表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/39

36.リュクの夢


いつものように朝食の準備をしていると、リュクがリビングに降りてきた。

少し緊張した面持ちだ。


「おはよう、リュク」

「おはよう、イクメン」


リュクが席に座る。

アリアはまだ寝ているようだ。


「どうした?何か言いたそうな顔してるぞ」


俺が声をかけると、リュクは少し躊躇してから口を開いた。


「イクメン、相談がある」

「何だ?」


俺は手を止め、リュクに向き直った。


「俺…家庭騎士になりたい」


リュクの声は真剣だった。


「家庭騎士?」


俺は少し驚いた。

聞き慣れない職業名だ。


「昨日、本で見つけたんだ。家族や子供を守る騎士で、育児や家事もできる職業。剣を持つ育児師とも呼ばれてる」


リュクの瞳は真っ直ぐだった。


「俺、それになりたい。イクメンやアリア、それにここの子供たちを守りたい。でも、ただ強いだけじゃなくて、優しくて、子供たちと遊べて…そういう存在になりたいんだ」


リュクの言葉を聞いて、俺は胸が熱くなった。

この子は、本当に成長したな。


「変かな?」


リュクが少し不安そうに聞く。


「いや、全然変じゃない」


俺は微笑んだ。


「むしろ、素晴らしい目標だ。家庭騎士か…いい職業だな」

「本当?」

「ああ。お前なら、きっとなれる」


俺はリュクの肩に手を置いた。


「俺も全力で応援するぞ」

「ありがとう、イクメン」


リュクの顔がパッと明るくなった。


「じゃあ、今日から家庭騎士になるための訓練を始めよう」

「今日から?」

「ああ。剣術だけじゃなく、育児や家事も学ぶ。それが家庭騎士だろ?」


俺が笑うと、リュクも嬉しそうに頷いた。


「うん!頑張る!」


その時、階段から小さな足音が聞こえた。


「ぱぱ、リュクおはよー!」


アリアが眠そうな顔で降りてくる。


「おはよう、アリア」


俺がアリアを抱き上げると、アリアは俺の肩に顔を埋めた。


「まだ、ねむい…」

「ははは、もう少ししたら目が覚めるさ」


リュクがその様子を見て、小さく笑っていた。



午前中。

子供たちが育成院に集まってきた。

レオナルドも昨日に続いて、時間通りにやってきた。


「おはよう、イクメン」

「おはよう、レオナルド」

「今日もよろしくお願いします」


レオナルドが頭を下げる。


「ああ。今日もよろしくな」


子供たちはすぐにレオナルドに駆け寄った。


「おにいちゃん、おはよー!」


レオが元気に叫ぶ。


「おはよう、レオ」


レオナルドが笑顔で頭を撫でる。

マルコも真面目な顔で近づいてきた。


「レオナルド、今日は何して遊ぶ?」

「うーん、何がいいかな」


レオナルドが考えていると、ソフィアがおっとりとした足取りで近づいてきた。


「おはよう、レオナルドさん」

「おはよう、ソフィア」


ソフィアは少し頬を染めながら、チラリとリュクを見た。リュクはそれに気づいたようで、少し目を逸らした。

ソフィアは最近、リュクの絵ばかり描いている。

リュクもそれに気づいているようだ。

ソフィアが近づいてくると、リュクは少し目を逸らす。困ったような、戸惑ったような表情だ。


「…ごほん。リュク、今日から訓練だな」


俺が声をかけると、リュクは気を取り直したように頷いた。


「あ、うん!」


リュクが俺のもとへ向かってくる。



庭に出ると、俺はリュクと向かい合って立っていた。


「家庭騎士になるには、剣術、育児、家事の全てが必要だ」

「うん」

「まず剣術は、レオナルドに協力してもらおう」

「レオナルドに?」


リュクが驚く。


「ああ。俺は剣術の専門家じゃない。レオナルドの方が教えるのが上手いはずだ」


俺が振り返ると、レオナルドが庭の入口に立っていた。


「呼んだか、イクメン?」

「ああ。リュクに剣術を教えてやってくれないか」

「剣術?いいぞ、俺なんかでよければ」


レオナルドが笑顔で近づいてくる。


「リュク君、一緒に頑張ろう」

「ありがとう、レオナルド」


リュクが頭を下げる。


「じゃあ、午前中は剣術訓練。午後は育児と家事を学ぶ」


俺がそう言うと、リュクは力強く頷いた。


「わかった!」


こうして、リュクの新たな訓練が始まった。

レオナルドがリュクに基礎を教えている。


「剣の持ち方、まずはそこからだ」


レオナルドが自分の剣を構える。


「手首の角度、足の位置、体重の乗せ方。全部が大事だ」

「わかった」


リュクが真剣な顔で剣を構える。

レオナルドが細かく指摘していく。


「もう少し足を開いて。そう、そのくらい」

「こうか?」

「うん、いい感じだ」


俺はその様子を少し離れた場所から見守っていた。

レオナルドは教えるのが上手いな。

さすがは英才教育を受けてきただけある。

リュクも真面目に聞いているし、いいコンビだ。

その時、アリアが俺の服を引っ張った。


「ぱぱ、リュクおにいちゃん、がんばってる!」

「ああ、頑張ってるな」

「わたしも、がんばる!」


アリアが拳を握りしめる。


「アリアは何を頑張るんだ?」

「まほう!」

「ははは、そうか。じゃあ、後で一緒に練習しような」

「うん!」


アリアが嬉しそうに笑った。



昼食後。


子供たちが昼寝をしている間、俺はリュクを呼んだ。


「リュク、次は育児だ」

「育児?」

「ああ。子供たちが起きたら、お前が世話をしてみろ」

「俺が?」

「そうだ。家庭騎士は育児もできなきゃいけない。実践で学ぶのが一番だ」


俺が言うと、リュクは少し緊張した様子で頷いた。


「わかった。やってみる」


しばらくして、子供たちが目を覚まし始めた。

まず起きたのはオリバーだった。


「せんせー、おなかすいた…」


眠そうな顔で起き上がるオリバー。


「リュク、任せた」


俺が言うと、リュクは慌てて駆け寄った。


「オリバー、おやつ食べるか?」

「うん…」


オリバーが眠そうに頷く。


「じゃあ、ちょっと待ってて」


リュクがキッチンへ向かい、おやつを準備する。

俺が事前に用意しておいたクッキーを皿に盛り、牛乳を注ぐ。


「はい、どうぞ」


リュクがオリバーにおやつを渡す。


「ありがとー」


オリバーが嬉しそうに食べ始めた。


次に起きたのはエマだった。

人見知りな3歳の女の子だ。

ぬいぐるみを抱えて、きょろきょろと周りを見ている。


「エマ、大丈夫か?」


リュクが優しく声をかける。


「…うん」


エマが小さく頷く。


「喉、乾いてない?」

「…うん」

「じゃあ、お水持ってくるね」


リュクがコップに水を注いで持ってくる。


「はい」

「…ありがとう」


エマが小さな声で礼を言い、水を飲んだ。

俺はその様子を見守りながら、微笑んでいた。

リュク、いい感じだな。

優しく接しているし、子供たちも安心している。

このまま続けていけば、きっといい家庭騎士になれる。

その時、ソフィアが目を覚ました。


「…あ」


ソフィアがリュクを見て、少し頬を染めた。

リュクは気づいたようで、少し戸惑った表情になった。


「ソフィア、起きたか」


リュクが優しく声をかける。


「…うん」


ソフィアが恥ずかしそうに俯く。


「喉、乾いてない?」

「…ちょっと」

「じゃあ、お水持ってくる」


リュクが再びコップを持ってくる。


「はい」

「ありがとう…リュク君」


ソフィアが上目遣いでリュクを見る。

リュクは少し目を逸らした。

リュクの表情が困ったように揺れている。

優しくしたいが、どう接していいかわからない。

そんな葛藤が、表情に現れていた。

俺はその様子をそっと見守ることにした。

リュクも大変だな。

でも、これも成長の一部だ。

自分で考えて、答えを見つけていくしかない。



午後。

レオナルドが子供たちと遊んでいる間、俺はリュクに家事を教えていた。


「家庭騎士は家事もできなきゃいけない」

「家事か…」

「ああ。掃除、洗濯、料理。全部大事だ」


俺がそう言うと、リュクは真剣な顔で頷いた。


「まずは掃除からだ」


俺はリュクに箒とちり取りを渡した。


「リビングを掃除してみろ」

「わかった」


リュクが箒を持ち、床を掃き始める。

最初はぎこちなかったが、すぐに慣れてきた。


「いい感じだな」

「これくらいなら、できる」


リュクが少し自信を持った様子で答える。


「次は洗濯だ」


俺はリュクを洗濯場へ連れて行った。


「洗濯物を干す時は、シワを伸ばしてから干すんだ」

「シワを伸ばす…?」

「ああ。こうやって」


俺が実演すると、リュクは真剣な顔で見ていた。


「やってみろ」

「うん」


リュクが洗濯物を手に取り、シワを伸ばしてから干す。


「いい感じだ」

「意外と難しいな」

「慣れれば簡単だ。毎日やってれば、すぐに覚える」


俺が言うと、リュクは頷いた。


「次は料理だ」

「料理!?」


リュクが驚く。


「ああ。家庭騎士なら、料理もできなきゃいけない」

「でも、俺…」

「大丈夫だ。簡単なものから始めよう」


俺はリュクをキッチンへ連れて行った。


「今日は、サンドイッチを作ろう」

「サンドイッチ?」

「ああ。簡単だし、子供たちも好きだ」


俺がパンとハム、野菜を並べる。


「まず、パンにバターを塗る」

「こう?」


リュクがナイフを持ち、ぎこちなくバターを塗る。


「いい感じだ。次にハムと野菜を挟む」

「わかった」


リュクが真剣な顔でハムとレタスを挟む。


「最後に、斜めに切る」

「斜め?」

「ああ。こうやって」


俺が包丁を持ち、サンドイッチを斜めに切る。


「やってみろ」

「うん」


リュクが慎重に包丁を動かし、サンドイッチを切る。


「できた!」


リュクの顔が明るくなった。


「いい感じだな。これが家庭騎士の基礎だ」

「料理も、意外と楽しいな」


リュクが笑顔で言う。


「だろ?料理は楽しいぞ」


俺も笑顔で答えた。



夕方。

子供たちのお迎えが始まり、レオナルドも帰る時間になった。


「今日もありがとう、イクメン」


レオナルドが頭を下げる。


「こちらこそ。リュクを教えてくれて、ありがとうな」

「いえ。リュク君は真面目だから、教えがいがあります」


レオナルドが笑顔で答える。


「じゃあ、また明日」

「ああ、また明日」


レオナルドが育成院を出ていく。

リュクはその背中を見送りながら、何かを考えていた。今日一日のことを振り返っているんだろう。

剣術、育児、家事。

全部を学んだ。

リュクの表情は真剣だった。

拳を握りしめ、小さく頷いている。

決意を新たにしているんだな。

俺は微笑みながら、リュクを見守っていた。



その夜。

夕食を終えて、俺は郵便受けを確認した。

すると、一通の手紙が入っていた。

王宮の紋章が押されている。

クリストファーからか。

俺は手紙を開いた。


-----


**イクノ・メン殿* *

お世話になっております。クリストファーです。


アルフレッドの様子をご報告します。

おかげさまで、アルは順調に成長しています。

最近は、よく笑うようになりました。

リリアナと私で協力して世話をしています。


アルの様子を見て、母上は涙を流して喜んでおられました。父上も、あなたに深く感謝しておられます。


私も、育児を学び続けています。

まだ不慣れですが、アルのためなら何でも頑張れます。


あなたに教わったことを、忘れません。

本当に、ありがとうございます。


またお会いできる日を楽しみにしております。


**クリストファー・フォン・リヒテンシュタイン**


-----


俺は手紙を読み終えて、微笑んだ。

クリストファー、頑張ってるな。

アル様も順調に成長しているようだ。

王妃様も喜んでいる。

何より、クリストファーが兄としての自覚を持っている。

それが一番嬉しい。

俺は手紙を大事に仕舞い、後日返事を書くことにした。



翌日。

買い物のため、俺はリュクとアリアを連れて街へ出た。

街は賑わっていた。

商人たちが声を上げ、人々が行き交う。

俺たちは市場を歩いていた。

その時、ふと視界に入ったものがあった。

獣人の子供が、道端に座り込んでいた。


年は5、6歳くらいだろうか。

耳と尻尾が生えている。

服はボロボロで、顔には泥がついている。

その子供の前を、人々が避けるように通り過ぎていく。誰も声をかけない。誰も助けない。

俺は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。


「イクメン、どうした?」


リュクが声をかけてくる。


「…いや、何でもない」


俺は視線を逸らし、歩き続けた。

でも、心の中には引っかかるものがあった。

あの子、どうして一人なんだろう。

親は?家は?

そして、どうして誰も助けないんだ。

俺は考え込みながら、買い物を続けた。


ーー帰り道。

俺はまだあの獣人の子供のことを考えていた。


「イクメン、さっきから黙ってるけど、大丈夫?」


リュクが心配そうに聞く。


「ああ、大丈夫だ」


俺は微笑んだ。


でも、心の中では決意していた。

もし、また会ったら。

もし、助けを求められたら。

俺は、絶対に助ける。

それが、俺のやり方だ。



アリアが寝た後、俺はリュクと二人でリビングにいた。


「リュク、今日の訓練、どうだった?」

「大変だったけど、楽しかった」


リュクが笑顔で答える。


「レオナルドの教え方もわかりやすかったし、料理も意外と楽しかった」

「そうか。それはよかった」


俺が微笑むと、リュクは少し考えてから口を開いた。


「イクメン、一つ聞いていい?」

「何だ?」

「ソフィアって…まだ俺のこと、好きなのかな」


リュクが恥ずかしそうに聞く。


「ああ、たぶんな」


俺は正直に答えた。


「だよな…」


リュクが頭を抱える。


「あれからずっと考えてたんだけど、今だにどうしたらいいかわからないんだ。ソフィアはいい子だけど、まだ6歳で、俺は10歳。どう接したらいいか…」


俺も少し考えた。


「リュク、お前はどう思ってるんだ?」

「ソフィアは可愛いし、優しいと思う。でも、まだ俺子供だし、恋愛とかよくわからない」


リュクが正直に答える。


「なら、今は普通に接していればいい」


俺が言うと、リュクは驚いた様子で聞き返した。


「普通に?」

「ああ。無理に意識する必要はない。優しく接して、困ってたら助けて、普通に友達として接すればいい」

「それだけでいいの?」

「ああ。いずれソフィアも大きくなる。その時に、自分で気持ちを整理するさ。今は、お前が変に意識しすぎない方がいい」


俺の言葉に、リュクは少しホッとした様子だった。


「そっか…じゃあ、今まで通りでいいんだな」

「ああ。それが一番だ」

「わかった。ありがとう、イクメン」


リュクが笑顔で答えた。


俺も微笑みながら、リュクの頭を撫でた。


「お前も大変だな」

「ははは、そうだな」


二人で笑い合った。

温かい夜。

穏やかな時間。

これからも、こんな日々が続いていってほしい。

俺はそう思いながら、お茶を飲み干した。


-----


【今回獲得した称号!】


称号:「未来の導き手」

取得条件: 子供の新たな道を全力で応援した


称号:「恋心の見守り人」

取得条件: 子供の初恋を優しく見守った


保有称号数: 42個 → 44個

(次回称号付加まで: あと6個)


-----


【育児経験値+32獲得】

【育児経験値: 409/500 → 441/500】



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ