美咲
数日後の放課後、美咲は吹奏楽部の練習が早く終わったみたい。
彼女は教科書を片付けながら、花が咲いたように笑う。
「海音ちゃん、最近、ますます可愛くなったね!なんか明るくていい感じ!」
「うん、えっと、美咲のおかげ、かな」
——あれから私達は徐々に話すようになり、つい先日お互いを名前呼びしよう、と取り決めした。慣れない呼び捨てにドギマギする。
「えー、ほんと? やった! あ、そうだ。海音ちゃんさ、吹奏楽部の演奏会に来てよ! めっちゃ頑張ってるから、絶対楽しいし、見てほしいの。」
彼女の声に熱がこもる。
彼女は、仲間と音楽を作ることに本気みたい。
「吹奏楽部、どんな感じなの?」
「うーん、めっちゃ大変! コンクール近いから、毎日練習キツくてさ。パートリーダーの先輩、めっっっっちゃ厳しいの。でも、みんなで演奏すんの、すっごく楽しくて。なんか、部員と一緒にいると、自分も強くなれる気がするんだよね。美咲無敵〜!って感じ。」
あぁ。仲間。群れ。
彼女にとって、それは温かい居場所なんだ。
なんだか近くなった距離が少し遠くなるようだ。
「でもさ、最近、ちょっと悩んでて……」
「美咲、皆みたいに上手く吹けないから、足引っ張ってる気がするの。責任?感じちゃって。みんなに申し訳なくってさあ……」
告白を通して、美咲が抱える心の葛藤が垣間見えた。
彼女なりに、様々な思いが交錯していたのだろうか。
集団心理に安易に身を任せるタイプだとばかり思っていた彼女が、これほどまでに深く考え、周りのことを案じているとは。
「美咲、頑張ってる。だって、いつも笑顔で、みんなをまとめてるじゃん。そんな女の子って、最高だと思うけど」
「ほんと? クールな海音ちゃんにそう言われるとマジに、うれしいなあ。 ありがとねん!」
その場で喜びを表すように、くるくる回る彼女の笑顔に、こちらも思わず微笑む。
美咲、って。かわいい。
なんか怖かったけど。
仲間を想い、悩みながらも笑顔で頑張る、斎藤美咲。
彼女のことが、どんどん好きになっていく。




