表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漂流のシルエット  作者: 木里 いつき
本編 漂流のシルエット
18/33

にげてもいいんだよ


斎藤美咲がその様子を見たのか、走ってきた。

吹奏楽部の練習が終わったのか、栗毛が汗で少し濡れてる。

羊のふわふわした雰囲気は今は無く、ひっ迫した顔をしている。


「ちょっと、二人とも! やめてよ! 夕凪さん、泣いてるじゃん!」


美咲が私のそばに駆け寄り、そっと肩に手を置く。泣くことしかできない自分が悔しい。

でも、涙は止まらずひっぐひっぐと止まらない嗚咽が漏れる。

そんな私を男子2人から遠ざけて人目につかない場所に移動させてくれた。


「夕凪さん、大丈夫? ごめんね、美咲、黙ってられなくて、変なこと言っちゃったから、こんなことになったんだよね……」


その申し訳なさそうな声に、首を振る。

「ううん、斎藤さんのせいじゃない……私、ただ、みじめで……」


声が震える。斎藤美咲は私の手を握り、優しく笑う。


「みじめなんて、ぜんぜん。 夕凪さん、すっごく頑張ってるよ。美咲、よくわかんないけど、辛いこといっぱいあったんだよね? でも、こうやってここにいるんだから、すっごく強いよ」


その言葉に、胸の奥が熱くなる。

強い? それほど私に似合わない言葉は無いだろう。

なのに、笑顔が、嘘に見えない。


同調圧力を掛けまくる、トゲトゲした女王様だと思ってた彼女。

こんな風に私の心に寄り添ってくれるなんて。


「ありがと、斎藤さん……」


小さな声で答える。


「あのね、美咲、きついことがあったら逃げてもいいって思うよ。でも、その逃げ場所にうちらが成れたらいいなって思うの」


美咲はニコッと笑って、私の涙をハンカチで拭いてくれる。

「でもゆっくりでいいから! ほら、とびっきりかわいいんだから! もっと笑お?」


その無邪気な声に、初めて、ホッとした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ