表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/39

31.待ちに待った!新しい育成院


1ヶ月が経った。


ついに育成院が完成した。

以前よりも大きく、頑丈で、美しい建物だ。

王国最高の建築家が設計し、最高の材料を使って建てられた。壁は分厚く、床は頑丈で、窓は大きく明るい。子供たちが安全に、快適に過ごせる場所になった。


俺たちは今日、おばさんの家から引っ越してきた。

荷物を運び込み、部屋を整える。

リュクもアリアも、嬉しそうに走り回っている。


「ぱぱ、ひろい!」


アリアが廊下を走りながら叫ぶ。


「ははは、転ぶなよ」

「だいじょうぶ!」


リュクも、自分の部屋を確認している。

以前よりも広くなった部屋に、満足そうな表情を浮かべていた。


「イクメン、この部屋すごいな」

「気に入ったか?」

「ああ、最高だ」


リュクが笑顔で答える。


俺も自分の部屋を見回す。

広々としていて、清潔で、温かみのある部屋だ。

ここで、また子供たちと過ごせる。

その思いだけで、胸がいっぱいになった。



翌朝。


「イクメンおはよう」

「ぱぱ、おはよう」

「おはよう。リュク、アリア」


時刻は朝6時半。

俺は朝食の準備をしている。

リュクもアリアも、もう起きていた。


「いまなんじ?」


アリアが聞く。

俺は壁にかけてある時計を見た。


「6時半だ。ちょうど朝ごはんの時間だな」


この時計は、魔導機と呼ばれる装置だ。

見た目は元の世界の時計と変わらないが、動力が違う。電池ではなく、魔力をチャージすることで動く。この世界では、魔力で動く小さな装置を魔導機と呼ぶ。時計、ランプ、簡単な調理器具など、日常生活で使われているが、まだ技術が発展していないため、大きな機械は作れないらしい。小物だけだ。


俺には魔力がないため、週に一度、アリアに魔力をチャージしてもらっている。

リュクもたまに手伝ってくれる。

2人とも、魔力の扱いが上手くなってきた。


「そういえば、時計の魔力、そろそろ切れるころか」

「アリアが、いれる!」


アリアが元気よく答える。


「ありがとう。後でお願いするな」

「うん!」


アリアが嬉しそうに笑う。

こういう小さな手伝いが、アリアの自信に繋がっているのかもしれない。


「ご飯できたぞ」

「やったー!」

「お腹すいたぁ」


アリアが椅子に座る。リュクも席につく。

3人での朝食。これが、俺たちの大事な時間だ。


朝ごはんと夜ご飯は、預かりの子供たちがいない時間。俺たち家族だけの、特別な時間だ。他の子供たちも大切だが、この時間だけは、リュクとアリアのために確保している。


「いただきます」


3人で手を合わせて、朝食を食べ始める。


「今日から、昼間の預かり再開するんだよな」


リュクが聞く。


「ああ。近所の人たちも待ってくれてた」

「たのしみ!みんなにあえる!」


アリアが目を輝かせる。


朝食が終わった後、アリアが時計の前に立った。


「ぱぱ、いれるね」

「ああ、頼む」


アリアが時計に小さな手を当てる。

目を閉じて、集中する。


フワッ…


淡い光が、アリアの手から時計へと流れ込んでいく。綺麗な魔力だ。国内で1番綺麗だ。


「…できた!」


アリアが嬉しそうに振り返る。


「ありがとう、アリア。これで1週間は大丈夫だ」

「えへへ」


アリアが照れくさそうに笑う。

リュクが横から覗き込む。


「アリア、魔力の扱いが上手くなったな」

「リュクもじょうずだよ」

「ははっ、ありがとう」


2人のやり取りを見ながら、俺は微笑む。

2人とも、本当に成長した。



午前8時。

預かりの開始時間になり、玄関のベルが鳴り始めた。


リンリンリン。


「お、来たか!」


俺は玄関に向かってドアを開けると、保護者たちと子供たちが立っていた。


「おはようございます、イクノ・メンさん」


最初に来たのは、ソフィアとその母親だった。

預かりにくる子供達の名前は、全部記憶している。

間違えて呼んでしまったら大変だからな。


「おはようございます。さあ、どうぞ」


母親が育成院の中に入った瞬間、目を見開いて立ち止まった。


「まあ…!こんなに立派に…!」


その声に、俺は笑顔で答える。


「以前よりも広くなりました。子供たちが走り回れるように、安全にも配慮しています」

「素晴らしいですわ。こんな施設、王都でも見たことがありません」


母親が感動した様子で育成院の中を見回している。

次に到着したのは、レオとその父親だった。商店街で店を営んでいる、気さくな男性だ。


「おお!すごいじゃないか!」


父親が育成院の中を見回して、感嘆の声を上げる。


「国王陛下の支援、本当だったんだな。これは…王宮並みじゃないか」

「そこまでは…」


俺は謙遜するが、父親は首を横に振った。


「いやいや、本当だよ。こんな立派な育成院、王国中探しても他にないだろう。設備も素晴らしいし、何より清潔で明るい」


他の保護者たちも次々と到着し、みんな育成院の素晴らしさに驚いている様子だった。


「子供たちが安全に遊べますね」

「これなら安心して預けられます」


エマの母親が、感謝を込めた表情で言った。


「それに、イクノ・メンさんのような育児師は、他にいません」


「え?」


「国王陛下から称号をいただいた方ですもの。王国育成院名誉院長。そんな方に、うちの子を預けられるなんて…光栄です」


エマの母親が深く頭を下げる。俺は困惑しながらも、謙遜の言葉を返した。


「いえ、そんな大げさな…」


他の保護者たちも頷きながら、口々に感謝の言葉を述べてくれる。


「本当ですよ。イクノ・メンさんの育児の腕は、プロ中のプロです」

「うちの子、家でもイクノ・メンさんの話ばかりしてます」

「安心して預けられます。また今日も、よろしくお願いします」


保護者たちの感謝の言葉に、胸が温かくなった。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


保護者たちが去っていくのを、俺は手を振って見送る。そして、子供たちの方を向いた。今日は全部で10人。年齢は2歳から6歳まで、様々だ。


ソフィアが丁寧に挨拶する。


「おはよう、せんせい!」

「おはよう、ソフィア。今日も元気だな」

「うん!元気だよ」


突然レオが俺に抱きついてきた。


「イクメンさーん!」

「おはよう、レオ。走り回るなよ」

「はーい」


エマはぬいぐるみを抱えて、少し恥ずかしそうにしている。


「エマ、おはよう」

「…おはよう」


小さな声で答えると、ゆっくりと中に入ってきた。

他にも、2歳の男の子、5歳の女の子、4歳の双子の兄弟など、様々な子供たちが集まっている。


「さあ、みんな。今日も楽しく過ごそうな」

「はーい!」


元気な声が返ってくる。



午前中。

子供たちは、広いリビングで遊んでいる。おもちゃ、絵本、ぬいぐるみ。色々なものが用意されている。

リュクとアリアも、子供たちと一緒に遊んでいた。

リュクは年上の子供たち、アリアは同年代の子供たちと遊んでいた。


「ねえアリアちゃん、それかして?」


5歳くらいの女の子が、アリアに声をかける。


「はい、いいよ」


アリアが優しくおもちゃを渡す。

女の子が嬉しそうに笑った。

一方、レオは走り回っている。


「レオ、走りすぎると危ないぞ」


リュクが注意する。


「だいじょぶー!」


次の瞬間レオが転んだ。


「いたーい!」


リュクが駆け寄る。


「ほら、言ったろ。大丈夫か?」


リュクが優しく傷を見る。膝に擦り傷ができていた。


「ちょっと待ってろ」


リュクが薬箱を取りに行く。そして、レオの膝に薬を塗った。


「痛かったら言ってな」

「ありがとう、リュクお兄ちゃん」


レオが笑顔で答える。 

リュクも、照れくさそうに笑った。

 

「ふっ…」


俺はその様子を見ながら、微笑む。

リュクは本当に頼もしくなった。


「ぼくの!」

「ちがう!わたしの!」


その時、別の場所でトラブルが起きた。

トーマスとルナが、同じおもちゃを取り合っている。

2人とも4歳で同い年だ。お互いに譲る気配がない。

俺は2人の間に入った。


「どうした?トーマス、ルナ」

「ぼくが先に持ってた!」


トーマスが主張する。

普段はおとなしい彼だが、今は必死だ。


「ちがうもん!わたしが先!」


ルナも負けていない。

好奇心旺盛な彼女は、そのおもちゃがどうしても欲しいようだ。


「そうか。2人とも遊びたいんだな」


俺は優しく聞く。2人とも頷いた。


「じゃあ、順番に使おうか」

「じゅんばん...?」


トーマスが首を傾げる。


「ああ。まず、トーマスが5分遊ぶ。それが終わったら、ルナが5分遊ぶ。交代で使うんだ」


俺は時計を指差す。


「この針がここまで来たら、交代だ。いいか?」


2人とも、少し考えてから頷いた。


「...うん」

「わかった」

「よし。じゃあ、トーマスから」


俺はおもちゃをトーマスに渡す。

ルナは少し不満そうだったが、待つことにした。


5分後。


「はい、交代の時間だ。トーマス、ルナに渡してあげて」


トーマスがおもちゃをルナに渡す。

ルナが嬉しそうに受け取った。


「ありがとう、トーマス」

「...どういたしまして」


トーマスが照れくさそうに答える。

2人とも笑顔になった。トラブルは無事に解決した。



正午。


お昼ごはんの時間だ。


「みんな、手を洗ってー」


俺が声をかけると、子供たちが次々と洗面所へ向かう。リュクとアリアも手伝っている。


「ちゃんと石鹸使うんだぞ」


リュクが教える。


「こう?」

「そうそう、上手だ」


手を洗い終わったら、みんなでテーブルに座る。

今日の昼ごはんは、スパイスシチューだ。

この世界ではカレーという呼び名はないが、様々なスパイスを使った煮込み料理は人気がある。

俺は前世の記憶を元に、独自のレシピで作っている。

凝った料理をやろうとすると、完全食ナリッシュだけだと、どうしても足りない材料が出てきてしまう。そういうものはたまに買い出しで集めている。


「じゃあ、みんな手を合わせて!いただきます」

「いただきます」


みんなで手を合わせる。


「おいしい!」

「先生もっとちょうだい!」

「たくさんあるから、いっぱい食べていいぞ」


子供たちが嬉しそうに食べている。

アリアも、隣のエマと楽しそうに話している。


「エマ、おいしい?」

「うん、おいしい!」


エマが小さく笑った。アリアも嬉しそうだ。

昼ごはんが終わると、次は昼寝の時間だ。



午後1時。


「みんな、お昼寝の時間だぞー」


俺が声をかけると、子供たちが布団に入る。

リュクとアリアも手伝っている。


「レオ、寝ようぜ」


リュクがレオの隣に座る。

レオはまだ興奮していて、寝ようとしない。


「やだー!まだ起きてる!」

「寝ないと、午後遊べないぞ」

「うー…わかった」


レオが渋々布団に入る。

リュクが優しく背中を撫でる。

アリアは、エマの隣に座っていた。


「ねんね、できる?」

「うん…」


アリアが優しく言う。

エマがぬいぐるみを抱きしめて、目を閉じる。

俺は部屋全体を見回す。

子供たちは、まだ完全には寝ていない。

何人かは目を開けていたり、もぞもぞ動いている。


「よし」


俺は【父の温もり】を発動させた。


フワァ…


温かい空気が、部屋に広がっていく。

柔らかく、優しい感覚が子供たちを包み込む。


「…んー」

「…すー」


子供たちが、次々と眠りについていく。

レオも、エマも、ソフィアも。

みんな、安心したような表情で眠っている。

リュクが小さく呟く。


「イクメン、またなにかやった?」

「まあな。リュクも眠くなってきたんじゃないか?」

「うん。俺も…うとうとしてきた」

「休んでいいぞ。おやすみ」


昼寝の時間は、年齢によって違う。

2歳から3歳は約2時間、4歳から5歳は約1時間、6歳は30分から1時間程度が理想だ。個人差もあるが、だいたいこのくらい眠れたらいいなって感じで、俺は緩くやってる。


時計を確認しながら、子供たちを見守る。

リュクとアリアも、静かに眠っていた。

静かな午後。

子供たちの寝息だけが、部屋に響いていた。



午後3時。

おやつの時間だ。

この時間になる頃には、子供たちはすっかり目を覚ましている。さっきまで眠っていたのが嘘のように、元気いっぱいだ。


「今日のおやつ、一緒に作るか?」

「やるー!」


子供たちが一斉に手を挙げる。


「よし。じゃあ、キッチンに行こう!」


俺はキッチンに向かう。リュクとアリアも一緒だ。


「今日は、クッキーを作るぞ」

「クッキー!」


子供たちが喜ぶ。

俺は生地を用意して、子供たちに型抜きをさせる。

星型、ハート型、動物の型。色々な形のものを準備しているから選び放題だ。


「ぱぱ、みて!おほしさま!」


アリアが星型のクッキーを見せてくる。


「上手だな」


他の子供たちも、次々と型抜きをしている。


「せんせー、これどう?」


ソフィアがクマの型を見せてくる。


「可愛いな」

「やったー」


レオは、何個も型抜きをしている。


「レオ、たくさん作ってるな」

「ぜんぶたべる!」

「食べきれるか?」

「たべる!」


みんなで笑う。

型抜きが終わったら、オーブンで焼く。

しばらくすると、美味しそうな香りが部屋に広がってきた。


「いいにおい!」

「はやくたべたい!」


子供たちが待ちきれない様子だ。

クッキーが焼き上がると、みんなで食べはじめる。


「おいしい!」

「もっとちょうだい!」


子供たちが嬉しそうに食べている。

アリアとリュクも嬉しそうだ。

俺は子供たちの笑顔を見ながら、温かい気持ちになった。こういう時間が、一番幸せだ。



午後5時。

お迎えの時間が近づいてきた。

子供たちは片付けを手伝っている。

おもちゃを箱に入れたり、絵本を棚に戻したり。

みんな協力して片付けている様子が、とても微笑ましい。


「よし、綺麗になったな」

「せんせー、おわったー」


子供たちが報告してくる。


「ありがとう。みんな偉いぞ」


俺は子供たちの頭を撫でる。

玄関のベルが鳴った。


リンリンリン。


「お迎えだな」


俺は玄関に向かってドアを開けると、保護者たちが立っていた。


「イクメン先生、今日もありがとうございました」


保護者たちが、次々と子供たちを迎えに来る。


「ママー!」

「パパー!」


子供たちが嬉しそうに駆け寄っていく。


「バイバイ、せんせー」

「またね、リュクお兄ちゃん」

「アリア、またあそぼうね」

「またね!」


みんなが手を振って、帰っていく。

最後の子供が帰ると、育成院が静かになった。



夜。午後6時半。夕食の時間だ。


「今日も、お疲れ様」


俺はリュクとアリアに言う。


「疲れたけど、楽しかった」


リュクが笑う。


「たのしかった!」


アリアも笑顔だ。


「2人がいてくれて、本当に助かった。最高の1日だったな」


俺は2人を抱きしめる。


「ぱぱも、さいこう!」


3人で抱き合いながら、俺は幸せを噛みしめた。


新しい育成院。

新しい生活。

そして、変わらない家族の絆。

これからも、ずっと一緒だ。


「さあ、ご飯にしよう」

「いただきまーす!」


3人で食卓を囲む。

温かい夕食。

温かい会話。

温かい時間。

これが俺たちの日常だ。

そして、これからも続いていくだろう。

俺はそれを毎日祈っている。


-----


【今回獲得した称号】


なし


-----


【育児経験値+20獲得】

【育児経験値:236/500 → 256/500】


-----


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ