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ヴァイゼンナハト城での激戦

……………………


 ──ヴァイゼンナハト城での激戦



「ゴードン少佐。もはや敵はこちらの攻撃に気づいたと見るべきです。であるならば、暗殺を避けるために彼らがやることを想定しましょう。ヴァイゼンナハト城には現在、空中艦隊が向かっていることを踏まえて」


 レオナルドがそうゴードン少佐に告げる。


「いくらこの城が広くても空中戦艦は着陸できない。移送するとすれば搭載している降下艇を使うだろう。そして、中庭などの場所ではフェルたちが破壊工作をやっていて、敵も危険だと分かっている」


 ゴードン少佐がそう考察を始めた。そして、ひとつの疑問が浮かぶ。


「ブラム、アリーチェ。ヴァイゼンナハト城の屋上に降下艇が着陸できそうな場所はあるか? 非常用のものなどは?」


「あります。一度観光客が発作で倒れたときに救急隊の小型飛行艇が城の屋上に着陸して、観光客を収容しましたから、そこを使えば」


「案内してくれ、ブラム。そこを押さえて指導部を叩く」


「分かりました。ついて来てください」


 ブラムがアリーチェとシグルドリーヴァ大隊の下士官に支援されて先行する。


「ブラムさん、止まって。多分、この先に敵がいる」


 エトーレが唸るのにアリーチェが隊列を止めた。


「少数なら突破するぞ。急がなければならん」


「ま、待ってください。偉い人がいるみたいです。あの階級章は──陸軍上級大将」


「なんだと」


 アリーチェの報告にゴードン少佐も陰からアリーチェと同じ人物を見る。


「目標を発見した。ロタール・フライスラー上級大将だ。排除するぞ」


「護衛がいますね。屍食鬼と正規軍の組み合わせです」


 ゴードン少佐が命じるのにアレステアがそう言った。


 フライスラー上級大将を守っているのは生きた帝国陸軍の軍人たちが1個小隊と無数の屍食鬼であった。フライスラー上級大将は彼らを引き連れて階段を昇っている。


「アレステア卿。君は相手が死霊術師かどうかわかるのだと聞いてる。フライスラー上級大将は死霊術師か?」


「ええ。彼は死霊術師です。他にも数名います」


「これは報告しておかなければならないな。帝国軍内部に死霊術師がいる、と。これが魔獣猟兵に通じているなどでなければいいのだが」


 アレステアが死霊術師特有の嫌な気配を感じ取りゴードン少佐に伝えた。


「あ、あの。あの方を殺す、ということで間違いないのですよね……?」


「そうだ。あれが暗殺目標だ。生きて拘束しろとは言われてない」


「じゃあ、撃っていいですか?」


「許可する。撃て」


 アリーチェが尋ねるのにゴードン少佐がそう命じる。


 アリーチェが光学照準器にフライスラー上級大将の頭部を収め、光学照準器の十字のレティクルで狙いを定めた。


 そして、引き金を──。


「少佐殿! 外に飛行艇です! 空中戦艦です!」


「なんだとっ!?」


 ヴァイゼンナハト城が地震でも起きたように激しく揺れ始め、宮殿の鉄格子が嵌められた窓の外に反乱軍が強奪した空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの艦体側面が至近距離で見えた。


「あっ!?」


 その揺れのせいでアリーチェの狙いが逸れ、放たれた銃弾がフライスラー上級大将の後頭部を掠め、傍にいた将校の首を貫く。


「なっ!? 敵だ! 敵がいるぞ!」


「閣下! こちらへ! 狙われています!」


 反乱軍がアレステアたちに気づき、フライスラー上級大将を守るように布陣して急いで階段を駆け上って行った。


「は、外れました! ごめんなさい!」


「僕が追いかけます!」


 アリーチェが慌てながら叫ぶのにアレステアがフライスラー上級大将たちを追う。


「少佐殿! 不味いです! 空中戦艦が我々を狙っています!」


「退避、退避だ! 挽肉にされるぞ! 逃げろ!」


 そして、現れた空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの側面にある口径127ミリ両用砲、口径40ミリ4連装高射機関砲、口径12.7ミリ4連装重機関銃が一斉に火を噴いた。


 ヴァイゼンナハト城の窓が砕け散り、壁が崩壊し、砲弾と銃弾が城内に飛び込む。破壊が撒き散らされ、あらゆるものが粉砕されて行く。


「わわわっ! どうする、レニー!?」


「アレステア君を追いかけましょう! 皮肉なことですが今安全なのは敵がいる場所です! そこなら空中戦艦には攻撃されません!」


「了解だよ!」


 レオナルドが鳴り響く爆音の中でそう叫び、シャーロットがアレステアを追う。


「ま、待ってください! 私も行きます!」


「アリーチェさん! 行って、行って! 殺されるよ!」


 アリーチェとブラムもそれに続く。


『ヴィーザル空中艦隊旗艦フリードリヒ・デア・グロッセより地上部隊。近接航空支援を行っている。ヴァイゼンナハト城の上層付近に敵部隊。警戒せよ』


『こちら地上部隊指揮官フライスラーだ。航空支援を続けられたし。今、トロイエンフェルト議長を脱出させる』


 アレステアたちを狙う空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセからヴァイゼンナハト城の地上部隊を指揮しているフライスラー上級大将の指示が出る。


「シルスキー大尉! 部下を率いて離脱させろ! セルベラ曹長、お前は俺についてこい! 目標を追うぞ!」


「了解です、少佐殿!」


 空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの攻撃から退避していたゴードン少佐が部下のほとんどを下層に退避させ、自身は部下ひとりとアレステアたちを追った。


 そして、アレステアは彼らの先頭で逃げる反乱軍指導者のひとりであるフライスラー上級大将を追っている。ヴァイゼンナハト城の階段を駆け上り、屋上を目指した。


 ヴァイゼンナハト城は軍事要塞として敵に占領されにくいような作りになっている。内部の構造は複雑で階段はそれぞれ離れた位置にあり、防衛側が侵入者を迎撃しやすくなっている。


「来たぞ! 侵入者だ! 殺せ!」


 反乱軍がフライスラー上級大将を追うアレステアたちを迎撃するために、そのようなヴァイゼンナハト城の構造を利用した陣地を作って待ち構えた。


 設置された魔道式機関銃が火を噴き、屍食鬼たちが銃撃を繰り返す。


「押し通ります!」


 銃弾を弾き、躱し、受けても不死身の肉体に鞭打ってアレステアが弾幕を突破し、反乱軍が構築した陣地に飛び込む。


「クソ! 着剣! 進ませるな!」


 反乱軍の兵士たちは屍食鬼を含めて銃剣を装着し、アレステアに襲い掛かった。


「邪魔するなら容赦はしません!」


 アレステアは銃剣に“月華”で応戦。屍食鬼を切り倒し、反乱軍部隊の撃破を試みる。反乱軍は執拗にアレステアを狙い続け、彼を足止めした。


「通らせるな! 絶対にだ! 我々にはもう他に道はない!」


「帝国万歳!」


 死兵となった反乱軍部隊は勇猛で無謀。その身を犠牲にしてもアレステアを食い止めようとする。屍食鬼も猛威を振るい、アレステアは数の暴力を前に進めない。


「アレステア君! 支援します!」


「やるよ! 吹っ飛ばせーっ!」


 そこにレオナルドとシャーロットが合流し、アレステアを援護する。


 レオナルドがクレイモアで屍食鬼の胴体を真っ二つにし、シャーロットは“グレンデル”に徹甲焼夷榴弾を装填して屍食鬼も反乱軍の兵士も吹き飛ばした。


「畜生! こちら地上部隊! ヴィーザル空中艦隊へ! 近接航空支援を要請!」


『こちらヴィーザル空中艦隊旗艦フリードリヒ・デア・グロッセ。近接航空支援は可能である。目標を指示せよ』


「赤いスモークを展開した! その地点を吹き飛ばしてくれ!」


『了解』


 反乱軍がスモークで指示した目標は自分たちがいる場所であり、アレステアたちが反乱軍と交戦している場所だった。


「不味いっ! アレステア少年! レニー! 空中戦艦が来るよ! そいつらは無視して進んで! 纏めてふっ飛ばすから!」


「了解です、シャーロットお姉さん!」


 シャーロットが指示し、アレステアが反乱軍部隊を振り払ってレオナルドとともに陣地を突破。シャーロットはふたりを追撃しようとする反乱軍部隊を連続して銃撃し、追撃を阻止する。


『空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセより地上部隊。近接航空支援を開始』


 そして、再び空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセが牙を剥いた。


 反乱軍地上部隊が指示した地点に火砲の砲撃を叩き込み、そこにある全てのものを破壊し、殺害し、鉄と炎の嵐を生み出した。


「うわわっ! 下がれ、下がれっと!」


 距離を取って狙撃していたシャーロットが空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの猛砲撃から逃れ、大急ぎで後方に下がる。


「シャーロットさん! 大丈夫ですか!?」


「ああ、ブラムさんにアリーチェちゃん! 大丈夫! けど、今は進めない!」


 そこに民兵のブラムとアリーチェが合流し、シャーロットと空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセの砲火によって塞がれた廊下を見た。


「あの、アレステアさんたちは……?」


「先に進んだ。あたしたちも空中戦艦が攻撃を終えたら追いかけよう」


 そう言ってシャーロットは空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセが去るのを待つ。


……………………

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