目度ゲージとライフポイントゲージが上昇する中、美少年たちがその前でパフォーマンスを繰り広げる。女性ファンが一斉に黄色い声援を上げていた。


時平

「むむ、いきなりなかなかの詠みぶり。ではこちら、『チームブルー』の番だ。滋春!」


在原滋春

「ふん、その程度。縁語はコンボと合せるだけが能じゃない。


   波の打つ瀬見れば玉の乱れける拾はばそでにはかなからむや

  (波が打ち寄せる浅瀬を見ると水滴が乱れ散っている。

   拾って袖に入れても儚く消えるのだろうか)


 水滴で玉を表す「見立て」の投影法攻撃に『打つ瀬見』で『うつせみ』。『はかなからむ』で空蝉うつせみの縁語アタック。さらにこれは、『から』むやと『空』の掛詞入りダブルアタックだ!」


 今度は某映画会社のタイトルバックのような海辺の風景に波打ち際で砕ける波と、それが水玉となって輝き、やがて真珠に姿を変える映像が背景に映し出される。もちろん雅楽の生演奏とともに流れる波のどっぱーんも、音声多重ド○ビーシステムのステレオ。ご丁寧に空調設備から流れる磯の香りつきだ!


コージー

「おおーとっ! 滋春の攻撃に敏行の動揺ゲージがアップした! 代わりに注目度ライフゲージが下がり、滋春のライフゲージはア~ップ! これは敏行、効いている!」


壬生忠岑

「なんの! ここは私に任せろ。滋春! お前にうつせみで返す。


   たもとよりはなれて玉をつつまめやこれなむそれと移せ見むかし

  (袂以外の物で玉を包む事が出来るのか、これがそうだと移して見せてみろ)


 お前の詠んだ歌のモチーフで、そのまま『うつせみ』を『移せ見』と返してやったぞ! やられたらやり返す、題がえしだ!」


滋春

「くっ……。古い流行語大賞をもじった様な言葉を吐きやがって」


コージー

「おお! 忠岑のライフゲージアップと共に、チームレッドの総合ライフも回復する~!」


 既に熱戦の気配が漂うが、戦いはまだ始まったばかりである。





歌合うたあわせ・・・和歌の披露、及び解説による論戦

講師こうじ・・・アナウンサー、和歌を詠み上げる人

数刺かずさし・・・勝った歌の数の表示 

      少年が数刺しと言う道具に勝った歌の数だけ串を並べる

方人かたうど・・・チームメンバー

      左右それぞれ赤と青の衣装を身に着けて分かれ、歌を詠む

念人おもいびと・・・自軍を応援しつつ歌を解説し、論戦を戦う人

蔵人くろうど・・・イベントスタッフ 殿上での所用係


本来はさらに判者はんじゃと言う、歌の勝敗を決める審判がいる。

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