#30.執(怨)念は恐ろしい
~風のエリア~
ビー「まずいなあ…隊長、来てたのか…」
キラ「しかし女子が1人木の下敷きか…けどなんで脱落者の情報は出ないんだ?」
ビー「言われてみれば…よく見たら隊長もいない…」
風のエリア森林部…
sayaが倒木の下敷きとなったショックか、采、60B、ヴァルグランの3人は絶望感にも近い感情を抱いていた。
その様子を木で寝ていた男が寝ぼけ眼をこすりながら見ていた…
???「成功したみたいですね…ではそろそろお暇しよう…あら?あらららららら?」
男は立ち上がろうとした際に足を滑らせ、倒木のある方へと滑り落ちてしまった。
更に運悪く地面に頭から突っ込んでしまい、その衝撃で気を失ってしまった。
60B「ん?誰だ?」
60Bが警戒しながらその男のもとに近づいていくが気絶した男はそれに気づいていない。
60Bは若干疑いを持ちながらも男の頬をつついたり自分の持っていた木の枝を男の首元に構えたりとしているが、男は気絶しているため何の反応も見せない。
60B「なんなんだコイツ…ん?」
60Bが男にさらなるちょっかいを出そうとした時、木の横に深くて暗い穴を見つけた。
その穴はsayaが下敷きとなって潰されたはずの場所にあった…
60B「これって…」
彼が確かめようとしたとき、気絶していた男が目を覚ました。
男「ん?うおっ!君!ここで何をしようとしてるんですか!?」
男は自分の持つ小太刀を60Bに突き付けてきた。
60B「うわっ!」
慌てた60Bは采たちのいるサイドへと走って逃げていった。
男は逃がさないと言わんばかりに小太刀をブンブン振り回して60Bに襲い掛かってくる。
采「えっ!?何!?」
60B「小太刀男が襲ってきてる!やばい!」
60Bの慌てた様子を采が見たとき、彼の後ろから小太刀を振り回して追ってくる男が見えた。
危ないと思った采はヴァルグランに助けを求めようとしたが、彼は完全に眠りについてしまったようで起きようともしない。
采「ひとまず逃げよう!」
60B「…ああ!」
2人は眠るヴァルグランを置いてダッシュで逃げ始めた。
男はヴァルグランを無視して60Bたちを追いかけに走り去って行った…
その一方、木の下にできていた穴の中では、sayaが積もった落ち葉の上でクラクラしながらも目を覚ましたところだった…
saya「あれ…?私…死んじゃったの…?」
イヌ「目覚めたか…」
saya「ひっ…」
sayaは思わず身構えた。
そこには自分の目の前に突如現れ殺そうとしていたイヌイが立っていたのだ…
イヌ「安心しろや…俺は弱った奴を襲うほど卑怯な奴じゃねえ…」
イヌイはその場に座り込むと自分が武器として使っていたライフルの手入れを始めた。
saya「そうなんですか…」
sayaは怯えながらもイヌイを見ている。
イヌイはライフルを撫でながらゆっくりと上を見上げた。
イヌ「しっかし俺が颯爽とお前を救い出そうとしたら何故か穴があきやがった…おかげで俺らは真っ逆さまだよコンチキショー!誰だ!こんなところに穴掘った奴は!」
イヌイは悔しそうに自分のライフルに一発チョップを入れた。
その音は虚しく穴の中でこだました。
saya『助けようとしてくれたんだ…この人っていい人なのかな…?』
イヌイがチョップを入れた数秒、どこからともなく「誰だい?」と女の声が聞こえてきた。
その声はどこかネットリとした感じの声だった。
saya「私たちは穴に落ちたみたいなんです!それで、そちらこそいったい誰なんですか!?」
女の声に反応するかのように、sayaは返事を送った。
女「ふ~ん…アンタたちも穴に落ちてきちゃったのかい?馬鹿だねえ~」
女はsayaたちを嘲るかのような声で返してきた。
心なしか声はカツーンカツーンという靴の音と共に次第に大きくなってきている…
イヌ「アンタも落ちてきたんなら馬鹿なんじゃねえ…か?」
イヌイはカチンと来たようで怒りに任せて反論しようとした。しかしちょうどその時に女が現れたようで、イヌイはその女の威圧感にやられて唖然としてしまった。
女「寝言は寝てから言ったらどう?それともアンタの脳はもう既にオネンネしているのかしら?」
イヌ「ぐぬぬ…」
女は全身黒ずくめの服を着た見た目30代くらいの女性で、彼女の左手には大きめの包丁が握られていた上に眼には光が見えない。まるでイヌイたちに対してゴミを見るような目で見下しているようだった…
イヌイは何か反論をしようとしたが、包丁と眼の威圧感からか動けないでいる。
その時sayaが女の方へ一歩歩みを寄せて、女に問いかけた。
saya「あ、あの!あなたはなんでこんなところに来ちゃったんですか?」
彼女の問いに女は表情を曇らせ…いや、曇らせたというよりはどこか苛立ちのような視線が彼女の光が無い眼から垣間見えているように見えた。さらには口元がニヤリと笑っているためどこか不気味だ。
女「簡単なことよ…私に別れを要求した彼と彼を奪った泥棒女彼氏を生きている世界から葬り去るのよ…永遠にね!」
イヌ・saya「!?」
女は自分の目的を話すと邪気を放つかのような笑みを見せた。
その様子にイヌイとsayaは思わず後ずさりしていた…
しかしイヌイは突然ハッとして何かを考え始めた。そして何を思ったか、彼女にその理由は何かという質問を投げかけた。
女「アンタってば本当にオネンネしているみたいねえ…アンタたちが死ぬ前に教えてあげるわ…」
イヌイはまた少しカチンときたようだったがひとまず抑えて彼女の話を聴くことに徹した。
女「私の彼は私を捨てて別の女に…よりによって私が相談を投げかけた彼女に告白をしたの…あの女は、私をピエロにして彼氏を奪った泥棒なの!大人しくアドバイスや金を支援してればいいだけの下僕が私を裏切って、私から彼氏を奪っていった卑怯者なの!!あの女は自分に好都合な事ばかり言って私の人生を台無しにしたの!!…だったら…私がアイツらを葬り去ってしまえばいい話…でしょ!?」
女はヒステリック気味に声を荒げながら2人に目を向けた。
その目からはもはや狂気という言葉しか浮かび上がってこなかった。
sayaは怯えていたが、イヌイは冷静にその発言をメモしているようだ。彼の目にはどこか楽しげな感情が出ている…
イヌ「…つまりは変なアドバイスを貰ってそれを実行したら裏切られたから恋愛を潰そうってことか?」
女は「そうよ!」と話すと包丁をイヌイたちの方へと向け始めた。
saya「ひっ…!」
怯えて後ずさりするsayaとは対照的に、イヌイはそれを聞くと笑顔になって女のもとへ近づいてきた。
女「何よ!?文句でもあるわけ!!?」
興奮で声が完全に荒くなっている女にイヌイはメモしていた紙を包丁にテープで張り付け始めた。
その紙には『合格』と書かれている。
イヌ「いやー気に入ったよ!アンタは恋愛反対同盟に入る素質がある!恋愛を潰そうとするその心意気、すんごく素晴らしい!」
イヌイはその場で彼女に向けて拍手を送っている。
saya「そんな!ただの私怨じゃないですか!アドバイスのせいにしてるだけじゃないですか!それで潰そうと考えるなんて…おかしいですよ!」
sayaは足を震わせながらも女に向けて吠えたがイヌイはその反論を無視して女のナイフが当たらない方向に回り込みながら女の横に立った。
イヌ「どんな形だろうと恋愛反対同盟は恋愛を潰そうとする者の味方なのだよ!ハッハッハ!…さて、早速ですがあそこで喚く女の子をまずはズタ切りにしてしまいましょう!」
女「ええ勿論よ!まあ、あんたは最後でいいわ!全て、あの女がいけないんだから、まずはそれを擁護しちゃってる痛いアンタからよ!」
女はいきなりsayaに襲い掛かってきた。
彼女は包丁をガシッと握ると、力任せに振り下ろした。
saya「キャアーッ!」
彼女の包丁を素早くかわすsayaだが女はしつこく包丁を振り回して攻めてくる。
イヌイは女の後ろをつけてライフルを構えているようだ。
saya『早く…早くどうにかしないと…!』
女「食らええええぃ!!!」
saya「キャアアアッ!」
女はsayaにとどめだと言わんばかりに包丁を持って飛びかかってきた。
sayaにはもう、攻撃をかわすスペースがなかった…
『光のエリアにて57番脱落(13番)』
『雷のエリアにて20番・70番脱落(19番)』
『氷のエリアにて6番脱落(51番)これにより残り30人となった』
~闇のエリア~
???「この穴はいったい何なんだ…?どこかへ繋がっているようだが…暗いの怖いから研究対象外としよう…」
~風のエリア(30分前)~
イヌ「ここに穴を掘ろう!」
小太刀男「しかし落とし穴にハマる人いるんですか?」
イヌ「つべこべ言わずに掘れ!」
小太刀男「はいはい…」
ザクッ!ゴソッ!ドドドドド…
イヌ「…思ったよりも深かったみたいだ…作戦中止!ここは…土を薄く敷いてごまかしとこう…よし!次の作戦だ!」
※穴を掘った犯人はイヌイたちだったようです…




