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ヴァイゼンナハト城急襲

……………………


 ──ヴァイゼンナハト城急襲



 アレステアたちは地下水路からヴァイゼンナハト城中庭に出た。まずはシグルドリーヴァ大隊の下士官とヴァイゼンナハト城に詳しいアリーチェ、そして彼女の犬エトーレが先行して中庭へ。


「……敵はいない、です」


「クリア」


 シグルドリーヴァ大隊のベテランである下士官はもちろんとしてアリーチェの動きも素早く、洗練されていた。狙撃銃に転用している猟銃の光学照準器などを利用して無駄なく周囲の索敵を実施した。


「よし。情報通りなら反乱軍の指導部はヴァイゼンナハト城内にいるはずだ。だが、この城は広い。部隊を分ける。レギンレイヴ大隊は西棟から、シグルドリーヴァ大隊は東棟から、それぞれ捜索を行う。行け、行け!」


「了解!」


 レギンレイヴ大隊とシグルドリーヴァ大隊がゴードン少佐の指示に従って動き、敵に見つからないように遮蔽物を利用しながらヴァイゼンナハト城への侵入を試みる。


「ゴードン少佐さん。僕たちはどうすれば?」


「シグルドリーヴァ大隊に続いてくれ。ヴァイゼンナハト自由軍の2名も一緒に」


「了解です」


 ゴードン少佐の指示にアレステアが頷く。


「あの、わ、私が先導しましょうか?」


「分かった。頼らせてもらう、アリーチェ。うちの軍曹と一緒にポイントマンを」


「は、はい」


 エトーレを連れたアリーチェとシグルドリーヴァ大隊のベテラン下士官が先頭を進み、アレステアたちはヴァイゼンナハト城内に突入。


「あちこちで爆発音がしますね……」


「フェルが暴れているな。たんまりと爆薬を持っていったから吹っ飛ばせるだけふっ飛ばして攪乱してもらわないとな。こっちの戦力で敵と正面から戦えば大損害だ」


 アレステアがヴァイゼンナハト城の外から爆発音が響き、城の窓ガラスが揺れるのを見て呟くのに、ゴードン少佐が戦友の暴れっぷりに小さく笑った。


「止まって」


「隊列、停止しろ」


 先頭を立っていたアリーチェが廊下の角を曲がる前にアレステアたちに警告を出し、すぐさま隊列が停止する。


 エトーレがグルグルと警戒するように唸り声を発しており、それを受けてアリーチェが膝立ちになって曲がり角の先を手鏡で把握した。


「て、敵です。反乱軍兵士と屍食鬼です。数は30体前後で全員武装しています。ど、どうします?」


「迂回できないか?」


「多分、無理です。他に道はなかったと思います。ど、どうです、ブラムさん?」


 ゴードン少佐の意見を受けてアリーチェがブラムに尋ねる。


「無理ですね。迂回できる通路はないです。窓からの侵入も防止されていますから。一度窃盗が入ったことで管轄している宮内省が窓に鉄格子を設置したんです」


「じゃあ、強行突破しかないな。やるぞ」


 ゴードン少佐が部下たちに指示を出し始めた。


「ゴードン少佐さん。ここは僕が前に出ます。突撃して陣地内に入り、可能な限り敵を撃破することで攪乱します。その混乱を利用して敵の殲滅をお願いできますか?」


「分かった。頼むぞ、アレステア卿」


「はい!」


 アレステアは“月華”の漆黒の刃を構えるとアリーチェが見張る廊下の曲がり角から飛び出し、一気に廊下に陣地を作って展開している屍食鬼の部隊に向けて突撃。


「敵だぞ! 侵入者だ! 応戦しろ!」


 反乱軍の指揮官がすぐにアレステアたちに気づき、部下と屍食鬼に迎撃を命じた。


 土嚢を積み上げて構築された機関銃陣地から魔道式重機関銃が火を噴き、その他バリケードを作って展開している反乱軍将兵及び屍食鬼が魔道式自動小銃で射撃を繰り返す。


「行きます!」


 アレステアは銃弾の嵐の中を駆け抜け、銃弾を弾き、躱し、一気に陣地に肉薄。そして、“月華”を屍食鬼たちに向けて振るった。


「不味いぞ! 敵が陣内に侵入してきた!」


「白兵戦用意! 着剣せよ!」


 アレステアがバリケードを破壊して反乱軍が構築した陣地内に突入してくるのに反乱軍はアレステアに対する白兵戦を開始する。


「死ね! この──」


「やらせません!」


 銃剣を突き出してくる反乱軍にアレステアの“月華”がそれを弾き、すぐさまカウンターとして斬撃が繰り出され反乱軍の将兵と屍食鬼が切り倒されて行く。


「いいぞ。アレステア卿が反乱軍を攪乱している。今のうちに陣地を制圧する! 突撃を実施せよ! 機関銃はこの地点から制圧射撃だ! 行け、行け!」


「了解!」


 ゴードン少佐がシグルドリーヴァ大隊の指揮を執り、曲がり角から飛び出した将兵が反乱軍が廊下に設置した陣地に向けて駆ける。機関銃はバイポッドを広げて床に伏せた兵士が操り、陣地に向けて無数の銃弾を叩き込んだ。


「機関銃! 反撃しろ! 敵を進ませ──」


 屍食鬼が射手として配置についている機関銃陣地に向けて、反乱軍の指揮官が指示を出そうとするがその頭が弾け飛ぶ。


「ひとり。指揮官を狙って、確実に……」


 アリーチェの狙撃だ。彼女は銃弾があまり有効ではない屍食鬼を避け、屍食鬼を指揮している反乱軍の将校と下士官を狙った狙撃を繰り返していた。


「いい感じ、いい感じ。このまま叩こう」


 同じ狙撃手でもシャーロットの“グレンデル”はアリーチェの魔道式猟銃より高威力で射程も長い。だが、発射レートと操作性はアリーチェの方に利がある。


「アリーチェちゃん。あなたはそのまま指揮官狙いね。こっちは厄介な武器を握ってる屍食鬼を叩くから」


「りょ、了解です。次は……」


 異なる狙撃銃を使用する二人の狙撃手たちがお互いを援護し合い、的確に敵の反撃能力を奪っていく。


「道を開け! 敵を殲滅し、突破する!」


「アレステア卿に続け!」


 シグルドリーヴァ大隊はアレステアによる攪乱とシャーロットとアリーチェによる狙撃を受けて反乱軍の防衛陣地を制圧しようとしていた。


「援護します!」


 さらにレオナルドが先頭に出てクレイモアで屍食鬼を叩き切る。屍食鬼に対しては銃撃より斬撃の方が有効である。銃撃で屍食鬼を倒すには多くの銃弾が必要になるが、斬撃ならば剣ひとつで数回の攻撃で済む。


 そして──。


「クリア!」


 陣地は制圧され、反乱軍部隊は殲滅された。


「よし。すぐに進むぞ。これ以上足止めされたら陽動が無意味になる。脱出の際に大規模な敵部隊に妨害されるか、最悪指導部の排除そのものが失敗する」


「ええ。急がないといけませんね」


 ゴードン少佐が言い、アレステアが頷く。


『ヴィルヘルム・ゼロ・ワンより全部隊。現在ヴァイゼンナハト領全域で民兵が攻撃に出ている。敵軍の何かしらの大規模な軍事作戦の兆候の可能性あり。警戒せよ』


 陣地に残されていた反乱軍の無線機からそのような通信が流れた。


「言った傍からじゃん。敵も流石に気づくかー」


「い、急ぎましょう。わ、私たち民兵は軽装ですから、反乱軍が火砲や飛行艇を持ち出したらやられちゃいますし……」


 シャーロットがうんざりしたように肩をすくめ、アリーチェがそう促す。


「そうだな。急ごう。ここにいた部隊は大規模だったが、これまでの陽動で全くヴァイゼンナハト城の警備が動いていないはずがない。ある程度は警備は減っている。すぐに目標を仕留めて、迅速に離脱だ」


「行きましょう」


 ゴードン少佐が指示を出し、アレステアは“月華”を構え、再びアリーチェたちが先頭に立ってヴァイゼンナハト城の美しい内装をした廊下を駆け抜ける。


 彼らは階段を上り、廊下を抜け、部屋を探り、目標であるトロイエンフェルト、フライスラー上級大将、レヴァンドフスカ少将を捜索していく。


「あ。ま、また前方の扉の前に警備です。あまり規模は大きくないですが。具体的には10名程度の軽装部隊で、まだこっちに気づいていません」


 またエトーレがアリーチェに唸り声で警告を発し、アリーチェが慎重に敵を確認してゴードン少佐に報告した。


「警備がいるということは重要な人間がいるということだ。やるぞ」


「了解です」


 そして、反乱軍の警備に向けてアレステアたちが襲い掛かる。


……………………

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[一言] この小説は戦っている時が一番面白い。
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