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33.おませなソフィア!てんやわんや!


午前8時。

預かりの開始時間になり、玄関のベルが鳴り始めた。


リンリンリン。


「さーて、今日もやりますか!」


俺は玄関に向かってドアを開けると、保護者たちと子供たちが立っていた。


「おはようございます、イクノ・メンさん」


最初に来たのは、ソフィアと母親だった。


「おはようございます。さあ、どうぞ」


母親が育成院の中に入る。

ソフィアも後ろからついてくる。


「…ん?」


俺は少し違和感を覚えた。

ソフィアの様子が、いつもと違う。

髪を頑張って、丁寧に結び直している。

服も、いつもより少しオシャレだ。

リボンまでつけている。


「ソフィア、今日は髪型を変えたんだな」

「うん!お母さんがやってくれた!」


ソフィアが嬉しそうに答える。

母親も微笑みながら喜んでいた。


「今日は張り切ってますのよ。可愛くしてって朝から言ってまして」

「そうなんですか、似合ってますね」

「ええ本当!私に似て可愛いんです、この子!」


俺は微笑み返す。

でも、心の中で少し引っかかるものがあった。

昨日の恋愛相談。

もしかして、それが関係してるのか?


「それでは先生、よろしくお願いします」

「はい。お任せください」


母親が去っていく。

ソフィアは、キョロキョロと周りを見回していた。


「リュクお兄ちゃん、いる?」

「ああ、リュクなら隣の部屋にいるぞ」

「わかった!」


ソフィアが嬉しそうに駆け出していく。

俺は少し心配になった。

まさか、何か企んでないだろうな…。



午前10時。

子供たちは、リビングで遊んでいる。

リュクとアリアも一緒だ。

俺は少し離れたところから、子供たちを見守っていた。


「リュクお兄ちゃん!」


ソフィアがリュクに駆け寄っていく。


「ん?どうした、ソフィア」


リュクが振り返る。


「これ!お母さんに作ってもらったの!」


ソフィアが小さな袋を差し出す。

中には、クッキーが入っていた。


「えっと…ありがとう」


リュクが受け取る。


「リュクお兄ちゃんのために、作ってもらったの!」

「そ、そうか。ありがとう」


リュクが少し戸惑いながらも、笑顔で答える。

俺は遠くから見ていて、思った。

これは…アピールか。

昨日の恋愛相談の影響だな。

ソフィアなりに、頑張ってるのか。

微笑ましいな。



午前11時。

レオが走り回っている。


「レオ、走りすぎると危ないぞ」


リュクが注意する。


「だいじょぶー!」


次の瞬間、レオが転んだ。


「いたーい!」


リュクが駆け寄る。


「ほら、言ったろ。大丈夫か?」

「うん…」


レオが膝を押さえる。

少し擦り傷ができている。


「リュクお兄ちゃん!」


ソフィアが飛んでくる。


「リュクお兄ちゃん、大丈夫!?疲れてない!?」

「え?俺?俺は大丈夫だけど…」


リュクが困惑する。


「お水飲む?座る?」

「いや、レオの方が…」

「レオはいいの!リュクお兄ちゃんが心配なの!」


ソフィアが過剰に心配する。

リュクは完全に困っている様子だった。


「…だ、大丈夫だよ」


俺は遠くから見ていて思った。

ちょっとやりすぎだな、ソフィア。



時計が正午をまわる。

お昼ごはんの時間だ。


「みんな、手を洗って集合ー!」


俺が声をかけると、子供たちが次々と洗面所へ向かう。手を洗い終わったら、みんなでテーブルに座る。

今日の昼ごはんは、野菜たっぷりのシチューだ。


「じゃあ、みんな手を合わせて。いただきます」

「いただきます!」


みんなで手を合わせる。

リュクがスプーンを持って、シチューを食べ始める。


「リュクお兄ちゃん、すごーい!」


ソフィアが突然叫びだした。


「え?」


リュクが驚く。


「スプーン、上手に持ってる!」

「いや、これくらい普通だけど…」


リュクが困惑する。


「かっこいい!」

「え、ええ…?ありがとう…」


リュクが完全に戸惑っている。

アリアが首を傾げて尋ねた。


「ソフィア、げんきだね」

「そんなことないよー、普通だよ」


ソフィアが笑顔で答える。


俺は少し離れたところから見ていて、頭を抱えそうになった。

これは…かなりやりすぎだな。

リュクが完全に困ってる。

周りの子供たちも、不思議そうに見ている。

このままだと、まずいか?



昼ごはんが終わった後。

ソフィアが庭に出た。

そして、花を摘み始める。


「ソフィア、何してるの?」


エマが聞く。


「お花、摘んでるの」

「なんで?」

「リュクお兄ちゃんに、あげるの」

「えー!えー!」


エマが目を輝かせる。


「ソフィア、リュクお兄ちゃん好きなの?」

「うん!好き!」


ソフィアがはっきりと答える。


「わー!わー!」


エマが叫ぶ。

他の子供たちも集まってくる。


「エマちゃん、どうしたのー?」

「ソフィア、リュクお兄ちゃん好きなんだ!」

「ええー!」

「ひゃあー!」

「きゃー!」


子供たちが騒ぎ始める。

ソフィアが花を束にして、リュクのところに持っていく。


「リュクお兄ちゃん、これあげる!」

「え?」


リュクが驚く。


「ソフィアが作ったの!」

「は、生えてたんじゃなくて?…ありがとう」


リュクが受け取る。

顔が少し赤くなっている。

周りの子供たちが、一斉に騒ぎ出す。


「わー!」

「ソフィア、リュクお兄ちゃん好きなんだー!」

「きゃー!」


リュクの顔が真っ赤になる。


「え、ちょ、ちょっと…」


リュクが完全に混乱している。

俺は見ていて、思った。

これは介入しないとまずいかもしれない。

あまりこういうのに、大人が首を突っ込むべきではないが…。

困り果ててるリュクを、放っておくわけにもいかない。なによりも、ソフィアが暴走しすぎている。

でも、次は昼寝の時間だ。

もう少し、もう少しだけ様子を見よう。



午後1時。

昼寝の時間だ。

子供たちは、リビングの布団に横になっている。

俺は、父の温もり(コンフォート・オーラ)を発動させて、部屋全体を優しい空気で満たした。


フワァ…


温かく、柔らかい感覚が広がっていく。

子供たちが、次々と眠りについていく。


「…すー」

「…んー」


みんな、安心したような表情で眠っている。

リュクとアリアも、それぞれの部屋で休んでいるはずだ。

静かな午後。

子供たちの寝息だけが、部屋に響いている。

俺は子供たちを見守りながら、時計を確認する。

その時だ。


「…ふぅ」


ソフィアが、布団から起き上がった。

なんだ?眠れないのか?

ソフィアがキョロキョロと周りを見る。

そして、静かに立ち上がった。

俺の方を確認する。

俺は咄嗟に目を閉じて、寝ているフリをした。


「ぐー、ぐー…」


薄目になると、ソフィアがリビングから出て行くのが見えた。廊下を歩く音が聞こえる。

…どこに行くんだ?

俺はそっと目を開けて、ソフィアの後を追った。


「あの方向は」


ソフィアは、リュクの部屋に向かっている。

まさか…嫌な予感がした。

俺はソフィアの後をそっと追う。

ソフィアが、リュクの部屋のドアをゆっくりと開ける。中を覗き込んでいた。


「…すー…すー…」


リュクは、布団で熟睡している。

静かな寝息が聞こえる。

完全に眠っている。

ソフィアが、部屋の中に入る。

そして、リュクの布団に近づいていく。


「…っ!?」


俺は目を見開いた。

ソフィアが、リュクの横にしゃがむ。

そして、顔を近づけていく。

明らかに、キスしようとしている!


「ソフィア!」


俺は慌てて駆け寄った。


「きゃ!せんせい!?」


ソフィアがビクッと飛び上がる。

顔が真っ赤だ。


「ちょ、ちょっと来い」


俺はソフィアの手を取って、部屋から連れ出す。

リュクは熟睡していて、気づいていない。


「…すー…すー…」


よかった…間に合った…。



俺はソフィアをリビングの隅に連れて行った。

他の子供たちに聞こえないように、声を落とす。


「ソフィア」

「…はい」


ソフィアが俯く。

自分がやろうとしたことが、ダメだと分かっているようだ。


「リュクお兄ちゃんに、なにしようとしてた?」

「…キスしようとしてた」

「やっぱりそうか」


俺は優しく、でも真剣に言葉を続ける。


「ソフィア、キスっていうのはな、とても大切なものなんだ」

「…うん」

「好きな人にするものだけど、それは相手も同じ気持ちの時にするものなんだ」

「同じ気持ち…?」


ソフィアが顔を上げる。


「そうだ。リュクは、ソフィアにキスされたいって思ってるか?」

「…わかんない」

「だろ?分からないのに、勝手にしたらダメなんだ」


俺はソフィアの頭を優しく撫でる。


「それに、リュクは今、寝てる。起きてない時に、そういうことをしたら…」

「…ダメ?」

「ああ。相手が気づいてない時に、そういうことをするのは、良くないことなんだ」

「ごめんなさい…」


ソフィアの目に、涙が滲む。


「謝らなくていい。ソフィアは、まだ6歳だ。知らなかっただけだからな」


俺は優しく言葉を続ける。


「好きな気持ちは素敵だ。でも、相手の気持ちを考えるのも大事なんだ」

「相手の…気持ち…」

「そうだ。リュクが『いいよ』って言ってくれるまで、待つんだ」

「待つ…?」

「そうだ。それが、本当に好きな人を大切にするってことなんだよ」


ソフィアが小さく頷く。

しかし今日の行動は、自分で考えたにしては少しおかしい気がする。誰かに変なことを吹きこまれたか?


「ソフィア、誰かになにか教わったのか?」

「…お母さんと、お友達」

「お友達?」

「うん。お友達が言ってた。『好きな人には、キスすればいいんだよ』って」

「お母さんは?」

「お母さんは、『好きな人には積極的にね』って」


俺は頭を抱えそうになった。

お母さんの言葉と、友達の情報を組み合わせたのか…。そりゃ、こんなことになるわけだ。


「ソフィア、お友達の言ってたことは、ちょっと違うんだ」

「ちがう…?」

「ああ。キスは、相手が『いいよ』って言った時にするものなんだ。絶対に忘れないでくれ」

「…うん」

「あとお母さんの『積極的に』って言葉も、確かに大事だけど、それは相手に向かって突っ走れって意味じゃなくて、自分の好きなことを一生懸命頑張るって意味なんだと思うぞ。」


俺はソフィアの目をまっすぐ見つめる。


「昨日も言ったけど、ソフィアは絵を描くのが好きだろ?」

「うん」

「それを頑張るんだ。一生懸命描いて、楽しんで、上手になる。それが、お母さんの言ってた積極的なんだよ」

「絵…を、がんばる…?」

「そうだ」


ソフィアが考え込む。


「今日、ソフィアはリュクに色々してたよな」

「…うん」

「クッキーをあげたり、心配したり、褒めたり」

「うん…」

「それも悪くないけど、ちょっとやりすぎだったんだ。リュクが困ってたの、気づいてたか?」

「え…気づいてなかった」


ソフィアがショックだったのか、小さな声で答える。


「相手の気持ちを見るのも、大事なんだ。リュクが嬉しそうか、困ってるか。それを見ながら接するんだよ」

「…うん」

「だからまずは、ソフィアが自分の好きなことを頑張ってる姿を、リュクに見てもらう。それが一番良いよ」

「それだけ…?」

「ああ。それだけで十分なんだ」


俺は優しく微笑む。


「リュクはな、頑張ってる人を応援する子だ。だから、ソフィアが頑張ってたら、きっと見てくれる」

「…そうなの?」

「それが、本当の好きの伝え方なんだよ」

「わかった…」


ソフィアは真剣な表情をしていた。

よかった。どうにか伝わったみたいだな。


「…よし!じゃあ、少し休むか?」

「うん」


ソフィアが布団に戻る。

俺は父の温もり(コンフォート・オーラ)を少し強めに発動させた。


フワァ…


「…すー」


ソフィアが、安心したように眠りについた。

俺は小さく息を吐く。


危なかった…。

もし、あのままキスしてたら…。

リュクは気づかなかったかもしれないが、それでも良くない。

相手の気持ちを考える。

それが、恋愛の第一歩だ。

ソフィアは、まだ6歳。

これから、たくさん学んでいくだろう。



午後3時。


子供たちが昼寝から起きてきた。


おやつの時間だ。


「今日のおやつ、一緒に作るか?」


「やるー!」


子供たちが一斉に手を挙げる。


「よし。じゃあ、キッチンに行こう」


俺はキッチンに向かう。

リュクとアリアも一緒だ。


リュクが昼寝から起きてきた。


「ん…よく寝た」

「おはよう、リュク」

「ああ、おはよう」


リュクはソフィアに気づく。


「ソフィア、元気か?」

「う、うん!」


ソフィアが慌てて顔を隠す。

顔が少し赤くなっている。


「そっか。じゃあ、いいけど」


リュクが優しく笑う。

ソフィアの顔が、さらに赤くなった。

俺は2人のやり取りを見ながら、微笑む。

よしよし。

いい感じだ。



おやつの時間。

今日は、ホットケーキを作ることにした。


「ソフィア、手伝ってくれるか?」

「うん!」


ソフィアが元気よく答える。


「じゃあ、生地を混ぜてくれ」

「わかった!」


ソフィアが一生懸命、生地を混ぜる。

真剣な表情だ。

リュクが横を通りかかる。


「ソフィア、頑張ってるな」

「え?」


ソフィアが顔を上げる。


「生地、上手に混ぜてるじゃん」

「ほ、ほんと?」

「ああ。すごいな」


リュクが笑顔で言う。

ソフィアの顔が、パッと明るくなった。


「ありがとう、リュクお兄ちゃん!」

「おう」


リュクが軽く手を振って、去っていく。


ソフィアは、嬉しそうにホットケーキの生地を混ぜ続けた。

俺はその様子を見ながら、微笑む。

これだ。これが、正しいアピールなんだ。

無理に褒めたり、押し付けたりしない。

ただ、自分の好きなことを頑張る。

それを見てもらう。

それが、一番自然で、一番伝わる方法なんだ。

ソフィアも、それを少しずつ学んでいる。



午後5時。

お迎えの時間が近づいてきた。

子供たちは片付けを手伝っている。

ソフィアも、いつも通り明るく笑っていた。


「せんせー、おわったー」


レオが報告してくる。


「ありがとう。みんな偉いぞ」


玄関のベルが鳴った。


リンリンリン。


「お迎えだな」


俺は玄関に向かってドアを開けると、保護者たちが立っていた。


「ママー!」

「パパー!」


子供たちが嬉しそうに駆け寄っていく。


「バイバイ、せんせー」

「またね、リュクお兄ちゃん」


ソフィアが、リュクに手を振る。

リュクも笑顔で手を振り返した。


「またな、ソフィア」


ソフィアの顔が、少し赤くなる。

でも、嬉しそうに笑っていた。

今日の朝とは違う。

押し付けがましくない、自然な笑顔だ。

みんなが帰っていく。

最後の子供が帰ると、育成院が静かになった。



夜。午後7時。

夕食の時間だ。


「今日も、お疲れ様」


俺はリュクとアリアに言う。


「今日、ソフィアがすごかったな」


リュクが言う。


「ああ」


俺が答える。


「朝から、なんか張り切ってた」

「そうだな」

「でも、午後は普通だった。何かあったのかな?」

「…ちょっとな」


俺は曖昧に答える。

ソフィアの秘密は、守らなければならない。


「リュク、困ってなかったか?」

「え?」

「朝、ソフィアが色々してただろ」

「ああ…まあ、ちょっと驚いたけど、大丈夫だったよ」


リュクが笑う。


「ソフィア、俺のこと好きなのかな」


リュクが首を傾げる。

俺は少し驚いた。


「気づいてたのか?」

「やっぱり?なんとなく。みんなも言ってたし」

「そうか」

「でもまだ6歳だし、歳離れてるから分かんないや」


リュクが照れくさそうに笑う。

アリアが首を傾げる。


「ソフィア、リュクお兄ちゃん好きなの?」

「みたいだな」


リュクが答える。


「わー!」


アリアが目を輝かせる。


「リュクお兄ちゃん、もてもて!」

「いや、そういうんじゃ…」


リュクが顔を赤くする。

俺は2人のやり取りを見ながら、笑った。

リュクは、ソフィアの気持ちに気づいている。

でも、まだどう対応していいか分からないみたいだ。

それでいいんだ。焦る必要はない。

2人とも、これから成長していく。

その過程で、色々なことを学んでいく。

俺は、その成長を見守り続ける。


「さあ、ご飯にしよう」

「いただきまーす!」



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【今回獲得した称号!】


**称号:「恋心の守護者」**

取得条件:子供の暴走を止め、正しい恋愛観を教えた


**称号:「境界線の教師」**

取得条件:相手の同意の重要性を子供に教えた


**保有称号数:37個 → 39個**

(次回称号付加まで:あと11個)


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【育児経験値+40獲得】

【育児経験値:306/500 → 346/500】


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