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分裂する帝国

……………………


 ──分裂する帝国



 ブリュッヒャー教導擲弾兵師団隷下第1教導自動車化擲弾兵連隊は反乱軍が司令部を設置しているオストリヒト空軍基地への攻撃を開始した。


『第1教導自動車化擲弾兵連隊本部より師団本部。攻撃を開始する』


『了解。砲兵が支援する』


 同師団隷下の第1教導砲兵連隊が装備する口径155ミリ榴弾砲と口径105ミリ榴弾砲が砲撃を開始。砲弾をオストリヒト空軍基地に叩き込んだ。


 オストリヒト空軍基地は市街地からは離れた場所にあり、そのため民間人を巻き込むことはないという判断から砲兵による射撃が実施された。


 砲弾がオストリヒト空軍基地に降り注ぎ、連続した爆発が生じる。


「攻撃開始! 進め!」


 第1教導自動車化擲弾兵連隊の将兵が砲兵の支援を受けてオストリヒト空軍基地に突撃していく。姿勢を低くし、一斉に走る。機関銃や砲撃でまとめてやられないために一定の間隔を取って進む。


 反乱軍はすぐに反撃を行った。


「迫撃砲!」


 砲声が響き、前進する第1教導自動車化擲弾兵連隊部隊の周囲で爆発が生じる。迫撃砲による砲撃だ。


「伏せろ、伏せろ!」


 すぐさま兵士たちは地面に伏せ、匍匐しながら前進を続ける。


「砲兵に対砲迫射撃を要請!」


「了解!」


 敵の迫撃砲を叩くために砲兵が呼び出された。前線観測班の指示で迫撃砲に向けてブリュッヒャー教導擲弾兵師団の砲兵が砲撃を実施する。


 砲弾が反乱軍の迫撃砲陣地に降り注ぎ、迫撃砲が撃破された。


「進め、進め! 一気に叩くぞ!」


 流石は他の部隊の教育や訓練を行う精鋭部隊なだけあって第1教導自動車化擲弾兵連隊の将兵の動きは洗練されており、無駄がなく、的確だ。全ての将兵が理想的な行動を取っている。


 さらにここにもうひとつの精鋭部隊が加わっていた。


『こちらレギンレイヴ大隊。第1教導自動車化擲弾兵連隊本部へ。これより管制塔及び地上レーダー施設を制圧する』


『了解』


 先行して侵入していたワルキューレ武装偵察旅団隷下のレギンレイヴ大隊が行動を開始。オストリヒト空軍基地の管制塔と地上レーダー基地に攻撃を仕掛ける。


「援護してくれ」


「了解」


 レギンレイヴ大隊の作戦要員たちが管制塔のドアを爆薬で吹き飛ばした。


「スタングレネード」


 すぐさまスタングレネードが放り込まれ、爆音と閃光が生じる。それからすぐにレギンレイヴ大隊の作戦要員たちが管制塔に突入。


「貴様ら──」


 混乱している反乱軍の将兵を特別なサプレッサーが装着されたカービン仕様の魔道式小銃を使って射殺する。ほぼ無音の射撃で管制塔にいた反乱軍は一瞬で制圧された。


「クリア」


「クリア」


 管制塔を制圧したレギンレイヴ大隊の作戦要員たちは管制塔の屋上に上る。


「レギンレイブ大隊より第1教導自動車化擲弾兵連隊本部。管制塔から狙撃で支援可能。なおそちらに大規模な歩兵部隊が向かっている。恐らく屍食鬼だ」


 レギンレイブ大隊は狙撃手が口径12.7ミリの対物魔道狙撃銃を据えて狙撃の姿勢に入り、かつ管制塔から見渡せるオストリヒト空軍基地の状況を友軍に通達。


「少佐殿。敵の司令部が見当たりません」


「逃げたか? 不味いな。空中戦艦に司令部を移されていたら帝都の外に逃げられる」


 同時にレギンレイブ大隊は反乱軍の司令部と主要メンバーの拘束を目的として行動していたがオストリヒト空軍基地に反乱軍の司令部はなく、手配されている指導者たちもいなかった。


「帝国国防情報総局に連絡しておこう」


「了解」


 現在ワルキューレ武装偵察旅団は帝国国防情報総局の特別行動センターの指揮下に入っていた。特別行動センターは情報活動に伴う軍事作戦や秘密作戦を担当する部署だ。


 レギンレイブ大隊は帝国国防情報総局から反乱軍の指導部メンバーの拘束または殺害と反乱軍に関する情報収集が命じられている。


 レギンレイブ大隊が任務を行う中、第1教導自動車化擲弾兵連隊はオストリヒト空軍基地内部に侵入し、確実に反乱軍の陣地を制圧し、基地の奪還に向けて進んでいた。


「連隊長殿。第2、第3教導自動車化擲弾兵連隊も間もなく到着します」


「よし。このままなら奪還可能だな」


 ブリュッヒャー教導擲弾兵師団の本隊も帝都に入り、オストリヒト空軍基地に向けて大急ぎで進んでいる。先遣部隊である第1教導自動車化擲弾兵連隊だけでも戦果を挙げているのだから、本隊が合流すれば勝利は確実。


 そう思われていたときだ。


「反乱軍の飛行艇が我が方の上空に進出してきました!」


「なんだと」


 反乱軍の空中戦艦フリードリヒ・デア・グロッセを旗艦とする空中艦隊が第1教導自動車化擲弾兵連隊の上空に進出してきた。


 そして、そのまま爆弾倉を開くと爆撃を開始。


「ああ! ああ!」


「助けてくれ!」


 大量の爆弾が降り注ぎ、第1教導自動車化擲弾兵連隊の将兵が鋼鉄と炎の嵐の中で切り刻まれて行く。


「ひ、被害甚大! 負傷者多数です!」


「なんたることだ。負傷者を収容し、撤退しろ! これ以上爆撃に巻き込まれるわけにはいかない!」


 第1教導自動車化擲弾兵連隊は大損害を出し撤退。


 そして、爆撃を行った反乱軍の空中艦隊は帝都から飛び去っていった。


「シコルスキ元帥閣下。反乱軍は帝都から完全に撤退したことが確認されました」


「連中はどこに向かったのだ?」


「帝国安全保障局が無線情報を傍受したところ、反乱軍の空中艦隊はヴァイゼンナハト領の帝国軍施設と交信しており、受け入れ準備について話し合っていたそうです」


「ヴァイゼンナハト領か」


 帝国安全保障局は帝国国防情報総局と同じく帝国の情報機関だが、行うのは主に無線などの通信の傍受やレーダーなどの電波情報の収集というシギントを行っており、指揮系統として内閣官房から指示を受ける。


「シコルスキ元帥。反乱軍は逃げたのか?」


「そのようですが、地方に撤退して抗戦を続ける模様です。引き続き警戒が必要かと」


「そうか。まずは帝都が安全であることを確かめてほしい。一度ここに閣僚を集め、戒厳令の布告を行う。国家憲兵隊も陸軍の指揮下に入る」


「分かりました。確認しましょう。コマンドなどが残っている可能性もあります」


 メクレンブルク宰相が告げ、シコルスキ元帥が頷く。


 それからシュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地に閣僚が集まり、戒厳令の布告について合意が得られ、帝都に戒厳令が布告された。国家憲兵隊が陸軍の指揮下に入り、陸軍部隊ともに治安回復に当たる。


「メクレンブルク宰相閣下。帝国安全保障局が反乱軍の放送を傍受しました。彼らは国家非常事態委員会の設置とラインハイトゼーン公殿下を元首とする臨時政府の樹立を宣言しています」


「首謀者は誰だ?」


「国家非常事態委員会の議長はトロイエンフェルト軍務大臣です」


「トロイエンフェルト。国賊め」


 情報将校の報告にメクレンブルク宰相が眉を歪め、忌々し気に呟いた。


「メクレンブルク宰相。ラインハイトゼーン公は確認できたのだな?」


「はい、陛下。ラインハイトゼーン公オイゲン殿下は反乱軍に拉致されたようです」


「……まさか叔父上自らが反乱軍に協力したということはないな?」


 メクレンブルク宰相の言葉にハインリヒが少し戸惑った様子で尋ねる。


「ありえません。ラインハイトゼーン公殿下は陛下を常々支持しておられました」


「そうか。そうであるならばいいのだが」


 メクレンブルク宰相が即座に返すのにハインリヒが自分を納得させるように頷く。


「いずれにせよ、これで帝国は分断された」


 帝国は国家存亡の危機においてふたつに分かれてしまった。


……………………

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