#32.仕組まれたシナリオと誤算
前回あった七無空間運営の会話…よもやそれが重要なことになるとは知る由もなかっただろう…
風のエリア…
60Bと采はなぜか鬼神化してしまった小太刀男に追われ続けていた。
男は冷静な表情で2人を追っているが自分の持つ小太刀を縦横無尽に振り回しているため相当我を失っているようだ。
60B「うわあああ!助けてくれー!!!あと采!俺に抱き着いてくるな!逃げにくいじゃないか!」
采「ひどいよ~!か弱い女の子がズタズタに切り裂かれてもいいって言うの?」
采は上目づかいに60Bを見つめた。
60Bはその対応にどうすべきか悩んでいたが、そうしているうちに采と共に石につまづき転んでしまった。
60B「うわっ!」
采「きゃあっ!」
2人は命の終わりを感じたようだ。立って逃げようとしても2人の足はすくんでしまい上手く立てなかったのだ。
小太刀男はそれを見ると今まで見せなかった邪悪な笑みを浮かべて近づいてきている。
小太刀男「さて…これで、ジ・エンドといたしましょう!」
男が小太刀を振り上げた時、突然ブザーが鳴った。
60B「何だ!?」
3人はブザーのなった方向を見た。
そこにはイヌイが脱落したことがモニターに書かれてあった…
60Bと小太刀男は驚きを隠せなかったようだ。
60B「ジャナイ…あいつ…」
60Bは言葉がそれ以上は出てこなかったが、小太刀男は信じられないという表情でモニターを見ている。
そして全てを悟るとその場に小太刀を置いて胡坐をかいた。
60B「おい…何してるんだ?」
小太刀男「終わりです…さあ、私をその小太刀で斬りなさい」
采と60Bはいきなりの行動に驚きが隠せないでいた。
60B「いったい何言っているんだよ…!?」
小太刀男「恋愛反対同盟は常に一蓮托生…隊長の死は私の死も同然…さあ早く私を斬りなさい」
60Bは戸惑った表情を見せていたが男はただじっと60Bを見つめている。
その目には彼なりの覚悟が映っているようだった…
60B「本当に…それでいいのか…?」
男はただコクリと頷いただけで後は「早く斬りなさい」と言うだけだった。
采は男に対してかわいそうだという目で見ていたが、何かを決めたようで彼の前に歩み出てきた。
60B「お、おいいきなり何をするんだ…!?」
60Bが呼び止めようとするうちに彼女は男の小太刀を手に取ると彼の首を斬りつけた。
男は「ありがとう…」とつぶやくとそのまま消えていった…
小太刀にはべっとりと彼の血がついていた。
60Bは今起こった状況が把握できずに唖然として立ち尽くしている。
采「今いる世界を忘れたの?…こうでもしないと終わらないんだよ?」
60Bは采をただ見ているだけだった。
彼女の目にはうっすらと涙が、そして体は恐怖か何かによって震えているのが見えた。
『風のエリアにて22番脱落(2番)』
場所は変わり、七無空間運営…
アレンとエドモンドが戦況を眺めながら話していた。
エド「あの、関係のないこととはいったい…?」
エドモンドはアレンの発言が気にかかっていた。
アレンはXにイヌイの自滅がばれても関係は無いと言ったのだ。
アレン「X様は第20回の覇者です。今回は?」
エド「え?えっと…317回…ですね…」
エドモンドは自分の持つファイルで今回の回号を見て答えた。
アレンは1回のみ頷くと自分の考えを話しはじめた。
アレン「そうですね。ただそれまでにはかなりの歳月が流れています…かれこれ200年以上は経っているはずです」
エドモンドはまだ彼の考えがわかっているようではない。
アレンはその様子には目もくれず淡々と考えを話している。
アレン「X様とはいえど彼も人間…よほどの超人や吸血鬼くらいでなければここまで生きることはほぼ不可能でしょう…」
エドモンドは何かを言おうとしたがアレンの冷静な表情に何も言葉が出てこなかった。
アレン「それに彼が優勝するまでの20回は一般の人々は戦いにも参加することは不可能でした。元々はマフィアが強さを競い合うために生まれたこの空間でしたからね…」
エド「じゃ、じゃあ何だと言うんですか?今ここにいるX様はいったい何なんですか?」
エドモンドは声をやや荒げてアレンに詰め寄ってくるがアレンはそれでも冷静に様子を見ている。
アレン「まず『X様の本体は既に死んでいる』のです。そして今此処にいるX様は『ただの置物』なのですよ…」
エドモンドはショックのあまり掴みかかっていたアレンの襟元をゆっくりと離した。それでもアレンは話を続けている…
アレン「そしてもう一つ。あなたはこうは思わないのですか?なぜこんな『殺し合い』がここまで続いてしまったのかと…!」
エドモンドは一歩ずつ後ずさりして逃亡を図っていたがアレンはそれを見て突然自分が懐に忍ばせていたピストルを取り出して彼の足元に撃った。
アレン「その様子を見ると考えていなかったようですね…答えは簡単ですとも…今まで優勝した者のほとんどはX様本人…彼の霊体が20回時に得た権利により具現化したもの…すなわち、この大会自体はX様によるただの自作自演…決められたシナリオで最終的にX様が優勝するように仕組まれたシナリオに過ぎないのです…!」
エドモンドは愕然としてアレンを見ていた。
アレンの目にはどこか怨念が見えているようだ。
エド「ほう…X様がこの戦いを続けさせ、一般の人間をも巻き込み自分の願いをかなえていったということか…だが19番はどうなるんだ!?彼も自作自演なのか!?」
アレン「いや、第311回、第316回の件は『誤算』だったのですよ…」
エドモンドはどこかおかしいという気がした。
19番の九一が出ていた試合は第311回のみの筈。なのに第316回が誤算とされているのだ。
エド「誤算だと…?19番の出た第311回はともかく、何故前回も誤算とされたんだ!?」
アレン「第311回に偶然彼が入り込んでしまったことによりX様の新たな霊体は潰されてしまいました。これが誤算なのも当然です…」
アレンは話をしながら若干大股になりながら制御室内を歩き始めた。
アレン「そして前回…今回敗れた34番と54番の争いから漁夫の利を考えたX様でしたが返り討ち。しかし2人も同時討ちで優勝者が不在となりX様の好き放題にできる…筈でした」
エドモンドは不快そうな表情をしながらもアレンの話を黙って聞いていた。
アレン「しかし、ただ1人隠れつづけ1度も戦うことなく優勝した者がいた…仕方なく彼は願いを叶えざるを得なかったのです…」
エド「ほう…それで、今回もまた19番が復活してしまったことが誤算だとでも?」
エドモンドは自分の持っていたファイルのページをぺらぺらとめくりながらアレンを言い負かしてやろうと考えていた。
だがアレンは彼の誤算予想を聞いてゆっくりと首を横に振った。
アレン「浅はかですね…あれは計算済みでしょう…確かに19番によって獲物を大量に奪われているのは誤算かもしれませんが、今回の誤算は『私に全てを見破られたこと』でしょうね…」
エドモンドは気味悪がった目でアレンを見ていた。
まるでXに敵対するような態度であり、妙に自信ありげであるところに…
エド「な、なら今回もX様の霊体がいるとでも馬鹿げたことを言うのか!?」
アレン「それはもう…『彼』でしょうね…」
アレンは自分の持つ白いファイルからXの霊体であろうと思われる人物の写真を取り出した。
エドモンドは半信半疑でその写真を見ていた。自分なりに冷静さを取り戻そうとしているが恐怖心からか声は半分裏返っていた…
エド「まさか…彼がか…?アレン…いったい何なんだあなたは…?」
『光のエリアにて33番・52番脱落(13番)』
『砂のエリアにて66番脱落(51番)』
『雷のエリアにて79番・96番脱落(19番)』
『氷のエリアにて51番脱落(43番)これで残り20名となった』
~闇のエリア~
???「さて、研究材料は揃った…私はこれで消えることにしよう…誰に潰してもらおうか…」
※今回は七無空間運営の話が主になりました。




