13.対決への準備
ペルカの視察から、1週間が経った。
俺は、リュクとアリアの訓練を続けていた。
対決まで、あと1ヶ月半。
「リュク、今日は腕立て伏せ20回だ」
「うん!」
リュクが、腕立て伏せを始める。
「1、2、3…」
以前は10回が限界だった。
でも今は…。
「18、19、20!」
「できた!」
リュクが、嬉しそうに笑う。
「すごいぞ、リュク。倍できるようになったな!」
「本当だ!俺、強くなってる!」
リュクの目が、輝いている。
【経験値+3獲得】
【育児経験値:153/300】
子供の成長を見守ることが、俺の経験値になる。
この育児経験値が貯まると、育児師としてレベルアップする。俺と子供達の成長が数値化できるのは、本当にありがたい。
「次は、走り込みいけるか?無理はするんじゃないぞ」
「おう!」
リュクが、庭を走り始める。
以前より、足取りが軽い。
「いい動きだな、リュク…!」
体力がついてきた証拠だ。
リュクの訓練が終わった後は、アリアの番だ。
「アリア、今日は新しい魔法を教えよう」
「あたらしいまほう?」
「うん。今まで光の玉を作ってきたけど、今度はそれを動かしてみよう」
「うごかす?」
「そうだ。光の玉を、自分の意思で動かすんだ」
アリアが真剣な顔で頷く。
「まず、いつものように光の玉を作って」
「うん!」
アリアが、手のひらに光の玉を作る。
ポワン。
安定した、綺麗な光の玉。
「よし。じゃあ、その玉を…こっちに動かしてみて」
俺が、少し離れた場所を指さす。
「…むずかしそう」
「大丈夫、ゆっくりでいいぞ」
アリアが、光の玉を見つめる。
「…うごけー」
光の玉が、ゆっくりと動き始めた。
「あ、うごいた!」
「すごいぞ、アリア!」
光の玉が、ふわふわと空中を漂う。
「えへへ!」
アリアが、嬉しそうに笑う。
【経験値+5獲得】
【育児経験値:158/300】
2歳で魔力のコントロールが、ここまでできるのは異常だ。でもそれはアリアの才能と、日々の努力の結果。俺はそれを引き出しただけだ。
「じゃあ、今度は光の玉を2つ作って、両方動かしてみよう」
「りょうほう?」
「うん。できるか?」
「…やってみる!」
アリアが、両手に光の玉を作る。
そして、2つの光の玉をゆっくりと動かす。
ふわふわと、空中を漂う2つの光。
「すごい!アリア、天才だな!」
「やったー!」
【経験値+5獲得】
【育児経験値:163/300】
◇
昼休憩を挟んだあと。
午後からは、3人で公園に行った。
リュクとアリアが、一緒に遊んでいる。
「リュクお兄ちゃん、まてー!」
「追いつけるかな、アリア!」
2人とも、笑顔だ。
他の子供たちも、リュクとアリアと遊んでいる。
「リュク、一緒に鬼ごっこしよう!」
「ああ!」
リュクが、友達と走り回る。
心を閉ざしていたリュクが、こんなに明るくなった。
「ぱぱ、見て!」
アリアが、滑り台を滑る。
「すごいぞ、アリア!」
「えへへ!」
俺は、ベンチに座って2人を見守る。
子供にとって、遊びは大切な学びの時間だ。
体を動かすことで運動能力が育ち、他者と関わることで社会性が育つ。特に幼児期の全身運動は、脳の発達にも直結する。走る、跳ぶ、バランスを取る。そういった動きが、思考力や判断力も鍛えるんだ。
だから俺は、毎日公園に連れてくる。
訓練だけじゃない。
遊びも、大切な育児の一部だ。
その時、一人の女性が俺に近づいてきた。
「イクノ・メンさん…ですよね?」
「はい、どうされましたか」
見知らぬ女性だった。
30代くらいで、優しそうな顔立ちだった。
「私、近所に住んでいる者です。いつも、お子さんたちの面倒をよく見ていらっしゃいますね」
「ありがとうございます」
「それで、実は…」
女性が、少し恥ずかしそうに言う。
「うちの子も、預かっていただけないかと思いまして」
「預かりですか?」
「はい。私、仕事で忙しくて、なかなか子供の面倒を見られなくて」
「でも、イクノ・メンさんのお子さんたちを見ていると、本当に楽しそうで」
「うちの子にも、ああいう時間を過ごさせてあげたいんです」
女性が、真剣な目で俺を見た。
「…分かりました。詳しい話は、後日うちに来ていただけますか?」
「本当ですか!ありがとうございます!」
女性が、嬉しそうに頭を下げた。
「では、また待ってます」
女性が去った後、俺は小さく笑った。
近所の評判が、少しずつ上がってきている。
これもリュクとアリアのおかげだ。
【経験値+5獲得】
【育児経験値:168/300】
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【称号獲得!】
称号:**「地域の信頼」**
取得条件:近隣住民から子供の預かりを依頼された
保有称号数:13個 → 14個
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【経験値+30獲得】
【育児経験値:198/300】
◇
夕食後、3人でまた絵本を読んだ。
「むかしむかし、あるところに…」
アリアとリュクが、俺の両脇に座っている。
「ぱぱ、このおはなし、もうおぼえちゃった」
「そうか。じゃあ、アリアが読んでみるか?」
「うん!」
アリアが、絵本を見ながら話し始める。
「むかしむかし、おひめさまがいました」
まだ字は読めないが、何度も聞いた物語を覚えているんだ。
「すごいな、アリア」
「えへへ」
リュクも、静かに聞いている。
「リュクも、物語は好きか?」
「…うん。昔、母さんがよく読んでくれた」
リュクの表情が、少し寂しそうになる。
「そうか」
「でも、今はイクメンが読んでくれるから…寂しくないよ」
リュクが、小さく笑った。
俺は黙ってリュクを抱きしめた。
なんて、可愛いんだろうか。
【経験値+5獲得】
【育児経験値:203/300】
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【称号獲得!】
称号:**「心の傷を癒す者」**
取得条件:トラウマを抱えた子供の心を、少しずつ癒した
保有称号数:14個 → 15個
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【経験値+30獲得】
【育児経験値:233/300】
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2人を寝かしつけた後、俺は一人で考えていた。
「対決まで、あと1ヶ月半。称号は15個…あと2個で、次のスキル付加ができる。それに、育児経験値も貯まってきた」
あと少しで、レベルアップできそうだ。
「もっと、頑張らないと」
リュクとアリアのために。
そして、男性育児師の未来のために。
◇
翌日。
俺は、リュクとアリアに特別な訓練を提案した。
「今日は、2人で協力する訓練をしよう」
「きょうりょく?」
「うん。リュクとアリアが、一緒に何かをするんだ」
「なにするの?」
「魔法と、体術の組み合わせだ」
俺は庭に的を置いた。
「アリア、光の玉を作ってリュクに渡してみて」
「わたす?」
「ああ。光の玉を、リュクの手元まで動かすんだ」
「そして、リュクがそれを投げる」
「…投げる?」
リュクが、首を傾げる。
「ああ。魔法の玉を、物理的に投げるんだ」
「面白そう!」
リュクが、嬉しそうに笑う。
「じゃあ、やってみよう」
アリアが、光の玉を作る。
そして、リュクの手元まで動かす。
「リュク、受け取って」
「おう!」
リュクが、光の玉を掴む。
「…温かい」
「じゃあ、投げてみろ」
「うん!」
リュクが光の玉を、的に向かって投げる。
ビュン!…パンッ!
光の玉が的に命中して、弾け散った。
「当たった!」
「やったー!」
2人が、喜んでいる。
「すごいぞ、2人とも。これが、連携だ」
「れんけい?」
「うん。一人じゃできないことも、協力すればできる」
「リュクとアリアは、家族だ」
「だから、お互いを助け合うんだ」
リュクとアリアが、お互いを見て笑った。
「うん!」
【経験値+10獲得】
【育児経験値:243/300】
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【称号獲得!】
称号:**「家族の連携」**
取得条件:子供たちに協力することの大切さを教えた
保有称号数:15個 → 16個
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【経験値+30獲得】
【育児経験値:273/300】
その後。
家に帰る前に俺は、最後の仕上げをした。
リュクに、基礎的な剣術の型を教える。
「剣を握る時は、力を入れすぎない」
「…こう?」
「ああ、そうだ。力を抜いて、でもしっかりと」
リュクが木剣を握る。
「じゃあ、素振りをしてみよう」
「うん!」
リュクが、剣を振る。
最初はぎこちなかった動きが、少しずつ滑らかになっていく。
「いいぞ、リュク」
「もう一回!」
リュクが何度も剣を振る。
その目には強い意志がある。
「守りたい」という、想い。
それがリュクを強くしている。
【経験値+5獲得】
【育児経験値:278/300】
◇
そして、数日後。
俺は、リュクとアリアの成長を改めて確認した。
**リュク:**
- 腕立て伏せ20回
- 基礎的な剣術の型を習得
- 友達ができた
- 笑顔が増えた
**アリア:**
- 光の玉を自在に動かせる
- 2つの光の玉を同時操作
- 魔力のコントロールが向上
2人とも、確実に成長している。
「よし…」
俺は決意を新たにした。
その時、近所の子供が転んで泣いているのが見えた。
「大丈夫か?」
俺は、すぐに駆け寄った。
「ひざ、すりむいちゃった…」
「見せてごらん」
軽い擦り傷だった。
「大丈夫、すぐ治るよ」
俺は、家から水と布を持ってきて、傷を洗って包帯を巻いた。
「痛くなくなった?」
「…うん」
子供が、小さく笑った。
「ありがとう、おじさん」
「どういたしまして。気をつけて帰るんだぞ」
「うん!」
子供が、元気に走っていった。
【経験値+5獲得】
【育児経験値:283/300】
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【称号獲得!】
称号:**「優しさの連鎖」**
取得条件:自分の子供以外にも、優しさを示した
保有称号数:16個 → 17個
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【称号数ボーナスで経験値+30獲得】
【育児経験値:313/300】
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【レベルアップ!】
【育児師 Lv.3 → Lv.4】
**未振り分けステータスポイント:+100**
【育児経験値:13/400】
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「凄い経験値が入ったな。レベルアップした…」
俺は自分のステータス画面を見つめた。
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【イクノ・メン 】
レベル:4
職業:育児師
**基礎ステータス**
- 体力:55
- 筋力:38
- 器用さ:52
- 知力:55
- 精神力:38
- 魅力:30
**未振り分けステータスポイント:100**
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「100ポイントか…」
前回は、バランスよく振り分けた。
でも、今回は…。
「試してみるか」
俺は、ふと思った。
「100ポイント全部を、一つのステータスに振ったらどうなるんだ?」
好奇心が湧いた。
対決まであと1ヶ月。
体力があれば、訓練も家事も、もっと効率的にできるはずだ。
「よし、体力に全振りだ」
俺は、100ポイント全てを体力に振り分けた。
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【ステータス振り分け完了】
- 体力:55 → 155
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「…っ!」
その瞬間、体に力が漲った。
全身に、熱いエネルギーが流れ込む。
「これは…」
体が、軽い!
まるで羽が生えたような感覚。
疲労が完全に消えた。
「すごいな、体力155。こんなに変わるのか。これなら、一晩中でも動けそうだ」
いや、もしかしたら…。
「睡眠時間も減らせるかもしれない」
この体力なら、仮眠だけで十分かもしれない。
「試してみる価値はあるな」
俺は、窓の外を見た。
まだ夜中だが、全く眠くない。
「よし、この時間を使おう」
リュクとアリアのために。
対決の準備を、もっと進められる。
 




