14.ヘルプちゃん?
それから数日。
俺は、自分の体の変化に驚いていた。
睡眠時間が2時間の仮眠だけで十分になったのだ。
以前は8時間寝ていたが、今は2時間で完全回復する。
「信じられない…」
朝4時に起きて、家事と訓練の準備。
6時に子供たちを起こす。
日中は育児と訓練。
夜は読み聞かせと片付け。
2時間だけ仮眠して、また朝4時に起きる。
「全然疲れない」
体力155の恩恵は、想像以上だった。
「これなら、対決までにもっと準備できる」
俺は、決意を新たにした。
◇
その夜、俺は疑問を抱いていた。
スキルリストを開く。
【育児眼Lv.2】
【父の温もり(コンフォート・オーラ)Lv.2】
【愛情促進Lv.2】
「スキルレベルか…」
スキルレベルが上がると、何が変わるんだ?
「そもそも、どうやって上げるんだ?」
その瞬間、視界にメッセージが表示された。
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【転生特典解放!】
転生特典:**ヘルプ機能**
解放条件:システムに疑問を持った
あなたの疑問にお答えします!
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「…ヘルプ機能?」
すると、目の前に小さな光が現れた。
光が、だんだん形を成していく。
小人サイズの、天使のような姿。
茶髪で、小さな羽を持った、可愛らしい女の子。
「はじめまして、イク様!」
明るい声が響いた。
「わたしは、ヘルプちゃんです!」
小さな女の子が、嬉しそうにくるくる回る。
「ヘルプ機能の案内役として、イク様のお手伝いをします!」
「…ヘルプちゃん?」
「はい!イク様が困った時に、説明するのがわたしのお仕事です!」
「そうか…イク様って呼ぶのか」
「はい!親しみを込めて、イク様です!」
俺は、この小さな存在を見つめた。
転生特典の一つが、ヘルプ機能らしい。
「じゃあ、質問がある」
「はい!なんでもどうぞ!」
「スキルレベルって、何の意味があるんだ?」
「いい質問です!」
ヘルプちゃんが、指を立てた。
「まず、通常のスキルについて説明しますね」
「通常のスキル?」
「はい!普通の人のスキルは、レベルが上がると魔力消費が減ったり、効果が強くなったりします。イク様みたいにステータス画面などないので、そこは体感になるんですけどね。」
「魔力消費…」
「はい。普通の人は、スキルを使うたびに魔力を消費します」
「でも、イク様のスキルは特別なんです!」
「…特別?」
「はい!神様が『育児に集中できるように』と、魔力消費を完全に取り除いてくださったんです」
「魔力消費が…ないのか」
「はい!そもそも、イク様には魔力という概念自体がありません」
「え、そうなのか?」
「はい!普通の人は魔力を消費して魔法やスキルを使いますが、イク様のスキルは無限に使えます」
「…無限に?」
「はい!だから、魔力切れの心配もありません!」
ヘルプちゃんが、嬉しそうに説明する。
「…だとしたら、スキルレベルが上がっても、魔力消費が減る恩恵が受け取れないってことか」
「そうです!その代わり、イク様のスキルレベルアップによる恩恵は『新機能解放』なんです」
「新機能?」
「はい!例えば、Lv.2になった時、『追加効果付加システム』が解放されましたよね?」
「…ああ、あったな」
「Lv.3になったら、また新しい機能が解放されますよ!」
「そうなのか。次はどんな機能なんだ?」
「それは…お楽しみです!」
ヘルプちゃんは、ウインクした。
「スキルレベルはどうやって上げるんだ?」
「イク様のスキルは、使うたびに経験値が貯まっているんです!」
「経験値?でも、表示されてなかったぞ?育児師の職業経験値はたまに出たりするが…」
「はい!スキル経験値は、表示されません」
「…なんで?」
「おそらく使う頻度が高くなるから、頻繁にでてきてたら目障りになるだろうって、神様が『育児に集中できるように』と、あえて表示しない設計にしたんです」
「なるほど…」
「後は数字ばかり気にして、本当に大切なことを見失わないように、って意味もあります」
確かに、それは神様らしい配慮だ。
「それと、スキル経験値は全部連動しています!」
「連動?」
「はい!イク様が1つのスキルを使うと、全スキルの経験値が同時に貯まるんです」
「だから、『このスキルだけ使ってない』という心配はいりません!」
「便利だな」
「はい!それが、神様の優しさなんです!」
ヘルプちゃんが、嬉しそうに笑う。
「分かった。ありがとう、ヘルプちゃん」
「どういたしまして!」
「それじゃあ、わたしはこれで」
「もう行くのか?」
「はい!でも、また困った時は呼んでくださいね」
「どうやって?」
「心の中で『ヘルプ』と呼びかけてください。すぐに来ますよ!」
「分かった」
「それでは、頑張ってくださいね、イク様!」
そう言って、小さな女の子は光になって消えた。
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【ヘルプ機能の使い方】
疑問に思ったことがあれば、心の中で「ヘルプ」と呼びかけてください。
ヘルプちゃんが現れて、説明してくれます。
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「ヘルプちゃんか…」
便利な機能だ。
「魔力消費がないってのは、ありがたいな。それとスキルレベルが上がると、新機能が解放される…か」
いつ上がるか分からないが、楽しみだな。
俺は、ステータス画面を閉じた。
「さて、次は…」
称号が17個になった。
3回目の追加効果付加ができる。
俺は、早速スキルリストを開いた。
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【付加可能なスキル】
必要称号数:17個(現在:17個保有 - 条件達成)
**【育児眼Lv.2】**
▼ 追加効果候補A:同時視認数増加
- 効果:同時に3人まで詳細情報を視られる
▼ 追加効果候補B:過去視
- 効果:子供の過去の記憶の一部を視ることができる
▼ 追加効果候補C:未来予測強化
- 効果:成長予測の精度がさらに上昇
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**【父の温もり(コンフォート・オーラ)Lv.2】**
▼ 追加効果候補A:範囲拡大
- 効果:半径5m → 半径10m
▼ 追加効果候補B:体調回復
- 効果:軽度の体調不良を緩和
▼ 追加効果候補C:成長加速強化
- 効果:成長速度ボーナス +10% → +20%
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**【愛情促進Lv.2】**
▼ 追加効果候補A:発動条件緩和
- 効果:必要信頼度 50 → 30
▼ 追加効果候補B:効果強化
- 効果:開花速度 +20% → +40%
▼ 追加効果候補C:絆の共鳴
- 効果:信頼度80以上の子供同士が近くにいると、互いの成長速度が上昇
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次回の付加条件:称号30個以上(現在17個 - あと13個必要)
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「…どれにするか」
俺は、選択肢を見つめた。
「…あれ?前こんな効果あったか?」
前回、【愛情促進】に付加した「守護の加護」は、今回の選択肢にはないのは分かるが。
見覚えのない効果が増えてる気がした。
「ヘルプ」
俺は、心の中で呼びかけた。
すると、小さな光が現れた。
「お呼びですか、イク様?」
ヘルプちゃんが、嬉しそうに現れる。
「質問がある」
「はい!なんでもどうぞ!」
「追加効果付加の候補って、毎回同じなのか?」
「いい質問です!」
ヘルプちゃんが、指を立てた。
「毎回変わります!」
「…変わる?」
「はい!付加できる追加効果は、その時々でランダムに選ばれるんです」
「つまり、今回選ばなかった効果は…」
「次回出るとは限りません!」
ヘルプちゃんが、真剣な顔で言う。
「もちろん、同じ効果が再び出ることもあります」
「でも、それがいつになるかは分かりません」
「…なるほど」
「ですから、『今、本当に必要なもの』を選ぶことが大切なんです!」
「後悔しない選択を、ですね!」
ヘルプちゃんが、にっこり笑う。
「分かった。ありがとう、ヘルプちゃん」
「どういたしまして、イク様!」
ヘルプちゃんが、光になって消えた。
「…今、必要なもの」
俺は、改めて選択肢を見つめた。
リュクのトラウマ。
アリアの体調管理。
対決に向けた準備。
「体調回復だ」
これなら、2人の体調を支えられる。
そして、もしかしたら…リュクの心にも効くかもしれない。
「これで」
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【追加効果付加】
スキル:父の温もり(コンフォート・オーラ)
追加効果:体調回復
付加しますか? → はい
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【付加完了】
父の温もり(コンフォート・オーラ)に追加効果が付与されました
**体調回復:軽度の体調不良を緩和**
※ 範囲内の子供の体調不良を少しずつ回復させる
保有称号:17個
次回の付加条件:称号30個以上
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【父の温もり(コンフォート・オーラ)Lv.2】
- 効果:半径5m以内の子供に安らぎを与える
- 範囲:半径5m
- 消費:なし(常時発動可能)
- 追加効果1:成長加速強化(成長速度+10%)
- 追加効果2:体調回復(軽度の体調不良を緩和)
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「体調回復か…」
これで、リュクやアリアの体調を支えられる。
でも、ふと疑問が浮かんだ。
「体調回復…これって、リュクの心にも効くのか?」
リュクのトラウマ。心の傷。
それも「不調」の一種なら…。
「こういう質問にも、答えられるのか試してみるか…ヘルプ」
俺は、心の中で呼びかけた。
すると、小さな光が現れた。
「またまた〜!お呼びですか、イク様?」
ヘルプちゃんが、嬉しそうに現れる。
「何度も悪い、質問があるんだ」
「はい!なんでもどうぞ!」
「体調回復って、体だけじゃなくて…心にも効くのか?」
「いい質問です!」
ヘルプちゃんが、指を立てた。
「効きますよ!」
「…本当か?」
「はい!体調回復は、身体の不調だけでなく、精神の不調にも効果があるんです」
「精神の不調…」
「はい!トラウマや心の傷も、『不調』の一種です!だから、体調回復の効果で、少しずつ癒えていきますよ」
「そうか…」
俺は、リュクの寝顔を思い浮かべた。
「ただし、心の傷は身体の傷より時間がかかります」
「…だろうな」
「でも、イク様が側にいて、【父の温もり(コンフォート・オーラ)】が常に発動していれば、確実に良くなっていきますよ」
「分かった。ありがとう、ヘルプちゃん」
「どういたしまして、イク様!」
ヘルプちゃんが、光になって消えた。
「よし…」
これで、リュクをもっと支えられる。
俺は、寝室の方を見た。
リュクとアリアが、静かに眠っている。
「お前たちを、必ず守る!そして対決に勝つぞ」
窓の外を見る。
月が昨日よりも、綺麗に輝いていた。




