大好きな彼
おはよう。あたしの大好きな人。
近くで眠るやまとくんの顔を、起こさないように間近で眺める。鼻先がぶつかりそうになったときに、少しうめき声を漏らして身じろぎをしたから慌てて彼から離れる。見つかったら大変。そっと部屋を抜け出して、朝ごはんの準備をする。
やまとくんはあたしの作る料理が嫌いらしいから、自分の分だけ。前に作ったとき、あたしが見てるの気づいてないのか、ゴミ箱に叩きつけてるのを見ちゃったし。ちょっとショックだったなぁ。ほんとは食べてほしいけど、これ以上嫌がられちゃ仕方ないし。
自分の分をさっさと作り、一人で食べる。
「さて、」
今日は彼とのお出かけ。しっかりおしゃれしなくちゃ。
あたしの持っている服で一番可愛くてふわふわのあったかそうなのを選ぶ。不思議と鼻歌を歌ってしまっていて、それに気づいて慌ててやめる。前もうっかり鼻歌を歌って彼をびっくりさせちゃったし。あたしって、音痴だから音を外してたからかも。
可愛いふわふわピンクのワンピースに気分が乗って、その場でくるりと一回転する。ふわりとスカート部分が広がり、更に気分が上がった。腰のあたりまで伸ばしている髪も揺れる。髪型どうしようかなと、考える。編み込みがいいかな?ポニーテールがいいかな?ハーフアップが一番いいかも。
「…、ぁ、ぁー」
ん、やまとくんの声が聞こえたから、きっと起きてくる。もうそんな時間か。彼ってば、寝起きを見られるのをすごく嫌がるから、別の部屋に行かないと。もしくは先にでかけていようかな。
…うん、先にでかけていよう。うっかり、やまとくんより遅れるなんてことがあったら大変だし。
音を立てないように静かに玄関の鍵を開ける。そのままドアを開けて静かに閉める。
「いってきます」
一緒にいるとはいえ、出かける時間は別々なの。
あー、すごく楽しみだなぁ。ふふっ。今からでもお出かけが楽しみ!今日はどこに行くんだろうなぁ。
いつもと系統は異なりますが、これは一人の女の子が大好きな人のために色々行動する恋愛小説です。僕ですか?いいえ、彼女とは何も関係ないですよ。ええ、彼女は虫も殺せないほど心優しい人なのですから。