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しずけさが
昨夜のことが頭から離れない。
駅前の塾の窓から見下ろしていた村田大和——猿、斎藤美咲——羊、そして新開勉——ティラノサウルス。
あの三人の視線。
タコの宇宙人に肩を抱かれ、ホテルに向かうみじめな私を見た彼らの目。
軽蔑されてる。嫌われた。
なのに、なぜか足は図書室に運ばれる。
ドアが開く音。
振り返ると、勉が立ってる。
ティラノサウルスの威圧感。
でも、今日はメガネを外して、どこか疲れた顔。長い指で目をこすりながら、軽く笑う。
なんで、来るの。
見られたくないけど確かめたい。
昨夜の視線が、頭の中でリプレイされる。
タコの腕に抱かれた私を、彼はどう思ったんだろう。
軽蔑? 失望? それとも、無関心?
どの可能性も、胸をズキズキと痛ませる。
「よ、夕凪」
彼はいつものように軽く笑って、反対側の席に座る。私は目を逸らす。声が出ない。
知ってるよね。昨日のこと。
その恐怖が、胸を締め付ける。なのに、彼は何も言わない。
参考書を広げ、長い指でページをめくる。沈黙が、図書室を支配する。
クーラーの低い唸り声と、遠くの蝉の音だけが響く。




