ジュエルグリフォンの可能性
「可能性、といいますと?」
「托卵先から巣立ったジュエルグリフォンは、どのようにして生きていくのか――気になったことはないかぃ?」
そう言われてみると、確かに気になったことはある。
巣立ったジュエルグリフォンは托卵先の庇護下から離れた以上、小さく飛ぶことの出来るすばしっこいだけのモンスターだ。体から生えている宝石に興味がない一般モンスターからしたらただの餌でしかない。
そしてその一般モンスターの大半はジュエルグリフォンよりも強い。そんなモンスターたち蔓延るダンジョンの中でジュエルグリフォンはどのようにして卵を生むまでに生存でき新たな托卵先までたどり着くことができたのか。
同意する意味で頷いてみせると、鬼林さんは満足げに頷き返して話を続ける。
「実は十数年前――当時飼っていたジュエルグリフォンが他の子たちのじゃれ合いに巻き込まれたことがあったんだぁ」
「ほう」
曰く、じゃれてた子達の1体がバランスを崩してしまい、あわや自分の数倍ものサイズの体に踏み潰されそうになった時、踏み潰しそうになったモンスターが弾かれたかのように急に上へ吹っ飛んだらしい。
そして地面に落下したときの衝撃と音と魔力の流れで鬼林さんが気づき、屋敷から出たときにはふっ飛ばされて地面に倒れたモンスターと蹲っているジュエルグリフォンがいたのだとか。
「幸い、ジュエルグリフォンも飛ばされた子も怪我自体は無かったんだけどねぇ。ジュエルグリフォンの方は見るからに弱ってしまった上に身体中の魔宝石が輝きを失ってしまったんだよぉ」
「輝きを?」
「そうさぁ、どうにも魔宝石の魔力を全開放したようなんだよねぇ」
内包している魔力を使い切ると魔宝石は無色透明のガラスのようになってしまうらしい。
ネイムル牧場ダンジョンでレギオン・ハルニクスをヤドリギの矢でとどめを刺した時にロゼからもらった魔宝石を握っていた。その後に魔宝石確認すると言われた通りの状態になっていたからやっぱり使い切っていたんだな。……改めてロゼから魔宝石もらっててよかったと思えるよ。
でだ。踏み潰しそうになったモンスターが吹っ飛び、弱りはしたものの無事だったジュエルグリフォンの魔宝石の魔力が使い切られた状態だったという事なら、鬼林さんが言うジュエルグリフォンの可能性とは――
「ジュエルグリフォンには蓄えた魔力を使って、魔法なり何かしらの手段で身を守る術があるってことですか?」
「そうだねぇ、その可能性が非常に高い。それも防ぐだけじゃなくて弾き返すこともできる。おそらくそれを用いてダンジョン内でも生きていたんだろうねぇ。問題点があるとするなら、消費が大きすぎることだねぇ」
そう、鬼林さんのジュエルグリフォンの事故後の状態から察するにその防御手段は蓄えた魔宝石の魔力を大量に消費するようだ。ジュエルグリフォンからしても窮地の一手なのだろう。頻繁に使えるものではなさそうだ。
「ただねぇ、その問題なんとか出来そうなんだよねぇ」
「出来るんですか?」
「絶対とは言わないよぉ?一旦防御手段を魔法としても、そもそもジュエルグリフォンはそれ以外の魔法を一切使えない種族だからねぇ。そしてその防御魔法も本能的に放つ最後の手段だけあって多用しないから魔力を消費する加減がわかっていないと思うんだよぉ」
つまるところ本当に守るだけに必要な分の消費を理解し、能動的に発動することができれば、魔力を使い切ることもなく多用することができる、と?まぁ理屈は分からなくはないがそんなこと出来るのかね……?
「案外出来ると思うよぉ?」
「その心は?」
「一つは内包している魔力量――サピロス、ロゼちゃんちょっと来てくれるかなぁ?」
「ぴぁー?」
「ぴょー!」
部屋の隅っこで遊んでいたサピロスとロゼが呼ばれて鬼林さんの下へと飛んでいく。そして鬼林さんはそんな2匹を机の上にに座らせると体毛で少し隠れた魔宝石のをそれぞれ露わにさせていく。
ロゼの魔宝石は毎日見ているからな。いつも通り輝いて宝石に興味がない俺でも質の良いものと分かる。対してサピロスの方だが……ロゼとは異なり青色のサファイヤのような魔宝石だな。こちらもいい輝きをしている。だがしかし――
「分かるかなぁ?サピロスに比べてロゼちゃんの魔宝石に内包されている魔力は非常に多いんだよぉ。ま、差をしっかり理解できるのは私たちのような魔女みたいな亜人や魔法に長けた人間、モンスターくらいだろうけどぉ」
あ、そうなんだ。俺も気づけたってことはハイエルフも魔法に長けた種族ってことでいいんですよね!いや、俺自身魔法使えないんだけどさ!
「そんな魔力を有しているロゼちゃんであれば、コスパを抑えた防御魔法を複数回発動することはできるだろうねぇ。……それにしても本当に多いねぇ、同じジュエルグリフォン飼いとして知りたいんだけど普段何を食べさせてるのぉ?」
おっと突っ込まれた。もしかしたら聞かれるかなーとは思っていたので回答の準備は万全だ。
「俺達が食べてるものとおんなじものを食べてますよ?あとは鳥とか猫のペットの餌とか……」
あの女々さん、視界の端で一瞬目配せされてますけどマンドラゴラのことは言いませんて。ユグドラシルのことはあなたにも言ってないけどね!!!
「ふぅん……普段ということはダンジョンの食材かぁ……本当にそれだけで変わるのかなぁ?ロゼちゃん特有?まぁちょっと試してみようかなぁ」
「それは鬼林さんでお試しいただくとして……出来ると思う理由ってまだあるんです?一つはって言うとまだあるように聞こえますけど」
「あぁ、ごめんごめん。脱線しちゃったねぇ。もう一つの理由なんだけどさ、教師役と言うか見本がいるからだよぉ」
「見本?」
防御魔法の見本とな?――あぁ、オーロラのことか?ジュエルグリフォンが使うような防御魔法とは勝手が違うかもしれないが、オーロラも魔法を使って防御することは出来るからそれを見て学ぶと?え?違う?
「君ぃ」
「俺?」
――なんで?




