珍メン。
「変なメンバーだなあ」
頭がいびつなお猿さんが頭を掻いてる。キーキーと耳障りな声がこだまする。
それはただ騒がしいだけの記号。
あいつらは私のことなんて、絶対に寄せ付けない。
「ん〜。珍メンって書こっと!」
タレ目の茶色い羊が、ぷるぷるした唇を舐めて、ペンを走らせた。
可愛い顔の裏に、盲目的な同調圧力が潜んでる。
吹奏楽部のリーダーである彼女が指揮する連帯は、隙間なんてどこにもない。
私みたいな異物が入り込む余地は、ない。
「それよりもこの後どうすんだよ、俺塾なんだけど」
ゴーグルをつけたティラノサウルスが、けだるげに腕時計を眺めてる。
ただそこにいるだけで周りを威圧する、圧倒的な存在感。言葉を吐くたびに、世界のルールそのものが揺らぐような、絶対的な強さ。
プリクラ機の光の中で、言いようもない違和感に襲われる。
温かい光に照らされた私たちの笑顔は、作り物だった。
わたし……わたしって、なんなんだろう。
なんで、ここにいるんだろう。
目の前の画面には、猿と羊とティラノサウルスと私が、顎にピースして写ってる。
羊が書いた「珍メン」の文字は、無邪気で、でもどこか残酷な光を放っていた。