オストリヒト空軍基地の戦い
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──オストリヒト空軍基地の戦い
ブリュッヒャー教導擲弾兵師団の先遣部隊がオストリヒト空軍基地に向かっている中、上空を帝国空軍の飛行艇が飛行し、オストリヒト空軍基地に第1降下狙撃兵師団を降下させようとしていた。
『警告! 帝都防空司令部がオストリヒト空軍基地から大型飛行艇複数が離陸したことを確認した! 全部隊警戒せよ!』
そこで空軍司令部から帝都に展開中の全部隊に警告が発された。
反乱軍に制圧されているオストリヒト空軍基地から大型飛行艇が離陸したのを帝都防空司令部の地上レーダーが確認。
「艦長。帝都防空司令部がオストリヒト空軍基地から大型飛行艇複数が離陸したとのことです。いかがしますか?」
帝国空軍がオストリヒト空軍基地に派遣しようとしている第1降下狙撃兵師団を護衛している空中大型巡航艦にもその知らせは入っていた。
「しかし、それで降下作戦は中止になったのか? 我々の任務派第1降下狙撃兵師団の護衛だ。彼らを放っていって逃げるわけにはいかない」
「空軍司令部からは連絡ありません」
「では、任務を続行するしかない。交戦に備えよ」
「了解」
帝都上空を空中大型巡航艦と空中駆逐艦からなる空中艦隊が第1降下狙撃兵師団をオストリヒト空軍基地まで送り届けるために護衛して、飛行する。
「レーダーに反応あり! 方位3-3-0、高度1300メートル! 大型飛行艇4隻と中型飛行艇4隻、小型飛行艇10隻を確認しました!」
「こいつが帝都防空司令部から連絡があった奴だな。空中戦用意!」
帝国空軍の飛行艇からもオストリヒト空軍基地を離陸した反乱軍の飛行艇がレーダーによって確認された。
「見張り員! 敵艦は見えるか!?」
「僅かですが機影が見えます! 確認中!」
レーダーがあれど見張り員は不可欠だ。
「敵艦を確認! フリードリヒ・デア・グロッセ級空中戦艦です!」
「何だと」
見張り員の報告に艦長たち環境にいた軍人たちが目を見開いた。
フリードリヒ・デア・グロッセ級空中戦艦は帝国空軍最大の飛行艇だ。フリードリヒ・デア・グロッセをネームシップとし、カイザー・バルバロッサ、グローサー・クルフュルスト、ケーニヒ・アルベルトを同型艦とする。
50口径40.6センチ3連装砲3基を主砲とし、従来の空中戦艦としてかなり速度を誇るものだ。世界的に見ても攻守ともにバランスがいいと評価されている。
その帝国空軍の誇る空中戦艦が反乱軍に奪われた。
「射撃管制用レーダーを照射されています!」
「敵艦発砲!」
そして、フリードリヒ・デア・グロッセと同型艦3隻が一斉に砲撃を開始。
「反乱軍め! 帝都上空で空中戦をやるつもりか! 回避運動! 砲戦用意!」
「了解!」
帝国空軍の空中大型巡航艦が一斉に回避行動を始め、同時にその主砲を攻撃を加えて来たフリードリヒ・デア・グロッセに向ける。
「撃ち方用意!」
主砲に砲弾が装填された。徹甲弾だ。
しかし、反乱軍の放った砲弾の方が先に降り注いできた。帝国空軍の空中大型巡航艦の周囲で爆発が生じる。近接信管だ。その衝撃で空中大型巡航艦1隻が炎上を始めた。
「敵艦、さらに発砲!」
「一矢報いるぞ! 撃ち方始め!」
そして、帝国空軍の空中大型巡航艦が砲撃を開始した。
射撃管制レーダーに連動した主砲が正確な俯角を計算し、砲弾を放つ。しかし、結果は分かっている。空中戦艦の装甲に空中大型巡航艦の主砲は徹甲弾であろうと通じない。それでも帝国空軍艦隊は必死に戦った。
「僚艦が被弾! 墜落します!」
さらに反乱軍の空襲選管による砲撃の直撃を受けた飛行艇が爆発を起こして急速に地上に向けて墜落していく。飛行艇は市街地に墜落し、大爆発が生じた。
「艦長! 空軍司令部から撤退せよとの命令です! 第1降下狙撃兵師団の降下作戦は中止! 速やかに撤退せよとのこと!」
「了解! 進路変針、最大戦速! 空域を離脱する!」
空軍司令部は帝都上空で空中戦を行い、流れ弾や飛行艇の墜落で民間人に被害が出ることを危惧して現在帝都上空にいる帝国空軍の全ての飛行艇に撤退を命じた。
そのことはシュヴァルツラント近衛擲弾兵師団駐屯地のバンカーにいるシコルスキ元帥たちにも届いた。
「シコルスキ元帥閣下。空軍は作戦行動不能とのことです」
「そうか。仕方ない。民間人に被害を出すわけにはいかない。我々が対応する。まずはオストリヒト空軍基地の奪還だ。ブリュッヒャー教導擲弾兵師団の状況は?」
「先遣部隊が間もなく同基地に投入。レギンレイブ大隊が支援に当たっています」
ブリュッヒャー教導擲弾兵師団が反乱軍の拠点であったオストリヒト空軍基地の奪還を目指している。帝国陸軍の特殊作戦部隊であるワルキューレ武装偵察旅団隷下のレギンレイヴ大隊も支援を行う。
「メクレンブルク宰相閣下。内務大臣閣下と電話がつながりました。どうぞ」
「ありがとう」
閣僚との連絡を取ろうとしていたメクレンブルク宰相が電話を受けとる。
「内務大臣。反乱軍に対する法的措置について考えておいてほしい。賊軍であろうと法的手続きなしに罰するわけにはいかない。司法大臣の安否は確認され、司法省は反乱軍から守られた。話し合っておいてくれ」
『メクレンブルク宰相。これはもはら内務省や司法省と言った省庁が担当するべき案件ではありません。速やかに戒厳令を布告し、そして反乱軍関係者は軍事法廷で裁かなければなりません』
「君はそう考えているのか?」
『恐らくは司法大臣も同じ考えかと。国家憲兵隊による摘発が反乱前に行われていれば我々が扱うべきものでしたが、法律上このような事態を引き起こした場合、その処分は軍が軍事法廷で扱うべきとなっています』
「そうか。分かった。では、君は国家憲兵隊を帝都に展開させ治安回復を。それからこの戦闘での軍民両方の犠牲者の救助を急いでくれ」
『畏まりました』
メクレンブルク宰相が都市部における救急と消防も担当している内務省にそう命じ、電話を切った。
「メクレンブルク宰相。トロイエンフェルト軍務大臣が反乱軍についていると聞いた。改めて組閣が必要なのではないか?」
「その通りです、陛下。帝都の混乱が収まり次第、保守党の幹部を集めて話し合います。速やかな政府機能の確立が必要です」
「そうだな。よければ挙国一致内閣についても検討してほしい。今は帝国が一丸となって戦う必要がある。このような事態が二度と起きないように」
「至らぬ限りで申し訳ありません、陛下」
ハインリヒが告げるのにメクレンブルク宰相が頭を下げた。
「あの、皇帝陛下。僕にできることはありませんか?」
「今はここにいてくれ。頼む」
「はい」
ハインリヒがアレステアにそう言う。
流石のハインリヒも宮殿の地下司令部に反乱軍の屍食鬼が押し寄せたときには死を覚悟した。そうであるが故に信頼できる友人であるアレステアに傍にいてほしかったのだ。
皇帝という地位にあれどハインリヒもまだ子供なのだから。
「シコルスキ元帥閣下。ブリュッヒャー教導擲弾兵師団の砲兵が帝都郊外に展開。先遣部隊はオストリヒト空軍基地に突入する準備を完了したとのこと」
「細心の注意を払って攻撃せよ。敵は空中戦艦を含む飛行艇を飛ばしている。航空攻撃もあり得るぞ」
ブリュッヒャー教導擲弾兵師団の砲兵連隊も展開し、いよいよオストリヒト空軍基地の奪還作戦が開始された。
軍用トラックを降りた擲弾兵たちがオストリヒト空軍基地に徒歩で向かい、砲兵連隊の前線観測班が配置についた。
『第1教導自動車化擲弾兵連隊本部より全部隊。攻撃開始!』
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