第3話:パートナーを求めて
この隠し部屋暮らしを初めてからしばらく経った。
生活はとても順調だ。
洗濯屋ルリは大盛況で、今では魔力と時間が足りずに予約制にしているくらいだ。
家はある、金もある。
生活に必要なものは揃った。
しかし私には足りないものが一つある。
「孤独だ」
一人で隠し部屋に住むというのはストレスはないが寂しい。 普通なら家族がいるのだろうが私にはいないようなものだし、ルームシェアするほど仲の良い友人もいない。
私はその寂しさを埋めてくれるパートナーを探すために、とある店にやってきた。
『魔女の出会い場』
怪しい店構えに、いかがわしい想像を掻き立てる店名だ。
しかしここは魔法使いの使い魔を販売している、前世でいえばペットショップのような店なのだ。
「ぴゃ~」
「うわ~可愛い!! でも高っ!?」
ふわふわの鳥みたいな生き物やまんじゅうみたいにプクプクした猫のような生き物など、マスコットのような緩い見た目の使い魔がたくさんいる。
「そりゃそうさ。 ここにいるのは俺が独自の方法で掛け合わせたユニークな使い魔ばかりだからな」
店主が自慢げに言う通り、ここの使い魔は他とは違う。 使い魔を買うならここというほどの優良店なのだ。
いくら大儲けしたとはいえ私に手が届くような金額ではないことは初めから分かっていた。 私が来た目的は、
「知ってます。 私が買いに来たのはクジ卵です」
「ほう、お客さん見た目に合わず威勢がいいね! 何が出るかはお楽しみ! 当店名物のクジ卵! お一つ金貨一枚! ノーリターン、ノークレームでよろしくお願いいたします!」
五個の卵が並ぶ棚から一つを選ぶ。
赤色、青色、緑色、黄色、そして黒色の卵だ。
「よし、これください!」
「あいよ! まいどあり!」
私は卵を両手で抱えながら、るんるんで隠し部屋に帰るのであった。
〇
「は~私の可愛い卵ちゃん……早く生まれておいで~」
私は自分の気持ち悪さに我に返って、卵にほおずりするのをやめた。
「卵を返すには魔力を注げばいいだけ……なんだけど魔法もかけちゃお!」
生まれる使い魔には魔法を使えず、スキルもないハズレと呼ばれる個体が生まれる場合がある。 正直私は可愛ければなんでもいいが、強いことにこしたことはない。
ゲン担ぎのようなものだが魔獣の卵に魔力と共に魔法をかけ続けると、生まれてくる個体がその魔法を使えるようになるとかなんとか。
「あとは~音楽もいいよね! それと頭が良くなって欲しいから、前世の知識でも語りかけてみるか!」
それから私は日中は卵を背負って勉学に励み、洗濯屋の仕事をこなし、そして夜には抱いて眠るそんな生活が五日ほど続いた。
――ぱき
「き、きききき来た……っ」
ついに卵にひびが入った。
まもなく授業の時間が迫っているが、この瞬間を見逃すわけにはいかない。 私は今日の全ての予定をキャンセル覚悟を決め、固唾を飲んで卵を見守った。
――ぱきぱき、ぱかん
卵の殻が完全に割れて中から出てきたのは、
「ひゃん」
「ほわあああああ」
小さくて、ふわふわで、真っ白な犬のようなまるでぬいぐるみみたいな生き物だった。
「きゃ、きゃわいすぎる」
「ひゃん!」
私があまりの愛らしさにおののいていると、その犬はとてとてと私の方に向かって歩いてきて挨拶するように鳴くのであった。
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