え?教師姿のTSハイエルフ?メガネ付き?
ロゼが防御魔法を使えるようになるための見本として鬼林さんが指名したのはオーロラでも麻鬼家でもなく俺だった。いや、俺魔法のまの字もわからない物理全振りのハイエルフなんですけど?
そんな感じで困惑する俺とは対象的にオーロラや麻鬼家の2人は納得したような面持ちだが……?うん、こういう時は下手に悩んで考え込むよりさっさと分かる人に聞いてしまったほうが話は早く進む。ってな訳でオーロラ、教えてちょうだいな。
「ジョージ、ハイエルフになった時から溢れ出るマリョクで体をキョウカしたり保護してるって言ったジャナイ?それのコトだよ」
「あぁ、アレか……アレなの?」
「そうだよぉそのアレだよぉ」
なんだか指示語を多用されている会話だな、オイ。まぁ魔力で体を保護している現象?体質?についての名称がないからな――
「あるよぉ?その体質の名前。"魔力溢出体質"って言うんだよぉ」
「……そのまんまでは?」
「いやいやぁ、体質に名前をつけるならそんなものだよぉ。格好良くしたいなら"マナオーバーフロー"ってのもあるけど」
「"魔力溢出体質"でいいです」
流石に日本生まれの精神おっさんからして素面で"マナオーバーフロー"って言うのは少々こそばゆい。――しかし、名前があったということは過去にも同じような人がいたのだろうな。
それはさておきだ。魔力が俺の身体を保護している体質がどうやってロゼの成長に役立つんだ?ほぼほぼ無意識で発動しているから教えられることなんてないんだけど。
「だからぁ、教えるんじゃなくて見本でいいんだよぉ。ロゼちゃんには木原くんの魔力溢出体質、その保護の方を任意で使えるようにするんだぁ」
「あれ?強化の方は?」
「悲しいけどねぇ、焼け石に水」
「アッハイ」
やっぱりそこはどうにもならないんだな……ジュエルグリフォン。
さて、そういう訳で見本役に抜擢されました、俺こと木原譲二ですが何をすればいいのかと1日にロゼと最低10分以上、ロゼを抱きしめたり頭に乗せたりととにかく継続的に触れ合うというものだった。……いやでもそれって――
「毎日していることでは?」
「仲睦まじいようで同じジュエルグリフォン飼いとしては嬉しいねぇ。まぁ木原くんは特に意識しなくてもいいんだよぉ。意識するのはロゼちゃんの方」
「ぴぁ?」
名前を出されたロゼは呼ばれたことを理解して「なに?」といった感じで鳴く。そんなロゼを鬼林さんが抱え上げたと思ったらそのまま俺に手渡しでパスしてきたので特に抵抗せず受け入れる。抱いてろと?
「いいかいぃ、ロゼちゃん。いつも君は木原くんに抱っこされているようだけどぉ、これからはちょっと感じてほしいことがあるんだぁ」
「ぴぁー?」
「君と木原くんが触れ合っているところ。そこにぃ薄い膜のような物があるのは分かるかなぁ?」
「ぴー……ぴぁー!」
おぉ、俺の腕の中のロゼが自分の体と俺の腕が接触してる場所をしげしげと見つめていると気づいたのか少し嬉しげな鳴き声を上げた。……ロゼも気づいたのか……俺はまったく気づいていないのに……
「よぉしよし、賢いねぇ。それはねぇ、木原くんの害になるものを守るためのものなんだけどぉ、ロゼちゃんにはその薄い膜を感じ続けて自分でも似たようなものが出来るようになってほしいんだよぉ」
「ぴぁ?」
「そうすればダンジョンに行けるようになる日が近づくかもしれないよぉ?」
「ぴぁー!?」
「本当さぁ」
「ぴぁーっ!」
「うぇっ!?ちょっ、ロゼ!」
まるで意思疎通しているかのようなロゼと鬼林さんの会話。ロゼの言っていることは何となく分かるが、鬼林さんがそれを保証するようなことを言うとロゼは俺の腕からもがいて抜け出した。
あぁとりあえず理解したからとまたサピロスと遊ぶのかと思えば、裾から服の中に潜り込んできた。うわぁ、ロゼの体あったかぁいじゃないんだよ人前だからお止め!あれか!素肌で接触したほうがより感じやすいと考えたのかねこの子!
「アハハぁ、別に素肌どうこうは関係ないからねぇ、普通に抱っこでも来るときのように頭に引っ付いているだけでもいいからねぇ」
「だとさ。ほら、ロゼ出なさい!」
「ぴぁー」
今日家に帰ったら気の済むまでくっついていいからと説得し、再びサピロスと遊んでいてもらう。
しかしまさか俺自身が解決の糸口になるとは思わなかった。灯台下暗しとはまさにこのこと……になるのだろうか。
「ありがとうございます、庵さん。おかげで希望が見えました」
「鬼林でいいよぉ。力になれて何より……だけどお礼はまだ早いよぉ?なんせ防御魔法がものになるかはあくまでも可能性の話だからねぇ。ただ感謝してくれているのならのなら少し頼みたいことがあるんだぁ」
「……なんです?」
まさかマンドラゴラのこと、俺の意識していないところで勘付かれたか?そんでそれを寄越せと言わないだろうな……?いや、在庫的にはぶっちゃけ問題はないんだけどね。あげるのが問題なので。と警戒していたら――
「いや何、半年の内2週間に1度のペースでいいから経過報告をしてほしんだよねぇ。ロゼちゃんの成長過程とか知りたいしねぇ」
なぁんだ。その程度でいいなら別に問題はない。一部食事メニューとかは……書かなくても問題はないだろう。そこまで強要するつもりはなさそうだし。
どうやって報告するのかと確認すれば、鬼林さんが送る"文鳥化"に簡単でもいいから報告書を入れて飛ばせばいいそうだ。"文鳥化"の魔法が視覚を共有するものじゃなくてよかったなとこっそり安心する俺であった。ツッコミも無いことから女々さん視点でも問題ないのだろう。
「分かりました、その頻度でいいならいいですよ。ただ、俺あんまりそういうレポートとか縁のない人生を送ってきたんで多少は許してください」
「いいんだよぉ、こちらからお願いしてるんだし」
鬼林さんより差し出された握手を求める手を握り返すことで今回のロゼの育成に関する相談の場はひとまずお開きとなった。
ロゼは初めてのジュエルグリフォンの友人のサピロスと名残惜しそうしていたが……まぁロゼの成長抜きにしても訪問するのは問題ないと鬼林さんから許可は出たのでもし女々さんたちの都合が良ければまた連れて行ってもらうことにしよう。
あ、当然帰ってから寝るまでロゼに引っ付かれてました。あの、毎日することが重要なだけでずっとひっつく必要はないんだからな?




