第2話:異世界の洗濯は重労働です!
この世界は基本アナログだ。
魔法は便利だが細かい威力の調整が効かないため、生活に応用するのは難しい。 魔道具は存在するが、高価なので一般的ではないのだ。
「へいらっしゃい!」
『驚くほど美しい白さ! 頑固な汚れは洗濯屋ルリにお任せ!』
そんな看板を首にかけ私は学内にあるギルド出張所に待機した。
この世界にも洗濯業者はあるし、この学校であれば格安で頼める。 しかし簡単な汚れは落ちるが、頑固なモンスターの血液などの汚れや、強い匂いは落ちない。
そのためこの世界の冒険者が服装を綺麗に保つことは難しい。
しかしこのクリーンの魔法があれば、
「これなんですけど、なんとかなりますか……?」
「はい、大丈夫ですよ!」
初めのお客さんがやって来た。 おそるおそる見せたのは、べっとりと血の付いた白い法衣だった。
「では行きますよ! 『穢れを滅せよ! クリーン!』」
――しゅわぁ~
魔法を使うと血の汚れはもちろん、他の汚れまでもが溶けるように消えていった。
「うわ! すごい! ありがとう!」
「いえいえ、喜んでいただけたようで良かったです」
「これは父からプレゼントされた大事な物だったんです……だから本当に感謝します。 これはその気持ちです」
お客さんはそう言って金貨一枚を私に差し出した。
普通の洗濯屋であれば洗濯一カゴで銅貨一枚といったところか。
対して私は一度の魔法で銀貨一枚を料金とした。
銀貨一枚は日本で言う一万円前後であり、それでもかなりの高額だ。 金貨一枚何て、贅沢をしなければ一月は暮らせるだろう。
「そんなこんなにもらえません」
「これは私の気持ちです、受け取ってください。 それでも気に病まれるのであればまた洗濯をお願いします」
「分かりました! もちろん、いつでもご利用ください!」
この学校には平民も通うが、彼女は高貴な身分――つまり金持ちなのだろう。 それでも洗濯に金貨一枚というのは、本当に心から感謝していなければ払わない。
気軽な気持ちで始めたけど私は少しやりがいを感じていた。
「あの、俺も頼んでもいいか?」
「はいどうぞ!」
その騒ぎを聞きつけてか次から次へと客が現れ、大盛況となった。 なんとか全員を捌き終える頃には、私の魔力は枯渇寸前にまで消費されていた。
「つ、疲れた~。 でも」
私はパンパンに膨らんだポケットからコインを取り出したニマニマと嫌らしい笑みを浮かべた。
「大儲け! 今日の晩御飯はごちそうにしよう!」
幸先の良い結果に私は隠し部屋で一人、浮かれまくるのであった。
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