表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/174

宮殿救援作戦

……………………


 ──宮殿救援作戦



 帝都上空で反乱軍の空中大型巡航艦と帝国空軍の空中駆逐艦が空中戦を繰り広げる中、アレステアたちを乗せた降下艇は宮殿に迫っていた。


「間もなく到着です。準備してください」


「はい!」


 テクトマイヤー大佐が通知し、アレステアたちが頷く。


 降下艇は帝都の建物の屋上すれすれを飛行し、宮殿のある中心部に入った。


 そこで降下艇が揺れる。金属と金属のぶつかり合う音が響き、降下艇が急速に高度と針路を変更し、アレステアたちが揺さぶられた。


「クソ。地上から対空射撃だ」


 テクトマイヤー大佐が操縦しながら悪態をついた。


 アレステアたちが乗る降下艇に向けて反乱軍が口径12.7ミリの重機関銃で対空射撃を行ってきた。降下艇の装甲では大口径ライフル弾は防げず、装甲を貫通した銃弾が降下艇に被害を与える。


 テクトマイヤー大佐は何とか地上からの攻撃を回避しつつ、宮殿に飛ぶ。


「こちら葬送旅団! 宮殿を守備しているノルトラント近衛擲弾兵師団へ! 降下艇でそちらに向かっている! 間もなくそちらに到着する!」


『こちら宮殿守備隊! こちらでの受け入れは可能だ! 赤のスモークでマークした視点に着陸せよ!』


「了解!」


 テクトマイヤー大佐が宮殿の守備隊に連絡し、守備隊から指示が出た。


「宮殿が見えました!」


「やっとだね。さあ、戦闘だ」


 ついに降下艇は宮殿を目視できる位置に入った。


 テクトマイヤー大佐は降下艇の窓から宮殿の敷地を慎重に観測し、ノルトラント近衛擲弾兵師団が指示した赤いスモークを探す。


「あそこか」


 宮殿の中庭から赤いスモークが立ち上っていた。


 しかし──。


「テクトマイヤー大佐さん! 降下艇です!」


「反乱軍の空中機動部隊か!」


 アレステアたちが乗る降下艇の後ろから別の降下艇が宮殿に急速に迫っていた。反乱軍に奪われた輸送飛行艇から発進した降下艇だ。


 反乱軍の降下艇はアレステアの降下艇に追いつきつつあり、宮殿に降下部隊を投入しようとしている。ノルトラント近衛擲弾兵師団の宮殿守備隊は宮殿内に押し込まれており、対空射撃が行えない。


 さらに反乱軍の降下艇から、ドアガンナーが口径12.7ミリ重機関銃でアレステアたちの降下艇を射撃し始めた。ドアガンは自衛用の火器として装備されているが、攻撃のためにも使用することは可能だ。


「レオナルド卿! ドアガンで反撃してください!」


「了解!」


 テクトマイヤー大佐の指示にレオナルドも反乱軍の降下艇同様に装備された重機関銃で反乱軍の降下艇を銃撃する。


 レオナルドが操る重機関銃は反乱軍の降下艇に銃弾を浴びせ、反乱軍の降下艇は回避運動を行い、それによってアレステアたちへの攻撃が止まった。


「このまま着陸します! 衝撃に備えてください!」


 テクトマイヤー大佐が叫び、降下艇が墜落しているかのような勢いで高度を落とし始め、激しい衝撃とともに着陸した。


「テクトマイヤー大佐さん! 大丈夫ですか!?」


「大丈夫です。今脱出します」


 テクトマイヤー大佐がいる操縦席は着陸の際の衝撃で正面の窓が割れており、降下艇は前のめりになった形で宮殿の中庭に着陸していた。


「葬送旅団か!?」


「そうです! 援軍にきました!」


「こっちだ! 砲撃が来るぞ! 急げ!」


「了解です! テクトマイヤー大佐さん、こっちへ!」


 ノルトラント近衛擲弾兵師団の兵士がアレステアたちを呼ぶのに、アレステアはテクトマイヤー大佐の脱出を助け、シャーロットたちとともに宮殿内に駆け込んだ。


「よく来てくれた。見ての通り、酷い状況だ」


 守備隊の中でもこれまで正面からの攻撃を防衛していた指揮官がそう言って、これまで彼らが守ってきた陣地をアレステアたちに見せる。


 弾が切れて放棄された機関銃。血の海が乾いて黒くなった跡。焼け焦げた壁。弾痕が刻まれた調度品。


「もう弾薬も底を突きかけてる。それでいて敵の攻撃は収まらなく──」


 指揮官が状況を説明しようとしたとき何か重量のあるものが宮殿に衝突した音が響く。窓ガラスが割れ、壁が崩壊する音がアレステアたちいる場所まで聞こえて来た。


「クソ。敵の空中機動部隊がついに突入してきたな」


「敵ですね。どうしますか?」


「迎え撃たなければならない。手を貸してくれ」


「はい!」


 アレステアはたちはノルトラント近衛擲弾兵師団の前線指揮官の指揮下に入る。


「テクトマイヤー大佐。大丈夫ですか?」


「左腕の骨が折れたようですがこれぐらいで死にはしません。私のことは構わず、任務を達成してください」


「分かりました。では、後で」


 テクトマイヤー大佐は降下艇の着陸の衝撃で腕の骨が折れていた。だが、彼は45口径の魔道式自動拳銃を握って戦闘に備えている。


「大尉殿! 敵の降下部隊が宮殿内に突入! 敵が侵入しています!」


「これより我々は敵の降下部隊を迎撃しに向かう! 続け!」


 宮殿守備隊の一部が反乱軍の降下部隊迎撃に向かう。


 アレステアたちもノルトラント近衛擲弾兵師団の将兵に続いて宮殿内を駆けた。


「敵だ! 屍食鬼だぞ!」


「反乱軍の連中め! もうライフルグレネードも手榴弾もない! 近接して白兵戦で仕留めろ!」


 銃剣を付けた魔道式自動小銃を構えて宮殿守備隊が突撃する。


「ここは任せてください!」


 そこでアレステアが前に出た。彼は武装した屍食鬼に向けて突っ込み、銃弾を受けながらも屍食鬼を“月華”で引き裂く。次々に押し寄せる屍食鬼を切り倒し続け、アレステアが宮殿を防衛する。


「援護するよ、アレステア少年!」


「撃ち漏らしたのは任せてください」


 後方からシャーロットが“グレンデル”で屍食鬼を仕留め、アレステアが撃ち漏らして突破した屍食鬼をレオナルドとノルトラント近衛擲弾兵師団の将兵が撃破する。


「やった! 何とか凌げ──」


 ようやく屍食鬼が撃破できたかと思った時、さらに降下艇が宮殿に突入してきた。一隻だけでなく、何隻も突っ込んできて武装した屍食鬼を宮殿内に解き放つ。


「まだまだというわけですね。なら、やります!」


 アレステアが“月華”の漆黒の刃を屍食鬼たちに向け、気合を入れた。


「大尉殿! 地上から反乱軍の攻撃が再開されました! 今、友軍が交戦中!」


「迅速に敵の降下部隊を撃破して、応援に向かうぞ!」


 降下部隊に続いて地上部隊が砲兵による支援を受けながら突撃してきた。


「急がなきゃ!」


 アレステアも突入してきた反乱軍の降下部隊を迎え撃ち、殲滅を急ぐ。


 “月華”の刃が舞い踊り、屍食鬼たちが次々に撃破されるが、そのアレステアも銃弾を受けて傷ついては回復し、血を流し続けている。


「畜生! こいつ──」


「退くな! 守り抜くんだ!」


 そして、アレステアが撃破し損ねた屍食鬼がノルトラント近衛擲弾兵師団の将兵に襲い掛かり、彼らが銃弾を受け、銃剣で刺され、負傷し、死亡していった。


 犠牲者は増え続け、誰もが生き残るために必死に戦う。守るために戦う。


「やった……! これで何とか……!」


 アレステアがついに全滅した反乱軍の降下部隊を前に疲労しながらも安堵の息を吐く。宮殿の廊下には宮殿に突っ込んだ降下艇の残骸と大量の屍食鬼の死体が転がっていた。地獄のような光景だ。


「大尉殿。負傷者多数です。地上部隊は今も応戦中とのこと」


「そうか。不味いぞ。もう弾薬がないし、負傷者も多い。戦えるのか……」


 アレステアたちとともに反乱軍の降下部隊を相手にしたノルトラント近衛擲弾兵師団の部隊は損耗しきっていた。


「僕たちは行きます。まだ戦えますから」


「そのようだな。部隊を再編成する! 負傷者から武器と弾薬を回収しろ! 負傷者を手当てする最小限を残したら、我々も応援に向かうぞ!」


 宮殿守備隊の前線指揮官は損傷を負った部隊を再編成し、兵力こそ少なくなったものの戦える兵士たちだけを集めた。


「よし。行くぞ!」


「ええ!」


 宮殿守備隊とともにアレステアたちが攻撃を受けている地上に向かう。


「クソ。地上の防衛線は突破されているぞ」


 だが、既に地上で防衛を行っていた宮殿守備隊は撃破されており、作られたバリケードは蹂躙されて、明らかに反乱軍が突破している。


「急ぎましょう! 皇帝陛下が危険です!」


 アレステアはそう言って突破されたバリケードを乗り越えてハインリヒたちが立て籠もっている地下司令部を目指した。既に地下からは銃声が聞こえている。


 アレステアは急いで地下室に駆け降り、シャーロットたちが続く。


「反乱軍だ!」


「行きます!」


 地下室には反乱軍の屍食鬼たちが満ちていた。


 アレステアたちはそこに飛び込む。


「アレステア少年! 派手にかますから気を付けて!」


 シャーロットがそう呼びかけると彼女は“グレンデル”に 徹甲炸裂焼夷弾のマガジンを装填すると屍食鬼の群れに向けて連続して叩き込んだ。


 爆発と炎が屍食鬼を撃破。帝国陸軍の正式魔道式自動小銃と違い大口径ライフル弾を使用するシャーロットの“グレンデル”は確実に屍食鬼を仕留める。流石はこれまで死霊術師を相手にしてきた武装異端審問官なだけはあった。


「アレステア君、援護します」


「お願いします、レオナルドさん!」


 同じく屍食鬼に有効なダメージを与えられるクレイモアを構えたレオナルドに援護され、アレステアが戦闘に突入。


 屍食鬼を相手に再び激しい戦闘になる。


「突破しないと……!」


 アレステアが“月華”で屍食鬼を叩き切り、斬り伏せる。


 そして、アレステアは戦いの中で進化していた。今までは銃弾をなすすべもなく受け、傷を負いながら戦っていたが、今では銃弾の弾道を読めるようになり、自分に向けて放たれた銃弾を弾き飛ばしている。


 “月華”を操る技術も高度になり、油断なく、隙なく相手を撃破していた。


「進め! 皇帝陛下をお救いしろ!」


 ノルトラント近衛擲弾兵師団もアレステアたちに続いて屍食鬼を相手にする。


「急がないと……!」


 宮殿の地下は完全に反乱軍に制圧されており、地下司令部も危ない状況だということが分かっていた。ハインリヒを直接護衛しているのは数名の兵士だけだ。


 アレステアたちは決死の白兵戦で屍食鬼の軍勢を撃破しつつ、進み続けた。


 だが、もう少しで到着できそうだと思われたときだ。


 爆発が生じた。


「うわ──」


 自爆だ。爆弾ベストを付けていた屍食鬼がアレステアたちが接近してきた瞬間に自爆し、アレステアたちに爆発の衝撃とともに仕込まれた金属片を撒き散らし、近くにいたものを殺傷する。


 アレステアが直撃を受けたほか、アレステアの近くで戦っていたノルトラント近衛擲弾兵師団の将兵が犠牲になった。


「アレステア君!」


「大丈夫です!」


 アレステアはすぐさま復帰し、自爆によって友軍も吹き飛ばす結果になった屍食鬼たちに再度挑み、突破を試みる。


 斬る。ひたすら相手を斬る。銃弾を弾き、相手を斬り、突破する。


「もう少し……! もう少し!」


 アレステアは12歳の少年とは思えないほどの力を示した。


「もう少しだよ、アレステア少年!」


 シャーロットも弾丸がある限り支援を続け、突破口を作る。


「残りは任せていってください、アレステア君!」


「はい!」


 そして、開けた突破口からアレステアが突撃し、既に破壊されていた宮殿地下司令部防護扉を潜り、地下司令部に至った。


「賊軍ども! 私の首が取りたければかかってこい! そう簡単にこの首は渡さんぞ! さあ、来るがいい!」


 地下司令部内ではハインリヒが剣で屍食鬼たちを切り倒し、護衛のノルトラント近衛擲弾兵師団の将兵が銃剣やスコップで戦い、エドアルド侍従長と枢密院議長は魔道式拳銃で応戦していた。


「皇帝陛下! 助けにきました!」


「我が友! 来てくれたか!」


 アレステアが地下司令部に駆け込むのにハインリヒが破顔した。


「救援も来てます! もう大丈夫ですよ!」


「ああ! 残敵を一掃しよう、ともに!」


 アレステアが呼びかけ、ハインリヒが剣を振るいながら応じる。


 アレステアとハインリヒは地下司令部に侵入していた屍食鬼に応戦し、掃討を始めた。曲がりなりにも神の眷属であるアレステアはもちろん、ハインリヒも果敢に戦い、敵を撃破していく。


 そして、ついに地下司令部の内外で反乱軍の屍食鬼が撃退された。


「やりましたね!」


「助かった、我が友! お前のおかげだ!」


 アレステアが安堵して微笑むのにハインリヒがアレステアをハグする。


「大佐殿! 空軍は反乱軍の飛行艇を奪還! 現在、帝都上空に反乱軍は存在せず! 友軍が救援に向かっています! 葬送旅団本隊も間もなくです!」


「よろしい。こちらも敵の攻撃を凌いだことを伝えろ」


「了解!」


 その頃、帝国空軍の第1降下狙撃兵師団が反乱軍の空中大型巡航艦2隻を奪還。帝都上空から反乱軍を排除した。


 それによりアンスヴァルトも行動可能となり、宮殿に向けて出撃している。


「まずは勝った……」


 アレステアはそう呟く。


……………………

面白いと思っていただけたらブクマ・評価・励ましの感想などお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載連載中です! 「人生リトライな悪役魔術師による黒魔術のススメ」 応援よろしくおねがいします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ