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まだ寒さが残る5月上旬。
ゴールデンウィークも過ぎ五月病から脱出する人間がいるなか、季節外れの転校生が私の学校にやって来た。
「みなさん、今日からこの学校でみんなと勉強する転校生です。」
ガラリとドアが開いた瞬間、女の歓声が一瞬巻き起こった。
理由は2つ。
1つ目は男だったこと。
2つ目はこのクラスに一人といないイケメンだったこと。
思わず私も口を開けたほどだ。尋常じゃないルックスをやつは持っていた。
「おはよーございます。転校生の河合 悠音です。」
かわい はると…ね。
お辞儀をした弾みにやつの寝癖のついた髪がピョンと跳ねる。
「河合さんはどこからきたのぉー?」
「地球の外です。」
…おかしいぞあいつ。
冗談にしてはやつの顔が潔い。まるで、
何でみんなそんな顔してるんですか、僕の顔何かついてます?
とでも言いたそうな顔だ。
「…か、河合さんおもしろー!」
気に入られたいのかわざと大きな声で笑う少女A。
それにつられ笑う女ども。
男は心のそこから理解できないという顔をやつに向ける。
そのなかに私も入るだろう。
「でも、河合さんの言葉聞いてたら標準語だから東京かその周辺?」
「…はぁ。じゃっそうしときます。空気はちゃんと読みたいんで」
また意味深な言葉を残した転校生は、後ろの寝癖を手でとかしながらよろしくと言うとそそくさと私の横の席に座った。
…寝癖直ってないよ。
「え、ほんとっ?」
「…は?」
「だって、君今寝癖直ってないよって言ったから」
「…はぁっ?」
「だから、君今寝癖…」
「聞こえてるから!今のは驚きのはぁっ?だし」
なんで聞こえた?!
うっかりか?口から無意識に出てたのか?
じろりと河合を見ると、キョトンとした顔で私の顔を覗きこむ。
ぱっちり二重瞼羨ましい…私二重瞼だけどいつも一重瞼と勘違いされるし。
「そんなこといいから質問答えてよ。どこの寝癖がなおってないの?」
「あっ、こ、ここです」
河合の寝癖を少し撫でると理解したようで、念入りに直しだした。
…そんなこといいから。
河合…あなた、エスパーかなにか?