31.待ちに待った!新しい育成院
1ヶ月が経った。
ついに育成院が完成した。
以前よりも大きく、頑丈で、美しい建物だ。
王国最高の建築家が設計し、最高の材料を使って建てられた。壁は分厚く、床は頑丈で、窓は大きく明るい。子供たちが安全に、快適に過ごせる場所になった。
俺たちは今日、おばさんの家から引っ越してきた。
荷物を運び込み、部屋を整える。
リュクもアリアも、嬉しそうに走り回っている。
「ぱぱ、ひろい!」
アリアが廊下を走りながら叫ぶ。
「ははは、転ぶなよ」
「だいじょうぶ!」
リュクも、自分の部屋を確認している。
以前よりも広くなった部屋に、満足そうな表情を浮かべていた。
「イクメン、この部屋すごいな」
「気に入ったか?」
「ああ、最高だ」
リュクが笑顔で答える。
俺も自分の部屋を見回す。
広々としていて、清潔で、温かみのある部屋だ。
ここで、また子供たちと過ごせる。
その思いだけで、胸がいっぱいになった。
◇
翌朝。
「イクメンおはよう」
「ぱぱ、おはよう」
「おはよう。リュク、アリア」
時刻は朝6時半。
俺は朝食の準備をしている。
リュクもアリアも、もう起きていた。
「いまなんじ?」
アリアが聞く。
俺は壁にかけてある時計を見た。
「6時半だ。ちょうど朝ごはんの時間だな」
この時計は、魔導機と呼ばれる装置だ。
見た目は元の世界の時計と変わらないが、動力が違う。電池ではなく、魔力をチャージすることで動く。この世界では、魔力で動く小さな装置を魔導機と呼ぶ。時計、ランプ、簡単な調理器具など、日常生活で使われているが、まだ技術が発展していないため、大きな機械は作れないらしい。小物だけだ。
俺には魔力がないため、週に一度、アリアに魔力をチャージしてもらっている。
リュクもたまに手伝ってくれる。
2人とも、魔力の扱いが上手くなってきた。
「そういえば、時計の魔力、そろそろ切れるころか」
「アリアが、いれる!」
アリアが元気よく答える。
「ありがとう。後でお願いするな」
「うん!」
アリアが嬉しそうに笑う。
こういう小さな手伝いが、アリアの自信に繋がっているのかもしれない。
「ご飯できたぞ」
「やったー!」
「お腹すいたぁ」
アリアが椅子に座る。リュクも席につく。
3人での朝食。これが、俺たちの大事な時間だ。
朝ごはんと夜ご飯は、預かりの子供たちがいない時間。俺たち家族だけの、特別な時間だ。他の子供たちも大切だが、この時間だけは、リュクとアリアのために確保している。
「いただきます」
3人で手を合わせて、朝食を食べ始める。
「今日から、昼間の預かり再開するんだよな」
リュクが聞く。
「ああ。近所の人たちも待ってくれてた」
「たのしみ!みんなにあえる!」
アリアが目を輝かせる。
朝食が終わった後、アリアが時計の前に立った。
「ぱぱ、いれるね」
「ああ、頼む」
アリアが時計に小さな手を当てる。
目を閉じて、集中する。
フワッ…
淡い光が、アリアの手から時計へと流れ込んでいく。綺麗な魔力だ。国内で1番綺麗だ。
「…できた!」
アリアが嬉しそうに振り返る。
「ありがとう、アリア。これで1週間は大丈夫だ」
「えへへ」
アリアが照れくさそうに笑う。
リュクが横から覗き込む。
「アリア、魔力の扱いが上手くなったな」
「リュクもじょうずだよ」
「ははっ、ありがとう」
2人のやり取りを見ながら、俺は微笑む。
2人とも、本当に成長した。
◇
午前8時。
預かりの開始時間になり、玄関のベルが鳴り始めた。
リンリンリン。
「お、来たか!」
俺は玄関に向かってドアを開けると、保護者たちと子供たちが立っていた。
「おはようございます、イクノ・メンさん」
最初に来たのは、ソフィアとその母親だった。
預かりにくる子供達の名前は、全部記憶している。
間違えて呼んでしまったら大変だからな。
「おはようございます。さあ、どうぞ」
母親が育成院の中に入った瞬間、目を見開いて立ち止まった。
「まあ…!こんなに立派に…!」
その声に、俺は笑顔で答える。
「以前よりも広くなりました。子供たちが走り回れるように、安全にも配慮しています」
「素晴らしいですわ。こんな施設、王都でも見たことがありません」
母親が感動した様子で育成院の中を見回している。
次に到着したのは、レオとその父親だった。商店街で店を営んでいる、気さくな男性だ。
「おお!すごいじゃないか!」
父親が育成院の中を見回して、感嘆の声を上げる。
「国王陛下の支援、本当だったんだな。これは…王宮並みじゃないか」
「そこまでは…」
俺は謙遜するが、父親は首を横に振った。
「いやいや、本当だよ。こんな立派な育成院、王国中探しても他にないだろう。設備も素晴らしいし、何より清潔で明るい」
他の保護者たちも次々と到着し、みんな育成院の素晴らしさに驚いている様子だった。
「子供たちが安全に遊べますね」
「これなら安心して預けられます」
エマの母親が、感謝を込めた表情で言った。
「それに、イクノ・メンさんのような育児師は、他にいません」
「え?」
「国王陛下から称号をいただいた方ですもの。王国育成院名誉院長。そんな方に、うちの子を預けられるなんて…光栄です」
エマの母親が深く頭を下げる。俺は困惑しながらも、謙遜の言葉を返した。
「いえ、そんな大げさな…」
他の保護者たちも頷きながら、口々に感謝の言葉を述べてくれる。
「本当ですよ。イクノ・メンさんの育児の腕は、プロ中のプロです」
「うちの子、家でもイクノ・メンさんの話ばかりしてます」
「安心して預けられます。また今日も、よろしくお願いします」
保護者たちの感謝の言葉に、胸が温かくなった。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
保護者たちが去っていくのを、俺は手を振って見送る。そして、子供たちの方を向いた。今日は全部で10人。年齢は2歳から6歳まで、様々だ。
ソフィアが丁寧に挨拶する。
「おはよう、せんせい!」
「おはよう、ソフィア。今日も元気だな」
「うん!元気だよ」
突然レオが俺に抱きついてきた。
「イクメンさーん!」
「おはよう、レオ。走り回るなよ」
「はーい」
エマはぬいぐるみを抱えて、少し恥ずかしそうにしている。
「エマ、おはよう」
「…おはよう」
小さな声で答えると、ゆっくりと中に入ってきた。
他にも、2歳の男の子、5歳の女の子、4歳の双子の兄弟など、様々な子供たちが集まっている。
「さあ、みんな。今日も楽しく過ごそうな」
「はーい!」
元気な声が返ってくる。
◇
午前中。
子供たちは、広いリビングで遊んでいる。おもちゃ、絵本、ぬいぐるみ。色々なものが用意されている。
リュクとアリアも、子供たちと一緒に遊んでいた。
リュクは年上の子供たち、アリアは同年代の子供たちと遊んでいた。
「ねえアリアちゃん、それかして?」
5歳くらいの女の子が、アリアに声をかける。
「はい、いいよ」
アリアが優しくおもちゃを渡す。
女の子が嬉しそうに笑った。
一方、レオは走り回っている。
「レオ、走りすぎると危ないぞ」
リュクが注意する。
「だいじょぶー!」
次の瞬間レオが転んだ。
「いたーい!」
リュクが駆け寄る。
「ほら、言ったろ。大丈夫か?」
リュクが優しく傷を見る。膝に擦り傷ができていた。
「ちょっと待ってろ」
リュクが薬箱を取りに行く。そして、レオの膝に薬を塗った。
「痛かったら言ってな」
「ありがとう、リュクお兄ちゃん」
レオが笑顔で答える。
リュクも、照れくさそうに笑った。
「ふっ…」
俺はその様子を見ながら、微笑む。
リュクは本当に頼もしくなった。
「ぼくの!」
「ちがう!わたしの!」
その時、別の場所でトラブルが起きた。
トーマスとルナが、同じおもちゃを取り合っている。
2人とも4歳で同い年だ。お互いに譲る気配がない。
俺は2人の間に入った。
「どうした?トーマス、ルナ」
「ぼくが先に持ってた!」
トーマスが主張する。
普段はおとなしい彼だが、今は必死だ。
「ちがうもん!わたしが先!」
ルナも負けていない。
好奇心旺盛な彼女は、そのおもちゃがどうしても欲しいようだ。
「そうか。2人とも遊びたいんだな」
俺は優しく聞く。2人とも頷いた。
「じゃあ、順番に使おうか」
「じゅんばん...?」
トーマスが首を傾げる。
「ああ。まず、トーマスが5分遊ぶ。それが終わったら、ルナが5分遊ぶ。交代で使うんだ」
俺は時計を指差す。
「この針がここまで来たら、交代だ。いいか?」
2人とも、少し考えてから頷いた。
「...うん」
「わかった」
「よし。じゃあ、トーマスから」
俺はおもちゃをトーマスに渡す。
ルナは少し不満そうだったが、待つことにした。
5分後。
「はい、交代の時間だ。トーマス、ルナに渡してあげて」
トーマスがおもちゃをルナに渡す。
ルナが嬉しそうに受け取った。
「ありがとう、トーマス」
「...どういたしまして」
トーマスが照れくさそうに答える。
2人とも笑顔になった。トラブルは無事に解決した。
◇
正午。
お昼ごはんの時間だ。
「みんな、手を洗ってー」
俺が声をかけると、子供たちが次々と洗面所へ向かう。リュクとアリアも手伝っている。
「ちゃんと石鹸使うんだぞ」
リュクが教える。
「こう?」
「そうそう、上手だ」
手を洗い終わったら、みんなでテーブルに座る。
今日の昼ごはんは、スパイスシチューだ。
この世界ではカレーという呼び名はないが、様々なスパイスを使った煮込み料理は人気がある。
俺は前世の記憶を元に、独自のレシピで作っている。
凝った料理をやろうとすると、完全食だけだと、どうしても足りない材料が出てきてしまう。そういうものはたまに買い出しで集めている。
「じゃあ、みんな手を合わせて!いただきます」
「いただきます」
みんなで手を合わせる。
「おいしい!」
「先生もっとちょうだい!」
「たくさんあるから、いっぱい食べていいぞ」
子供たちが嬉しそうに食べている。
アリアも、隣のエマと楽しそうに話している。
「エマ、おいしい?」
「うん、おいしい!」
エマが小さく笑った。アリアも嬉しそうだ。
昼ごはんが終わると、次は昼寝の時間だ。
◇
午後1時。
「みんな、お昼寝の時間だぞー」
俺が声をかけると、子供たちが布団に入る。
リュクとアリアも手伝っている。
「レオ、寝ようぜ」
リュクがレオの隣に座る。
レオはまだ興奮していて、寝ようとしない。
「やだー!まだ起きてる!」
「寝ないと、午後遊べないぞ」
「うー…わかった」
レオが渋々布団に入る。
リュクが優しく背中を撫でる。
アリアは、エマの隣に座っていた。
「ねんね、できる?」
「うん…」
アリアが優しく言う。
エマがぬいぐるみを抱きしめて、目を閉じる。
俺は部屋全体を見回す。
子供たちは、まだ完全には寝ていない。
何人かは目を開けていたり、もぞもぞ動いている。
「よし」
俺は【父の温もり】を発動させた。
フワァ…
温かい空気が、部屋に広がっていく。
柔らかく、優しい感覚が子供たちを包み込む。
「…んー」
「…すー」
子供たちが、次々と眠りについていく。
レオも、エマも、ソフィアも。
みんな、安心したような表情で眠っている。
リュクが小さく呟く。
「イクメン、またなにかやった?」
「まあな。リュクも眠くなってきたんじゃないか?」
「うん。俺も…うとうとしてきた」
「休んでいいぞ。おやすみ」
昼寝の時間は、年齢によって違う。
2歳から3歳は約2時間、4歳から5歳は約1時間、6歳は30分から1時間程度が理想だ。個人差もあるが、だいたいこのくらい眠れたらいいなって感じで、俺は緩くやってる。
時計を確認しながら、子供たちを見守る。
リュクとアリアも、静かに眠っていた。
静かな午後。
子供たちの寝息だけが、部屋に響いていた。
◇
午後3時。
おやつの時間だ。
この時間になる頃には、子供たちはすっかり目を覚ましている。さっきまで眠っていたのが嘘のように、元気いっぱいだ。
「今日のおやつ、一緒に作るか?」
「やるー!」
子供たちが一斉に手を挙げる。
「よし。じゃあ、キッチンに行こう!」
俺はキッチンに向かう。リュクとアリアも一緒だ。
「今日は、クッキーを作るぞ」
「クッキー!」
子供たちが喜ぶ。
俺は生地を用意して、子供たちに型抜きをさせる。
星型、ハート型、動物の型。色々な形のものを準備しているから選び放題だ。
「ぱぱ、みて!おほしさま!」
アリアが星型のクッキーを見せてくる。
「上手だな」
他の子供たちも、次々と型抜きをしている。
「せんせー、これどう?」
ソフィアがクマの型を見せてくる。
「可愛いな」
「やったー」
レオは、何個も型抜きをしている。
「レオ、たくさん作ってるな」
「ぜんぶたべる!」
「食べきれるか?」
「たべる!」
みんなで笑う。
型抜きが終わったら、オーブンで焼く。
しばらくすると、美味しそうな香りが部屋に広がってきた。
「いいにおい!」
「はやくたべたい!」
子供たちが待ちきれない様子だ。
クッキーが焼き上がると、みんなで食べはじめる。
「おいしい!」
「もっとちょうだい!」
子供たちが嬉しそうに食べている。
アリアとリュクも嬉しそうだ。
俺は子供たちの笑顔を見ながら、温かい気持ちになった。こういう時間が、一番幸せだ。
◇
午後5時。
お迎えの時間が近づいてきた。
子供たちは片付けを手伝っている。
おもちゃを箱に入れたり、絵本を棚に戻したり。
みんな協力して片付けている様子が、とても微笑ましい。
「よし、綺麗になったな」
「せんせー、おわったー」
子供たちが報告してくる。
「ありがとう。みんな偉いぞ」
俺は子供たちの頭を撫でる。
玄関のベルが鳴った。
リンリンリン。
「お迎えだな」
俺は玄関に向かってドアを開けると、保護者たちが立っていた。
「イクメン先生、今日もありがとうございました」
保護者たちが、次々と子供たちを迎えに来る。
「ママー!」
「パパー!」
子供たちが嬉しそうに駆け寄っていく。
「バイバイ、せんせー」
「またね、リュクお兄ちゃん」
「アリア、またあそぼうね」
「またね!」
みんなが手を振って、帰っていく。
最後の子供が帰ると、育成院が静かになった。
◇
夜。午後6時半。夕食の時間だ。
「今日も、お疲れ様」
俺はリュクとアリアに言う。
「疲れたけど、楽しかった」
リュクが笑う。
「たのしかった!」
アリアも笑顔だ。
「2人がいてくれて、本当に助かった。最高の1日だったな」
俺は2人を抱きしめる。
「ぱぱも、さいこう!」
3人で抱き合いながら、俺は幸せを噛みしめた。
新しい育成院。
新しい生活。
そして、変わらない家族の絆。
これからも、ずっと一緒だ。
「さあ、ご飯にしよう」
「いただきまーす!」
3人で食卓を囲む。
温かい夕食。
温かい会話。
温かい時間。
これが俺たちの日常だ。
そして、これからも続いていくだろう。
俺はそれを毎日祈っている。
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【今回獲得した称号】
なし
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【育児経験値+20獲得】
【育児経験値:236/500 → 256/500】
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