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暗殺任務

……………………


 ──暗殺任務



 葬送旅団は反乱鎮圧計画パンツァーファウスト作戦を指揮する統合任務部隊“スキンファクシ”よりヴァイゼンナハト領への侵入を命じられた。


 アレステア、シャーロット、レオナルドの3名がワルキューレ武装偵察旅団という帝国軍の精鋭とともに現地に隠密侵入する。


「まずはシグルドリーヴァ大隊の司令部へ。部下が送ります」


「助かります、シーラスヴオ大佐さん」


 シーラスヴオ大佐が部下に車を準備させ、アレステアたちはその車に乗ってシュネーヴュステ空軍基地の中に臨時に設置された空軍の降下狙撃兵の兵舎や司令部が並ぶエリアに入った。


 降下狙撃兵たちは反乱軍の飛行艇の制圧と最後の手段である全面的武力衝突の際に真っ先に敵地に降下するために待機している。


「ここです。では、失礼します」


 ケルベロス擲弾兵大隊の兵士はシグルドリーヴァ大隊の司令部が設置された天幕前で軍用四輪駆動車を停め、アレステアたちを降ろすと去っていった。


「誰か!」


「葬送旅団のアレステア・ブラックドッグです!」


「ああ。失礼した。少佐殿がお待ちです」


 司令部の天幕を守る歩哨の誰何を受け、アレステアたち通された。


「失礼します!」


 アレステアが声を上げて司令部入る。


「ようこそ、シグルドリーヴァ大隊司令部へ、葬送旅団」


 司令部にいたのはシグルドリーヴァ大隊の指揮官ベンジャミン・ゴードン少佐と彼の部下たちだ。 帝国陸軍の戦闘服とタクティカルベストを纏い、司令部に置かれた折り畳み式の机を囲んでいた。机の上には地図だ。


「お久しぶりです。ゴードン少佐さん」


「ああ、アレステア卿。英雄と再び共に戦えることを光栄に思う」


 アレステアが頭を下げ、ゴードン少佐がそう返した。


「早速だが共同作戦について話し合いたい。作戦内容については知らされているか?」


「まだです。そちらに合流せよというだけで」


「なるほど。では、説明する。我々が行うのは帝国国防情報総局が計画した作戦だ。目的は反乱軍指導部の拘束または排除」


 アレステアの言葉にゴードン少佐が説明を始める。


「統合任務部隊“スキンファクシ”は心理・情報戦のみの解決は不可能と判断した。よって次の段階である反乱軍指導部の排除に移る。既にレギンレイブ大隊が行動中だ」


 パンツァーファウスト作戦の最初の段階である心理・情報戦による反乱軍の無力化は失敗したと統合任務部隊“スキンファクシ”司令部は判断した。


 事前計画で想定したほど反乱軍が投降しなかったことがひとつの要因だが、別の要因もこれには関係してきている。


「レギンレイブ大隊が収集した情報によれば反乱軍は帝都同様にヴァイゼンナハト領においても屍食鬼を実践投入している。心理・情報戦の失敗の要因のひとつはこれだ。屍食鬼は降伏しない」


「そうでしたか」


 屍食鬼を大量に実戦に投入するというやり方によって反乱軍は将兵が投降した後も、勢力を維持している。


「よって反乱軍指導部を排除する。具体的な作戦内容は現地にいるレギンレイブ大隊と合流してから話し合うことになるが、排除すべき目標は既に帝国国防情報総局と国家憲兵隊公安部が掴んでいる」


 そう言ってゴードン少佐が机の上に書類を並べた。


「まず前軍務大臣であったヴァルター・フォン・トロイエンフェルト。この男が帝国政府を僭称する国家非常事態委員会の議長を担っている。排除すべき最優先目標だ」


 メクレンブルク内閣において軍務大臣を務めていたトロイエンフェルトは反乱を指導し、反乱軍が帝国政府を自称して設置した国家非常事態委員会の議長に就任している。帝国はこれを排除すべき最優先目標としていた。


「次に反乱軍の軍事的な最高指導者と見做されているロタール・フライスラー陸軍上級大将。トロイエンフェルトは確かに政治的な地位はあるが、反乱軍の行動そのものはこの男が仕切っていると考えられている」


 帝国陸軍の元帥に次ぐ階級である上級大将という軍の高官も反乱に加担していた。


「そしてレナ・レヴァンドフスカ空軍少将。空軍の空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセを旗艦としていた空中艦隊の司令官であったが、空中艦隊ごと反乱軍に寝返った。反乱軍における空軍戦力を指揮していると推測される」


 帝国軍の女性将官は少なくないが、今回はその女性将官が帝国政府への忠誠を放棄し、反乱に加わっている。


「この3名が反乱軍の指導部を構成している。そして、先行して潜入しているレギンレイブ大隊からの情報によれば反乱軍はヴァイゼンナハト城を司令部としている。大型通信機やレーダー連動の高射砲を確認した」


「ヴァイゼンナハト城か。皇室資産だね。かつて皇帝が地方で起きた反乱を鎮圧し、その後の安定のために居城として執務を行った場所だっけ」


「ああ。皮肉なことに反乱を鎮めるための城が反乱軍に使われている」


 シャーロットが語るのにゴードン少佐が肩をすくめた。


「それから帝国安全保障局が無線傍受で把握した情報だが、拉致されたラインハイトゼーン公殿下もヴァイゼンナハト城に監禁されているとみられるとのことだ。統合任務部隊“スキンファクシ”は救助を作戦オプションとして検討している」


「ラインハイトゼーン公殿下は皇帝陛下の叔父さんでしたね?」


「そうだ。皇帝陛下の数少ない身内のひとりだ。皇帝陛下はラインハイトゼーン公殿下の安全を重視し救助を無理強いはしていないが、司令部は反乱軍から大義を完全に奪うために殿下を救助するべきではと考えているようだ」


「間違って救助作戦の際に殿下が犠牲になるかもしれないということですよね?」


「反乱軍は奪還を試みるだろうし、ヴァイゼンナハト城は戦場になる。大人しく反乱軍が完全に降伏し、武装解除した状況で救助するのがリスクは低い。だが、ひとりの命と戦闘で死ぬ大勢の兵士の命を天秤にかけられるか?」


 国家非常事態委員会を認めたという皇族ラインハイトゼーン公オイゲンは、その帝国政府を自称する組織における皇帝となっている。


 故に彼を反乱軍の手から奪えれば、さらに反乱軍の士気は下がり、全面的な戦力を投入した大規模な戦闘の可能性を下げることができるのだ。


「それもそうですが……」


「安心してほしい。これはまだ検討段階で決定されていない。明確に決定されたのは先の3名の排除だけだ」


 アレステアがハインリヒのことを思って暗い表情をするのにゴードン少佐がそう言ってアレステアを安心させようとした。


「作戦の段取りを聞いても、少佐?」


「説明する。まず我々は空軍の特殊作戦を担当する飛行隊によってヴァイゼンナハト領内に深夜降下する。そこで先行しているレギンレイブ大隊と合流。現地の民兵の支援を受けて反乱軍の警戒線を突破し、ヴァイゼンナハト城に侵入する」


 レオナルドが尋ねるのにゴードン少佐が司令部の机に広げてあるヴァイゼンナハト領を記した地図を指さして説明を始める。


「レギンレイブ大隊は既にヴァイゼンナハト領内に作戦拠点を設置している。また反乱軍が現地住民が反乱に抗議したのに武力で応じたことで現地住民はこちらの味方だ。ヴァイゼンナハト領には古くから民兵がいるが、それも協力する」


「民兵か。確かに帝国憲法では自治政府が承認した上で、住民が武装し、民兵を組織するのは違法じゃないってなってるけど。頼りになるの?」


 帝国憲法は自治政府が認めた自治体住民が武装し、民兵という軍隊を組織することを許可する条項がある。


 それは国防のためであり、徴兵に対して抵抗がある地方の住民による自主的な防衛を可能にするためであった。曲がりなりにも軍隊として機能するので災害が発生した場合にも救援活動を行うなどしている。


「帝国国防情報総局の準軍事作戦要員がレギンレイブ大隊とともに民兵に武器を与え、一通りの訓練を施した。期待できるだろう。それに民兵と言えど、帝国軍はその民兵を相手に苦労したんだ」


「ネメアーの獅子作戦。帝国軍にゲリラ戦を仕掛けたのは元民兵のグループでしたね」


「そう。だが、今回はこっちの味方だ」


 レオナルドの言葉にゴードン少佐がそう言う。


「さて、指導部を排除した後だが、再び空軍の特殊飛行隊と合流するためにヴァイゼンナハト城から脱出し、合流地点を目指す。その際は民兵が車両を提供し、民兵の護衛が付く。そしてその民兵部隊もともに脱出する」


「分かりました。作戦開始はいつですか?」


「0200にシュネーヴュステ空軍基地を立つ。準備しておいてくれ」


「了解です!」


 アレステアはゴードン少佐の言葉に意気込んだ。


……………………

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