とうめい
プリクラを撮った日から1週間経ち、テスト期間で暇していた彼らはすっかり部活に精を出していた。
誰もいない教室で私は机に突っ伏し透明になっている。
校庭の騒がしさが耳に刺さる。
野球部の掛け声や、グラウンドを駆ける足音、笑い声の混じる喧騒。
それらが、夏の重たい空気と汗ばむ自分の息で悶々と頭を煮えたぎらせた。
みんなが群れて笑い合う姿は、まるで別の世界の出来事だ。
私はその輪の外にいる。いつも、そうだ。
あんまり暑くて意識が飛んでは戻りを繰り返し、ようやく起き上がった私はクーラーの効いた図書室に逃げ込んだ。
ドアを開けると、ひんやりとした空気が汗ばんだ肌を撫でる。
すぅっと息を吸って、埃っぽい本棚の間をぶらぶら歩く。
私は読書するタイプじゃない。
本の背表紙に並ぶ文字は、ただの記号の羅列にしか見えない。
それでも、ここは静かだ。
群れの騒がしさから逃れられる、唯一の避難所。
窓際の席に腰を下ろす。
ガラス越しに、校庭の風景が広がる。
蝉の声が、遠くでジジジと響き、湿ったシャツがひんやりとしてくるのを感じた。
野球部の練習風景が目に入る。
猿たちが騒がしく仲間とボールを投げ合ってる。
汗で濡れたユニフォーム、仲間とのハイタッチ、弾けるような笑顔。あぁかわいらしいこと。
あいつら、なんであんなに楽しそうなんだろう。
心のどこかで、羨ましさみたいなものがチクッと刺さる。でも、すぐにそれを振り払う。
だって、群れなんて、私には関係ない。
騒がしいだけの猿の集まり。
生き物の種類が違うのだから私には関係ないのだ。