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震度8  作者: そらのき
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3話「別れ」

第3話 「別れ」

早苗は私を探しているようだった。校庭に私がいることを信じて。私と一緒に生きたいという願望を持って。私は必死に早苗に向かって叫んだ。だけど声は届かない。それは何故か。もう、すぐそこに津波が迫ってきているから。私は後悔している。ボーッとしてしまう癖を治そうとしなかったことを。もっと早苗と話しておけば良かったと。すると後ろから肩を叩かれた。早苗に向いていた視線がふと肩を叩かれた方にいった。そこには坂本くんがいた。坂本くんは手にロープを持っていた。

「これで早苗ちゃんを助けてあげて!」

と言われ私は涙がこぼれ落ちた。まだ助かる。まだ一緒に過ごせる。私は今までの早苗との思い出を力に変え、早苗に大きな声で叫ぶと同時にロープを投げた。早苗はやっと気づいてくれた。目があえて安心した。遠くからでも早苗が泣いていることが分かった。早苗がロープのある方へ走っていく。それと比例し津波も迫ってくる。早苗がロープを掴む。早苗は安心した顔でゆっくりゆっくりまるでカタツムリのように上がってくる。笑顔で私と目を合わせながら。この笑顔は一生忘れない。私は早苗が大好きだ。その時そう気づいた。



日常が壊れるのは一瞬。そう。一瞬。津波が早苗を襲う。早苗はそれでもロープを掴んでいた。ロープを固定していたドアは津波の圧力に耐えきれずドアごと飲み込まれる。今、ロープ、ドア、そして早苗が一瞬にして私の目の前から消えた。私の脳内では「絶望」という2文字があった。辛い。私が早苗と過ごしてきた日々。そして目を合わせた時のさっきの笑顔が頭によぎり、思わず涙が溢れ出てくる。もう私も死んでやりたい。そう思いながらも体が動かない。坂本くんに腕を掴まれ死ぬ事が出来ない。もう、早苗がいないと何も出来ない。つらい。あぁ、なんで神様は私をこの世界に生んだんだろう。



校舎の3階ぐらいのところまで水が来た後、津波はまた先に向かっていった。早苗を連れて。



私は誰かに肩を叩かれた。また坂本くんかな?と思い後ろを振り向くと、そこには家族がいた。いや何かが足りない。妹と弟がいない。花菜(はな)亮太(りょうた)が。

「花菜と亮太は津波にやられた」

そう言い残し両親は奥の方に行ってしまった。私は数分で3人もの人間との別れを告げた。

次回 第4話「言いたいこと」

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