お土産 for you
「ほー、ホッカイドーのダンジョンに」
「そうそう、レギオン・ハルニクスってのと戦ったんだよ」
「あぁ、あのデカブツ……それはご苦労様なのだよ。お土産のチョコもありがとうなのだよ」
「チョコオイシー!」
戸中山ダンジョンの隠しエリアに生えているユグの木を経由してやって来ていました、ハーフエルフたちが管理している秘匿ダンジョン。
そして目の前でお土産の生チョコレートを頬張る俺に似た幼女は世界樹ユグドラシル御本人。見た目幼女でもその腹は異次元のごとく。用意した結構な数の料理――をペロッと完食したうえでの今のデザートだ。世界樹的にも甘いものは別腹なのだろうか。それとも別腹を用意するでもなく本腹のまま食べているのか……本腹ってなんだ。
まぁ美味そうに飯も食って、お土産でも喜んでもらえているのならいいか。
ちなみにハーフエルフたちへは、北海道定番の個包装されているスナック菓子土産を何箱も渡した。代表してアンネッタに渡したが「大事にさせていただきます」と言っていたのが気になるところ。食べてくれよ?
そんな感じで俺達も自分用の生チョコレートを食べ、玄米茶を飲みながらネイムル牧場ダンジョンでの出来事を話していると――そういえばとユグドラシルに話していないことを一つ思い出した。
「あー、そうだ。ジュエルグリフォン飼うことになったんだ。ゆで卵にしようと思ったら卵から孵ってな」
「ジュエルグリフォン?また珍しいモンスターなのだよ」
「あ、やっぱりユグドラシル目線でも珍しいんだ」
「なのだよ。あれはとことん貧弱な上に目立ちやすい宝石を生やしているもんだから他のモンスターに狙われて個体数が少ないのだよ。エルフたちも成体を見つけたときは――あー、いや。なんでもないのだよ」
おや、話の流れからしてエルフたちが生きていた頃の世間話をするのかと思いきや、俺を見るなり気まずげに話を終わらせてしまった。……あぁ、なんとなく察しがついた。確かに飼ってるやつに対して話す内容ではなかったか。
「しかし、幼体までは見たこと無いのだよ。幼体となると宝石が好きなモンスター――竜種とかガーゴイルの巣で大切に育てられることが多くてそれこそ人目につかないのだよ」
「それもそうか」
ロゼの卵を見つけたのは遥か高い場所に位置するワイバーンの巣の中だったからな。俺のようにわざわざ登ってワイバーンと対峙して卵ないし幼体を回収するのは難しいというか面倒くさいだろう。100%ジュエルグリフォンの卵があるという保証もないしな。
「……少し見てみたくはあるのだよ」
「うん?それじゃあいつか連れてこようか?」
「あれ?いいのだよ?」
「まだまだ赤ん坊レベルだから今すぐには難しいかもしれないけれどな。戸中山ダンジョンの入口から隠しエリアに行くくらいならよっぽどなイレギュラーがなければ大丈夫だろ」
これは驕りでもなんでもない。今の俺なら戸中山ダンジョンに出現するモンスターぐらいであれば余裕で対処できる。
今まで遭遇してきたイレギュラーであるアカオオダイショウや四つ腕熊も降してきたからな。なんならそいつらが束になって襲いかかってきてもヤドリギ先生投げたら解決するだろう。
懸念点があるとするならばロゼの好奇心か。ロゼは誰が見ても賢い子だが、やはりまだ生後間もない赤ん坊。あらゆるものが珍しく興味の塊に映ってしまうだろう。あっちへふらふら、こっちへふらふらと飛ばれてしまっては、守れないとは言わないがこっちの神経が削れてしまう。
北海道に行く前に武道さんへロゼを預けたときのように犬用キャリーバッグに入れて運ぶという手もあるが、ロゼにはダンジョンの中とはいえ広い世界を味わってほしいという思いもある。そのため、もう少しロゼが聞き分けできるようになってからであれば連れてこれるというわけだ。
「わかったのだよ!その時を楽しみにしているのだよ!あ、その時には事前に教えてほしいのだよ?」
「あぁそうするよ」
それほどまでにジュエルグリフォンの幼体であるロゼをひと目見たかったのだろう、ユグドラシルがその見た目らしくぴょんぴょんとその場を飛び跳ね、喜びをあらわにする。
うんうん、喜んでもらえて何よりだよ。――これで、これから俺がする頼み事がしやすくなるというものだ。
「あのさ、ユグドラシル。一つ用意してほしいものがあるんだけど……」
「うん?なんだのだよ?」
「燻製に使える香りが強い枝とか……ある?」
そう、今回この場所に来たのは約束の1ヶ月に1回の訪問で尚且つお土産を渡すという目的だったが、実はサブ目的があったのだ。それが燻製用の枝をもらうということ。
今まで食用としてもらった分は平らげてしまったからね、それに食用と燻製用とでは多分色々違うだろうし。
「燻製?――あぁ、なるほどなのだよ。それくらいいいのだよ!」
「おぉありがとう!」
「お安い御用なのだよ。にしても我の一部で燻製とは譲二は発想が面白いのだよ。エルフでもそんなことしてなかったのだよ」
「それ褒めてる?」
「褒めてるのだよ。よし、これでいいのだよ?」
ポンと手元に置かれた燻製用の枝。少しだけ食用の枝に比べて白っぽいか?それにしても……ユグドラシルのことだから本当に褒めているつもりなんだろうな。
あ、受け取っておいてなんだけど一つ確認するのを忘れていた。
「すまんユグドラシル。この枝を使って燻製した食材食べたらまた俺の体光らない?配信に使うつもりだから光るのはちょっと困るんだけど」
「大丈夫大丈夫。今の譲二ならその程度で光らないのだよ」
そうなんだ、それなら安心だな!……ん?




