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赤瞳の竜  作者: ぼここ
島にある村
5/25

ゆきだって

強すぎる衝撃に痛みをこらえ、目を開ければクランがユキの服を弱いけど強く握っている。


「ゆきっ」

「クラン、怪我はない?」

「ゆきだって」


 両手で抱きかかえると強く抱き返される。

 上体を起こした。あれだけの衝撃に幸運にもユキにもクランにも痛みさえあるが怪我はしていない。

 あたりを見回すと先ほどいたと思われる場所にえぐれた地面が一つできていた。それは対魔物用の罠、上に魔物が通るとそれに反応し火薬に火がつく仕組みを蛍光石で代用をした。


 立ち上がる前に大男を警戒する。ユキたちが無傷である、大男もそうかもしれない。すぐに大男の状態を発見する。


 ユキよりも遠くに飛ばされ傷だらけ。やりすぎてしまったかと申し訳なく一瞬思ったがこいつから先に攻撃してきたのだからと考えるのをやめた。


 気絶した大男を放置しジンを探す。何度か大声で名前を呼んでもすぐには現れない。不安になりつつ先ほどジンが逃げて行った方へ探しに行く。


 もしもジンが小男にすでにやられていたら、あいつは刃物を持って追っかけて行った。そんなことはあってほしくないが悲観的な想像が膨らむ。

 

 見たくないものがあったらどうしよう。

 きっと無事なはず、追いかけてきた奴も見当たらないのに?

 こうなるのならついてくるように頼むんじゃなかった。

 

 今、この状況が良い方へ転がり時間がたって明日になっていれば切にいいと願った。


 そんな時願いがかなうようにジンの声が聞こえる。自分の名前を呼びながら駆けてくるジンに心底ほっとした。


「ジン!」


 ユキもクランを抱え向かう。

 

 お互いの無事を確認してユキが大男の状態をジンに見せると目を丸くして驚いていた。感想は「お前やるなぁ」だった。ジンに見直されたようである。

 ジンも小男が途中で追ってこなくなったらしく木陰に隠れて身をひそめていたそうだ。悲鳴を上げたのは小男が追いかけてく時に突如何かがが眼の前に現れたからだったそうだ。




 二人はまた小男の方が自分らを見つけ追いかけてこないうちに森を抜けることにした。少し行けば道もある。さっきのように突然現れることなく森を抜け街の近くの畑が見える場所までついた。その頃には二人とも息も切れ歩いて進む。


 村が遠くに見えてきて安心している所にクランが再び何かに気づく、続いてユキもそれに気づいた。ジンだけはわからないという。

 そこのしれないような絶対に遭遇したくないもの、それが近くにいる。

 すぐに村に向かって走り出そうとするが既にくたびれていて速度はでない。だが村にたどり着けば何とかなるはずと思い必死に進んでいく。


 今度こそジンは追ってくるものに気づいた。音をまき散らし、片手には小さな猟銃、もう一方には小男が持っていた刃物。こっちが気付いたことに気づいたのか距離を詰めながら黒い砲身を構える。

 隠れる場所もなくとっさに地面に伏せてしまう。丁度頭上の上の方を弾が飛んで行った。次も同様、走りながら撃っているためがほとんど明後日の方にしか飛んで行かない。


 それでもしゃがむ二人にはあり得ないほどの恐怖が襲う。

 次こそあたってしまうのではないかと呼吸が乱れる。一発当たれば獣だって動けなくなるようなものだ、痛みを考えると頭がごっちゃになる。次第に恐怖が大きくなりむしろあたってくれた方がこの気持ち悪さが無くなってくれるんじゃないかとさえ思えた。


 横に聞こえるジンの呼吸がおかしい、呼吸だけではない。脂汗をうかべて苦しそうにしている。しかしユキにはそれを構うだけの余裕がない。ただひたすら振るえるクランを守るために覆い隠すようにかぶさる。


 ユキは風を切るような音が無くなっていることにしばらくして気付いた。どうなったのか、弾切れなどと考える余裕もなくそばにとそこの刃物を持った大男の足に気づく。

 何かをするための気力はとうに尽きているユキに何もできない。弾に当たってしまうのではないかと言うおそれに削り尽くされた。ただ見上げるだけ。


 大男が刃物を構える。この時だけ少しだけ頭が回った。

 

 どうしてこんなことになったのか? この人はどうして僕たちに危害を加えようとするのか? クランをどうしたいのか?


 大男は大きく間合いを測るようにして一振り刃物を振るう。そして空振りをするような動きをしてから、安心しろとユキに言い放った。


 再び刃物を振り下ろすが鋭い金属音を響かせ大きくはじかれ、そのまま弾かれた勢いを殺せずに大きく後ろにのけぞる。

 さらに掴んだ刃物が同じ音を立て光が飛び散らせその腕からはじけ飛んだ。


「そこから離れろ!」


 その声は村の方から聞こえた。


「大丈夫か?」


 大男は逃げ去った。


「おい!」


 頭は空になった。

 

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