#31.笑い種
~風のエリア~
小太刀男「逃がしません…隊長の命により!」
采「キャー!」
60B「ちょ!ちょい!抱き着くな!!!」
小太刀男(鬼神化)「60B君からまずは狙いましょう…」
60B「ヒィィィィ!!!」
風のエリア地底…
sayaは包丁を持った女に飛びかかられていた。
かわすスペースはもうどこにもなかった…
saya『私…ここで死んじゃうんだ…』
しかし、突然の轟音と共に女の包丁がsayaの胸の寸前で止まった。
女の顔は狂気に満ちた表情から何かに驚いたかのような表情を見せて後ろを振り返った。
sayaも包丁をよけながら女の見ている方向を見た。
そこにはイヌイがバズーカ砲をしっかりと構えていた。
バズーカ砲からは煙が出ている。
saya「…どういうこと?」
彼女の問いに、イヌイは何も言わない。
女の背中にはバズーカ砲の弾がしっかりと命中していた。
女「アンタ…これは何のつもりなのかしら…?」
女は乾いた声と共にイヌイを睨んだ。
イヌイはその様子を見て鼻で笑った。
女「何が可笑しいの!?アンタは何のためにこんなことしているの!!?アンタも裏切ろうって言うの!!?」
女はまたヒステリック気味な声をあげてイヌイに問いかけている。
イヌイは冷酷な目つきで女を見下ろしている。
イヌ「確かに俺は今、アンタを裏切っているな…けどもアンタは哀れだ…」
女「哀れ…?私のどこが哀れだって言うの!!?」
女はイヌイに飛びかかろうとしたが、バズーカのダメージがその気力に勝ったようで彼女はその場に片膝をついた。
イヌイは更に冷酷な目つきで彼女を見ている。
イヌ「ああ、哀れだよ…自分を偽ってまで『元・彼氏さん』を得ようとしてるんだもの…そんなんじゃボロが出れば即急に冷めるってもんだろ?」
女「!!」
イヌイの冷たい氷のような声に女は必死で飛びかかろうとするが、思うように体が動かない。
イヌ「そんなんで奪われただの泥棒だの言っててもなあ…他人の俺にとっちゃただの笑い種に過ぎないんだよ!」
イヌイは突然声を荒げると、とどめのバズーカ砲を女に放った。
バズーカの爆音が、地底じゅうに響いた。
弾は女の胸に当たり、彼女は血を流すこともなく消えてしまった。
saya「あの…その…」
sayaは怯えながらイヌイに近づいてきた。
イヌイはそれを見るとそそくさとバズーカの手入れに戻った。
saya「どうして…助けてくれたんですか…?」
イヌ「助けた?…勘違いすんな。俺はただ、あの女に腹が立ってただけだ…」
イヌイはバズーカを丁寧に拭くと、ゆっくりと立ち上がった。
sayaはそれを聞いて笑みを少し取り戻した。
しかしその笑顔は長く続かなかった。
突然地底内に振動が走ったのだ…
saya「な、何!?」
イヌ「…マズったなあ」
イヌイはしまったという表情をしながら顔に手を当てた。
saya「いったい、何があったんですか!?」
イヌ「ここは地底の層が薄かったんだろうな…俺がバズーカを撃ったせいで地底が崩れようとしてるんだ…!」
saya「ええっ!?」
sayaは驚いてその場にしゃがみこんだ。
イヌイも内心慌てているようだが突然穴の上に横たわる木を見てそこに一発バズーカを放った。
振動や轟音と共に倒木はバキッ!と音を立てて砕けた。
そしてしゃがみこむsayaのもとに銃口を向けた。
saya「えっ!?いったい何をするんですか!!?」
イヌ「お前、ここに入れ!」
saya「ええっ!!?」
イヌイの言っていることがわからないsayaは混乱している様子だ。
saya「でも、何の為に入るんですか!?どうしてそんなこと言うんですか!?ほら、私だとそのバズーカには入れないですよきっと…いくら私でもサイズが合わないと思うんです…だから」
イヌ「馬鹿野郎!」
彼女が言い終わらないうちにイヌイは吠えた。
sayaはその一喝で正気に戻っていた。
イヌ「このバズーカは一段と大きいんだからお前の体格なら余裕で入るわい!それにお前には心に決めた人だっているんだろ!?ならそいつの為に全力尽くさんかい!」
イヌイはそう言うと、sayaの手を引っ張って彼女を足からバズーカ砲に入れた。
sayaはイヌイの言うがままにバズーカ砲の中へと入った。
中は数発撃ったからか少し暖かかった。
地底の振動はだんだんと大きくなってきている。
イヌイがバズーカの銃口から顔をのぞかせた。
イヌ「いいな?今から俺はお前をあの穴に向かって打ち上げる…ちょっと熱いかもしれねえがそれでお前は助かるはずだ…」
sayaは黙って話を聞いていたが、一つある点に気がついてしまった。
saya「ちょっと待ってください!あなたはどうするんですか?」
彼女の問いに、彼はただ目をつぶっているだけだった。
その表情にはどこか笑みのようなものがこぼれているようだ。
そして地底が今にも崩れそうなことに気がつくと、イヌイはサッと銃口から身を引いた。
イヌ「時間がないな…撃つぞ!」
sayaはイヌイの末路を把握したようで、「はい…」と一つ返事をしただけで後は何も言わなかった。
イヌ「行けえええっ!」
イヌイが引き金を引き、バズーカから轟音と共にsayaが飛び出していった。
彼はそれを見送ると、バズーカの隣に座り込んで笑い始めた。
イヌ「まったく…笑い種だよなあ…恋愛反対同盟の隊長が、こんな手助けするなんてさ…それに…」
彼が目を閉じたとき、地底が崩れ、彼に大きな岩が降りかかってきた。
彼はその岩に埋もれて消えてしまった…
『いいヤツに限って、既に心に決めたヤツがいるんだもんな…』
『風のエリアにて84番脱落(65番)』
『風のエリアにて65番脱落(自滅)』
『氷のエリアにて73番脱落(21番)』
~七無空間運営~
エド「65番の場合は自殺とは見られないんですかね?」
アレン「これは自滅です。彼自身が招いた悲劇なのだから自殺とはとりません…とは言ってもこれは私の独断ですが」
エド「しかしX様がこれを見たら…」
アレン「ええ、私の首は飛ぶでしょうね…しかしもう関係のないことです…」
エド「えっ…?」




