空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセ
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──空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセ
パンツァーファウスト作戦に参加した帝国空軍第6空中艦隊と化学兵器エージェント-37Aの使用を目指す反乱軍ヴィーザル空中艦隊は艦隊決戦を開始した。
「撃ち方始め!」
空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの50口径40.6センチ3連装砲は帝国空軍が保有する空中戦艦の中でもっとも威力と射程距離がある艦載砲だ。
帝国空軍第6空中艦隊はアウトレンジで攻撃を受け、自分たちの交戦距離に引きずり込むために砲撃の中をヴィーザル空中艦隊に向けて突撃している。
「艦長。いくらレーダー射撃でもちまちま遠くから撃っても当たらない。敵空中艦隊に向けて寄せるんだ。残念だが時間は我々の味方ではない」
「了解です、レヴァンドフスカ少将閣下」
時間が経てば経つほど帝国軍は化学兵器による攻撃に備えられ、攻撃を避けるために撤退することもできる。反乱軍は帝国軍との戦いとともに時間との戦いも戦っている状況だ。
航空決戦は進み、空中で無数の爆発が生じる。
「艦長! 友軍空中艦隊がヴィーザル空中艦隊に接敵。現在交戦中です」
「予定通りだな。かなり際どい作戦になるがやるしかない」
そして、アレステアたちが乗った特務空中巡航戦艦アンスヴァルトはヴィーザル空中艦隊に後方から接近しつつあった。
速力としては空中巡航戦艦の設計思想である『空中戦艦よりも速く、そして空中巡航艦よりも強力な火砲』によって建造されたアンスヴァルトの速力は空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセより速い。
さらに空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセはヴィーザル空中艦隊という艦隊を編成しており、それによって速度を落としている。
追いつくことは可能だ。
「ルーン中佐。そちらの工作員は確実にレーダーを機能不全にしてくれるのだな?」
「確かです。訓練を受けた工作員ですので破壊工作も可能です」
「ふむ。しかし、やはり降下艇を対空火砲を満載した空中戦艦に送るのは躊躇われるな。司令部は成功する可能性はどの程度だといっている?」
「5割と」
「随分と分の悪い賭けだな。拒否するべきだったか……」
「これを行わなければ何万という帝国軍将兵と皇帝陛下が死にます」
「少ない犠牲で大勢を救う、か。我々も最後まで支援を行う。撃墜されることも覚悟の上だ。君が持ち込んだ作戦だ。付き合ってもらうぞ、ルーン中佐」
「もちろんです。自分だけ安全な場所にいようとは思いません」
テクトマイヤー大佐とルーン中佐がアンスヴァルトの艦橋から遠方で瞬く砲弾の炸裂を眺めながら、アンスヴァルトをその航空決戦が行われている空域へと進めた。
帝国空軍第9空中艦隊とヴィーザル空中艦隊の航空決戦は継続されているが、帝国空軍最大の空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセを有するヴィーザル空中艦隊は帝国空軍の飛行艇を撃墜している。
既に帝国空軍第9空中艦隊は空中戦艦2隻が中破し、空中大型巡航艦2隻が墜落した。
「中将閣下。空中空母フリットヨフを旗艦とする援軍が到着しました。これより小型飛行艇を展開します」
「いいぞ。可能な限り足止めするんだ」
しかし、ここに来て帝国空軍第9空中艦隊に空中空母の増援が現れた。
最新型の空中空母が一斉に戦闘機及び爆撃機を発艦させ、ヴィーザル空中艦隊に向けて差し向ける。
「敵の小型飛行艇多数!」
「空対空戦闘用意!」
ヴィーザル空中艦隊のレーダー連動の対空火砲が一斉に動き始め──。
「!? 艦長! 本艦のレーダーが機能を停止しました! 索敵レーダー及び対空レーダー、射撃管制レーダー全てです!」
「なんだと!?」
空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの全てのレーダーがその機能を停止。空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセのレーダーに連動した防空システムも全て機能を停止してしまった。
「原因は何だ?」
「分かりません! レーダーの装置そのもの破損か、あるいはレーダーの情報を分析する電子機器の破損か……」
「被害復旧急げ。それまでは手動で攻撃を実施」
「了解」
空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセは射撃管制レーダーも機能を停止したため、その射撃に正確さを失った。
そして、帝国国防情報総局の工作員が引き起こしたこのサボタージュと帝国空軍第9空中艦隊が展開した小型飛行艇の攪乱に乗じてアンスヴァルトが急速に空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセへと突撃。
「葬送旅団及びグリンカムビに通達! 降下艇発艦開始!」
そして、テクトマイヤー大佐の号令でアンスヴァルトの格納庫で待機していたアレステアたちが動き始めた。
「乗り込め、乗り込め! これからフリードリヒ・デア・グロッセに突っ込むぞ!」
グリンカムビの高度な訓練を受けた操縦士がパイロットを務める降下艇に、シグルドリーヴァ大隊の兵士たちが迅速に乗り込んでいく。
「行きましょう、アレステア君」
「はい!」
アレステアたちも降下艇に向かう。
「あ、あの!」
そこでアリーチェがブラムとともにやってきて声を上げた。
「どうしました、アリーチェさん?」
「その、私たちも一緒に行きたいん、です。私たちの故郷で化学兵器なんてものが使われるのは嫌だなって思って……」
アリーチェの申し出は作戦に参加したいというものだった。
「アレステアさん。私からもお願いしたい。銃は使えるし、故郷のために死ねるなら悔いはない。一緒に連れて行ってください」
「分かりました。ゴードン少佐さんに話してみます」
「ありがとうございます、アレステアさん」
アレステアはそう請け負い、空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセ強襲に向けて準備を進めているゴードン少佐に話をしに行った。
「ゴードン少佐。アリーチェさんとブラムさんが作戦に参加したいそうなのですが」
「正直、自殺に近い作戦だ。作戦行動中の飛行艇、それも空中戦艦に移乗戦闘を行うなんてことは通常想定しない。それでも彼らは参加したいと?」
「彼らにとって生まれ育った故郷を守る戦いなんです」
「分かった。許可する」
ゴードン少佐がアレステアに頷く。
そして、アレステアたち葬送旅団、ゴードン少佐たちシグルドリーヴァ大隊、アリーチェたち自由ヴァイゼンナハト自由軍がグリンカムビの降下艇に搭乗。
『こちらグリンカムビ。発艦準備完了』
『了解。そちらの突入の際の犠牲を押さえるためにスモークを展開し、空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの反撃を阻止する。待機せよ』
降下艇の空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセへの突撃を支援するためにアンスヴァルトが速力を上げ可能な限り空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセに接近した。
「敵艦、主砲発砲!」
「回避運動を取りながらも接近を続けろ! 相手は編隊を組んでいるため機動が制限されている! それを突くぞ!」
「了解!」
テクトマイヤー大佐が指揮するアンスヴァルトはアンスヴァルトの接近に気づいた空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの主砲による砲撃を縦横無尽の機動で回避しながら、空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセに迫る。
「空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセまでの距離1100!」
「スモーク展開!」
「スモーク展開!」
アンスヴァルトが装備していたスモーク・ディスチャージャーからスモーク弾を発射し、空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの視界を塞ぐ。
「砲術長! 主砲、敵の高射砲に向けて照準!」
「了解!」
続いてアンスヴァルトの主砲たる口径28センチ3連装砲が空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの側面に並ぶ両用砲や高射機関砲に砲口を向けた。
現代の飛行艇としては威力の低い主砲を有するアンスヴァルトでは最新鋭の空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの撃墜は無理だ。だが、防御がないに等しい降下艇にとって脅威である高射砲は潰せる。
「撃ち方始め!」
「撃ち方始め!」
アンスヴァルト、発砲。
放たれた主砲弾が空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの高射砲群に大打撃を与えた。両用砲が爆発し、高射機関砲や高射機関銃が跡形もなくなる。
「いいぞ。降下艇、発艦開始!」
そして、ついに空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセへの移乗作戦が開始された。
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