プロローグ
「お父さん、学校遅刻しちゃうよー!」
娘の声で我に返った俺は、慌てて玄関へと向かった。
朝の7時半。いつもの時間、いつもの光景。8歳になる娘のミサキと一緒に家を出る。途中まで通勤するのが、俺の日課だった。
「はいはい、今行く」
シングルファーザー歴8年。妻は娘を産んですぐに亡くなった。双子の息子たちは今年18歳。大学に通いながらコンビニでバイトもして、本当によく頑張ってくれている。
「兄ちゃんたち、今日もバイトなの?」
「ああ。朝の品出しがあるから俺達も行かなきゃ」
双子の長男が、娘の頭を撫でた。
「ミサキ、父さんの言うこと聞くんだぞ」
次男も優しく微笑む。こいつらは本当にいい子に育ってくれた。妻がいなくても、俺たち4人は何とかやってこれた。それが俺の誇りだった。
◇
「父さん、あれ見て!」
横断歩道の手前で、娘が空を指差す。
「虹だ!きれいだね!」
「本当だな。ミサキが喜んでくれて、母さんも嬉しいだろうな」
娘の笑顔を見ながら、俺は心の中で妻に語りかける。
おい。見てるか?ミサキはこんなに大きくなったぞ。
青信号に変わった。
「よし、渡ろうか」
娘の手を握って、横断歩道に足を踏み出した。
その時だった。
「危ないぞ!」
誰かの叫び声。
視界の端に映ったのは、猛スピードで突っ込んでくる大型トラック。
ブレーキの音。
間に合わない。
せめて娘だけでも!
考えるより先に、体が動いていた。
娘を突き飛ばす。自分の体がトラックの前に。
(ドガッ)
鈍い衝撃。
空が回る。
地面に叩きつけられる感覚。
「お父さん!!!」
娘の泣き叫ぶ声が遠くなる。
良かった…ミサキは無事か…。
視界がぼやける。体が冷たくなっていく。
遠くで誰かが俺に駆け寄る音。救急車のサイレン。
息子たち…すまない。娘を…頼んだぞ…。
娘の笑顔が脳裏に浮かぶ。息子たちの顔。妻の顔。
みんな…ありがとう…。
初めまして!この物語は、ベビーシッターならぬ「育児師」が異世界で子供たちを育てる成長譚です。
バトルよりも、子供たちの成長と主人公の奮闘を描いていきます。
温かく見守っていただけると嬉しいです!




