家で
まだかな?
俺の家はそこそこでかい平屋である。
父型の祖父が亡くなり、今は俺が引き継いでいる。
玄関の引き戸を開け、中に入る。
「ただいま」
「……ただいま?」
家に挨拶をすると少女が不思議そうに遅れて言う。
外は寒いし中も寒い。日が当たってない分、中の方が寒いだろう。
せっかく身体を温めたのだが、たった十分の帰りで身体の芯まで冷えてしまった。
家の風呂は洗ってないから、布団で丸まって温まる感じかな。
玄関には振り子時計が置かれている。
それで今の時間を確認する。
「15時か……」
昼にしては遅すぎるし、夕飯、床に就くにも早すぎる。
家には暖房もないし、温かいご飯としてもカップ麺以外の食材がない。
そう思案していると、
「ヘックチョン」
可愛らしいくしゃみの音が聴こえた。
取り敢えず広間に向かうか、囲炉裏を使えば暖かくなるだろうし。
広間に移動し、囲炉裏火を灯す。
囲炉裏を囲うように少女を座らせ、薄い掛け布団を掛けてあげる。
湯を沸かため、水を張った鉄瓶を台所から持ってきて、囲炉裏の自在鉤に吊るす。
しばらくすると部屋はほんのりと暖かくなる。
今日はここに布団でも敷いて寝ることにしよう。
臥所に行き、いつも使っている布団を持ってくる。火事になると危ないので、それを囲炉裏から少し離れた所に敷く。
少女は囲炉裏に手をかざし温まっている。
お茶を入れるため、台所から緑茶の茶葉、急須と湯のみを持ってきた。
茶葉と沸いた湯を急須に入れる。
お茶菓子にタンスに入れて置いたお煎餅を数枚、木の皿に出す。
湯のみにお茶を注ぎ、お茶と煎餅を少女の横に置く。
「どうだ、嬢ちゃん温かいか?」
「……うん。……あったかい」
「そうか。お茶と煎餅食べていいぞ」
「……うん」
勧めると、煎餅に手を伸ばしボリボリと音を立てながら食べ始めた。
煎餅を1枚食べ追えると、お茶にも手を伸ばし一気に飲み干し、ホッと一息した。
それを見て俺は少女の向かい側に移動しようとしたが、裾を掴まれてしまった。きっと隣にいて欲しいのだろうと思い、隣に座る。すると、少女は急に腕に抱きついて来た。寒いのか悲しかった、寂しかったのか。
何があったのか聞かなければならない。
「嬢ちゃん、親…パパとママはどうした?」
「……どっかいっちゃった……」
どっか行った?子供を置いて行くのかよ。
まぁ、今日は疲れているし今考えてもどうにもなる訳ではないから、明日あいつが来たらで良いか。
「嬢ちゃん、今日はもう休もう。」
何も言わず頷いた。
そして、二人一緒に床に入り長いような短い今日が終わった。
本編まだかな?