どこのキングのスライムさん?
「"キングメタルスライム"……こりゃ微妙に厄介な」
「ソーナノ?」
「そーなの」
扉の隙間からの見えた特徴から検索した結果、一致したモンスターの名前はキングメタルスライム。
キングメタルスライムとは簡単に言うと体がメタル――金属でできているゼリースライム、"メタルスライム"の上位モンスターだ。
メタルスライム自体、このダンジョンでもめったに見ない存在なはずなんだが……キングが出るかぁ。
メタルスライムの厄介な点は、その金属質なゼリー部分にある。柔らかそうに見えても金属的な硬さにより防御力はスライムの中でも随一を誇り、それでいてゼリー部分の柔軟性と弾性で衝撃を受け流す。
それだけ聞けばかなり強力なモンスターのように思えるが、弱点は存在する。金属だからか、基本的に移動スピードが遅いのだ。それはもうノロノロだ。そのためヒットアンドアウェイ戦法を繰り返していればいずれ倒すことが出来る。硬く防御力があったとて全くの無傷というわけじゃないからな。注意点としてはすぐ刃毀れしちゃうから材質がよくない剣はNG。
で、ここからがキングなんです。キングスライムというスライムの中でも上位に位置する存在は総じて知性がある。それぞれ自分の体の特性を理解しており、キングメタルスライムはゼリー部分を完全な球状、鉄球と化しておおよそスライムとは思えないスピードで転がり、敵を蹴散らすのだ。
「まだまだ色々あるが大方こんな感じだな」
「マッテジョージ!」
「うん?」
「アレって……食べれるの?」
「……イケるらしいぞ!」
「イコウ!」
「おうともさ!」
大事なことを含めてキングメタルスライムについて情報を共有できたので勢いよくボス部屋のドアを蹴破る。どうせ大人しく開けても隠れるところなんて無いしね。
そうして大きな音を立てて開かれた扉に中にいたキングメタルスライムは驚愕したのか僅かだが浮かび上がり重量感のある音を立てて着地する。
そしてキングメタルスライムは俺達を知覚したのだろう、早速その体を球状へと変化させるとこちらに向けて転がり始める。なにかスキルなり魔法を使っているのか、初速が思った以上に速い。
「とりあえずオーロラ止めれるか試してもらえる?」
「ハーイ!」
キングメタルスライムに立ちはだかるはオーロラの氷魔法によって生み出された壁。これで止まる程度の威力だったら楽でいいのだが。
「ダメみたいですネー」
「ちぇー」
無惨にも氷の壁はキングメタルスライムの突進を阻むことは出来ず、脆くも崩れ去ってしまうことに。まぁコレに関しては俺もオーロラも悲観はしていない。
それでは徐々に距離を詰めてくるキングメタルスライムにどのように対処すればいいのか。答えは簡単、避ければいいのだ。
「よっ」
「ホッ」
オーロラはそのまま上空に、俺は横に跳躍して回避する。そうすれば必然として急には止まれないキングメタルスライムは壁に――正確には俺達が入ってきたばかりのボス部屋の扉に激突することに。
思っていた通りキングはキングでも、ここのキングスライムはあまり知力は無いようだな。そもそもが出現するのが基本下位のスライムばかりと難易度が低いダンジョンなんだ。イレギュラーとはいえそこまで強くはないようだ。
辞書アプリにも強力な個体だと、突進攻撃一つでも完全な球状にするのではなく、体のあちらこちらに棘を生やしまくり殺傷能力を上げてたり、転がっている最中に棘を放出して遠距離攻撃なんて芸当もしてのけるとあった。
それに比べたら目の前のキングは楽だな。メタルスライム元来の強固さは厄介だが、それだけで脅威になるという程でもない。――おっと、自分の体の一部を全方位に飛ばしてきたな。棘状ではないとはいえ、それぐらいはやってのけるか。
だが残念。こちらには硨磲の盾があるのでね、防がせてもらう。流石に硨磲の盾に罅は入ってしまうが、再生してしまうのでさしたる問題ではない。おっと、オーロラもこちらに隠れに来ていたようだ。やがて硨磲の盾に伝わる衝撃が消えたので、キングメタルスライムを見てみると――
「チッチャくなっちゃったね」
「そりゃ自分の体そこまで飛ばしちゃあなぁ……」
結構なサイズのハズだったキングメタルスライムは見る影もなく小さくなっていた。その金属質な色をしたゼリーの中には先程までは確認できなかったボウリング玉ほどのサイズの鈍色の球体が見える。回りには自分の体に戻ろうとうぞうぞと蠢いているゼリーがある辺り、本当にほとんど全部飛ばしたんだろうな……
さて、そんな隙を見逃す俺でもなく。取り出したるはウォーハンマー。吽形だと刃毀れが怖いからね、その点ウォーハンマーであれば問題ない。
「オーロラは肉片……スライム片を足止めしてて」
「ジョージは?」
「ぺったんぺったんしてくる」
実際はぺったんぺったんなんて可愛らしい音ではなく、ガキンガコンゴギャンと金属と金属がぶつかり合う相応な音だけれども。しかし一方的な殴打とはいえ、流石はキングメタルスライム。ハイエルフパワーとウォーハンマーを持ってしても数発程度ではビクともしなかった。
そうして根気よく十数回叩いたところで鈍色だったキングメタルスライムの核が真っ白へと移り変わり――最後まで核を覆っていたゼリー体が力なく地面へ伸び、核はゴロンと転がり落ちた。
これにてキングメタルスライム討伐完了だ。
おっ、宝箱も出たな。中身は……あー、見たことある。確か握っただけで6面8面30面の面数を変えたりするだけじゃなく「何が出るかな」的なトークサイコロにもすることが出来るパーティ用アイテムか。それが大きな宝箱にぽつんと1個。……まぁ完全に使えないわけでもないしもらっておこうか。
「ジョージ、これも食べれるのー?」
「ん?いや、それは食えないな」
オーロラがツンツンと突付いてみせるのは、足止めにとオーロラに凍らされたキングメタルスライムのゼリー体だ。食用が可能なのは核のみでゼリー体の方は食べることは出来ないが、結構優秀な素材なので卸したらいい額がつくことだろう。もしくはそのまま持っておく、というのも手か?
ちなみにキングメタルスライムについて討伐したことを受付の方へ報告したらこれでもかと言わんばかりに感謝された。……あー、まぁ確かにガチ初心者が対峙してたらほぼ助からないもんな。そういう意味では俺が引き当ててよかったと思おう。
もしかしたら更に上位のスライムには人型もいるかもね……




