【西洋】黄金のスープ【おでん】
「ってことで――」
「「乾杯!」
「ぴぁー!」
『乾杯!』
『色々ツッコみたい所あるけどkp!』
『kp』
大きな鍋に入ったポトフを俺、オーロラ、ロゼの皿にそれぞれよそい、いつものように乾杯の音頭を取る。なんか乾杯コメントに紛れて変なことを書き込んでいる視聴者もいるが一旦無視する。
まず最初に手を付けるのは――ポトフに入ったじゃがいもである。黄金のスープを吸うことで元々の薄黄色の身の部分も黄金色に輝いているようだ。そうか、じゃがいもは黄金の果実だったんですね……。
ぶっ刺して楽して持ち上げたい気持ちをぐっと堪えて少々大きなじゃがいもを箸で挟む。身がスープを吸いほんのり柔らかくなったことで箸がしっかりと食い込む。そしてそれを眼前まで持ってきて大口を開けて齧りつく!
「うンまはっ!」
『よく冷まさずに齧りつけるな』
『oh……Wild Elf……』
『海外ニキもいます』
じゃがいも本来のホクホク感にポトフのスープが組み合わさったらどうなると思う?いやもう神ですわ。野菜や肉の風味がじゃがいもを咀嚼するだけで口の中に流れてくる。フフフ、これにはビールが合う。……後でワインも飲もうね。
『そろそろツッコみたいんだけどジョージ分のじゃがいもはカットせずに丸ごとなのはなんで?』
「じゃがいもを口いっぱい頬張りたいから」
実はポトフを紹介し始めていてからちょくちょく流れていたそんなコメントに対して端的に答える。そう、俺の分をよそったポトフの皿には皮を剥いたじゃがいもがカットされていない状態で複数個鎮座していた。
無論オーロラやロゼの口には丸ごとのじゃがいものサイズは流石に大き過ぎるので、一口サイズにカットしてある分も入れている。
『まぁカレーでじゃがいも大盛りだったんだ。予想はできていたか』
『それにしてもメインであるベーコンとソーセージ押しのけて初手に食べるのがじゃがいもかよ』
「ウチ、ルール無用の酒飲みチャンネルなんでね。まぁご安心ください、これから食べるさ。まずはソーセージから――」
2種類あるソーセージの中から少し赤いソーセージ、ワイルドオークのソーセージに齧りつく。――ほほう。とりあえずは自家製脳内で食レポを垂れ流したいところだが、この場にはワイルドオークジェネラルのソーセージも存在する。そちらも食べてから比較するように味わったほうがいいだろう。
という訳でビールでさっと口の中に残った味わいを洗い流し、今度は白っぽいワイルドオークジェネラルソーセージを口にする。皮に同じ羊腸を使っているからパキッとした食感はほぼ変わらないが、中身は結構違うものだな。
「オーロラとロゼはどっちが好き?」
「白いホウ!」
「ぴぁー!」
なるほど、オーロラはワイルドオークジェネラルの方でロゼはワイルドオークの方が好きなのか。
『ジョージはどっちよ』
「強いて言うならワイルドオークの方かなぁ……」
ワイルドオークソーセージは食べた瞬間ガツンと野性味あふれる味わいと脂が爆発が口内で暴れまわる。もうこれが濃くて濃くて最高なんだよね。ビールがめちゃくちゃ進む。
対するジェネラルの方なのだが、打って変わってこちらは予想に反してあっさりとした感じなのだ。脂もどこか甘さを感じられ、ワイルドオークの方は一本で十分な満足感があるのに対してジェネラルは次へ次へと求めたくなるような感じがある。こちらはワインが合うかもね。
間違いなくどちらも美味いのだが――あえて、あえてだよ?一方を選ぶとするならば、俺の中ではワイルドオークの方に軍配が上がる。やっぱり元男だけあってかガツンとした味わいの方に惹かれてしまうのかもしれない。
――で、なんだけど……視聴者には伝えてないというか伝えられないことなんだけど燻製の風味がとんでもない。いや、どちらも肉の味を確かに感じられているから主役を乗っ取っているわけではない。だが、ユグドラシルの味は間違いなくこのソーセージに在る。
やべぇよユグドラシル。燻製の素にすると燻した食材本来の旨味をさらに高めることが出来るのかよ。なんでも出来るな、お前は。何を持ち得ないのだ!?……あ。そういえばとコメント欄に視線を落とす。
『自家製かー、俺も作ってみるかな』
『冷やしながら作れよ。常温で作ったら不味いぞ』
『確かネギの皮で作るってやつもあったよな』
『いや、無理に作らずとも市販で美味いやん』
よし、どうやら視聴者から見ても俺は発光していないようだな。流石に予告もなしに俺が発光すれば誰かしらが反応してコメントが埋め尽くされることになるだろうが、それが無いということはそういうことなのだろう。ちょっと安心。
それじゃ安心したついでにベーコンもいってみましょうかね。
――おぉ、結構厚切りにしたんだが、すっと歯が通る。だが肉肉しさは十分にあり、ユグドラシルの香りもまたそれに一助となっている。ソーセージもそうだったが、そのまま食べる以外でもチャーハンに混ぜたりほうれん草と一緒にして食べてもいいかもしれない。
「よし、それじゃ次はジャーマンポテトを――」
「ジョージ、次はコレがいい!ナカミ気になる!」
おおっと、ジャーマンポテトに箸を伸ばそうとしたらその先にオーロラが割り込んできた。そして別皿に盛られたアルミホイルで包まれた丸い物体を指さしてそんなことを言い出した。
『オーロラちゃんも知らんかったんかそれ』
『オシエテーオシエテー』
ふむ、まぁいいか。別に順番が決まっているわけでもないし。
「いいだろう、んじゃ次はコレにしようか。ただそうだな――開封前に言っておくとコレは」
俺はここでわざとらしく一拍置き、さらには悪役をイメージして口角をクイッとあげながら次の言葉を口にした。
「爆弾だ」




