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鎮圧計画パンツァーファウスト作戦

……………………


 ──鎮圧計画パンツァーファウスト作戦



 陸軍と空軍はヴァイゼンナハト領を占領し、帝国政府を名乗る反乱軍を鎮圧するための陸空軍の共同作戦を律圧。そのことを皇帝大本営で説明することになった。


「作戦名はパンツァーファウスト。陸空軍の共同作戦となります」


 皇帝大本営でシコルスキ元帥がそう説明を始めた。


「今回のこのパンツァーファウスト作戦は厳密に最初から全ての行動を決定しているものではありません。いくつかの状況を想定し、状況に応じて対応策を切り替えながら応じる作戦となっております」


「説明を始めてくれ、シコルスキ元帥」


 シコルスキ元帥が前置きを述べ、そしてメクレンブルク宰相が促す。


「まずやはり検討しましたが反乱軍に投降を促し、戦闘を回避するというのが最優先となります。我々の敵は魔獣猟兵であり、同じ帝国軍の兵士ではありません。戦闘を回避できればあらゆる面においてメリットがあります」


 シコルスキ元帥は反乱軍が意志を変えて、投降することを優先事項とした。


「それを支援するための計画がパンツァーファウスト作戦となります。初期段階においては心理戦と情報戦による非殺傷作戦を展開。無血で敵の切り崩しを図ります」


 パンツァーファウスト作戦の初期段階は武器を使うことなく、反乱軍の士気と結束を低下させる心理戦と情報戦が行われる。


 皇帝であるハインリヒが戦場に立つこともそのひとつだ。


「この段階で反乱軍が瓦解した場合はそれで作戦を成功としますが、失敗した際には次の段階に入ります。次の行動は反乱軍指導部の暗殺です。反乱軍の指導部を無力化することにより、反乱軍の降伏を目指します」


「その暗殺作戦を実施するのは?」


「ワルキューレ武装偵察旅団から2個大隊を投入します。既に先遣部隊はヴァイゼンナハト領内に侵入し、情報収集活動を実施中です。また現地の民兵への支援も実施中と帝国国防情報総局から報告を受けました」


 メクレンブルク宰相が尋ね、シコルスキ元帥が答える。


「それから実に申し訳ないのですが、葬送旅団からアレステア卿に作戦に参加してほしいと帝国国防情報総局及びワルキューレ武装偵察旅団から要請が来ています」


「アレステアを?」


 シコルスキ元帥が述べたのにハインリヒが険しい表情を浮かべた。


「はい。今回の反乱で反乱軍は死霊術を使用しています。これにより反乱軍がさらなる屍食鬼を投入する可能性と同じく死霊術師と同盟した魔獣猟兵の介入の可能性が浮かび上がりました。そのためです」


 シコルスキ元帥が説明したように反乱軍は死霊術で屍食鬼を生み出し、戦闘に投入している。魔獣猟兵と同様に。故に反乱軍と魔獣猟兵に何かしらの繋がりがある可能性が浮かび上がってきたのだ。


「この作戦において万が一魔獣猟兵が介入し、カーマーゼンの魔女や“竜狩りの獣”直系の人狼などが現れた場合、暗殺作戦は困難になります。そのためアレステア卿にご協力を願いたいのです」


 現状、カーマーゼンの魔女を退けたのも“竜狩りの獣”直系の人狼を退けたのもアレステアだけだ。それらに帝国軍の通常兵器は通用しなかった。


「個人に頼りすぎではないのか? 個人の素質に依存する作戦は破綻しやすいという。その個人が何らかの不調をきたせば全てが破綻してしまう。そうではないのか?」


「しかし、他にどうやって我々がカーマーゼンの魔女などの旧神戦争の化け物を相手すればいいのですか? もはや通常の手段で対抗できる存在ではないのです」


 列席者のひとりが苦言を呈するのにシコルスキ元帥が首を横に振ってそう尋ねる。


「分かった。軍が必要とするならば動員するといい。アレステアも今は軍に所属する軍人だ。軍の命令であれば従うだろう」


「はい、陛下」


 ハインリヒがそう言い、シコルスキ元帥が頷く。


「また最初の心理戦、次の暗殺が失敗した場合は全面的な武力による鎮圧となります。陸軍からはブリュッヒャー教導擲弾兵師団、第1自動車化擲弾兵師団、第4自動車化擲弾兵師団を動員します」


「空軍からは空中戦艦を含む空中艦隊及び第1、第2降下狙撃兵師団を投入します」


 シコルスキ元帥とボートカンプ元帥がそれぞれ発言。


「全面的な武力解決となるとどの程度の被害が考えられる?」


「動員した部隊の4割が損耗することを陸軍司令部と空軍司令部は試算しています。訓練された兵員だけでなく、火砲や飛行艇と言った装備も含めてです」


 メクレンブルク宰相が尋ね、シコルスキ元帥が答えた言葉に列席者たちが呻く。


「では、心理戦と暗殺で解決する可能性はどの程度だ?」


「心理戦で離反は引き起こせると思います。降伏した将兵は罰しないと発表することで降伏におけるハードルを下げますので。しかし、既に友軍を殺したものたちは降伏を渋るでしょう」


 今度はハインリヒが尋ね、シコルスキ元帥が答えた。


「ですが、暗殺が成功すれば敵は間違いなく崩れます。最初の心理戦で反乱軍に大義なしと示し、そして帝国政府を僭称する指導者部が排除されれば士気は決壊するでしょう」


 反乱軍は国家非常事態委員会を設置し、それを正統な帝国政府として自称している。その指導部の人材の層は独裁制が強いため薄く、暗殺によって容易に倒れるだろう。


「作戦を担当するワルキューレ武装偵察旅団は精鋭です。これまで困難な任務を達成してきました。彼らは信頼できます。信じましょう」


「分かった。何としてもやり遂げてくれ。作戦全体を指揮する司令官は?」


「臨時の陸空軍合同司令部として統合任務部隊”スキンファクシ”を設置し、司令官としてアーサー・シューマン陸軍上級大将を任命します」


 シコルスキ元帥がパンツァーファウスト作戦を担当する司令官を明らかにした。


「作戦開始はいつだ?」


「動員される部隊は現在戦略機動中であり、おおよそ2日後に配置完了となります。それからすぐに作戦開始となります」


「2日後か……」


 メクレンブルク宰相が呟くように言った。


「ご苦労だった、シコルスキ元帥、ボートカンプ元帥。反乱鎮圧、頼むぞ」


「畏まりました、陛下」


 ハインリヒがそう言って締め、皇帝大本営は閉会した。


 そして、帝国軍はパンツァーファウスト作戦に動員される部隊が列車や飛行艇で戦略機動し、ヴァイゼンナハト領に向かう。


 既に現地にはワルキューレ武装偵察旅団隷下のレギンレイヴ大隊が潜入し、情報収集と破壊工作の準備、現地の民兵に対する反乱の扇動を行っていた。


 統合任務部隊“スキンファクシ”の司令部は指揮通信機能が充実した空中大型巡航艦ヴォーバンに設置され、司令官であるアーサー・シューマン上級大将が参謀たちとともに同飛行艇に乗艦した。


 アレステアたち葬送旅団もまずはハインリヒが率いる近衛の兵士たちとしてヴァイゼンナハト領へと向かう。


「艦長。友軍空中駆逐艦の護衛が来ました。同飛行艇より統合任務部隊“スキンファクシ”の指揮下に入るよう要請が来ています」


「よろしい。本艦はこれより統合任務部隊“スキンファクシ”の指揮下に入る。友軍空中駆逐艦と連携し、引き続き目的の空軍基地に向けて飛行を続ける」


 アンスヴァルトの艦橋では骨折した腕を三角巾で吊っているテクトマイヤー大佐が指揮を執っていた。今は骨折程度で休暇が取れる状況ではないのだ。


 アンスヴァルトが目指すのはパンツァーファウスト作戦に参加する空軍部隊が集結しているシュネーヴュステ空軍基地。そこに帝国空軍の大規模な航空戦力と降下狙撃兵が集結しつつある。


「アレステア少年。休んだ方がいいよ。君は別の仕事もあるみたいだし」


「でも、眠れなくて……」


 兵員室ではアレステアがベッドに腰かけており、それを見たシャーロットが渋い表情を浮かべた。


「睡眠薬、貰ってくる?」


「大丈夫です。ちゃんと休みますから」


「あんまり張り切りすぎないようにね」


 シャーロットはそう言ってアレステアの部屋を去る。


 アレステアは兵員室でこれからのことを考えていた。


……………………

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