【お待たせ!】1週間ぶりだね!!【待った?】
「うっす」
「ウッス!」
『"はぁい皆の衆"はどうした!』
『こちとら約2か月待ってたんだぞ!失踪したかと思った!』
「空けてたの1週間ほどのはずなんだが……?」
それに挨拶についてはちょくちょく使っているのは否定しないけどそれが正式なものという訳でもないからな?別に使わない日もあったはずだ。
そんな訳で調査期間が終わって自宅に帰った翌日の夜。お久しぶりの酒飲み配信の始まりだ。心なしかいつもよりも視聴者数が多い気もするが、1週間空けた分見に来た人が多いというだけだろう。断じて2か月間も空けてはいない。おかしな視聴者もいたものだ。
さて、今現在テーブルの上には配信機材以外何も――ないことはない。すでに開封済みのストゼロが俺とオーロラの分、それぞれありますね。ホテルでもそれなりに飲んでいたが、やはり自宅で飲むストゼロが一番美味い。
『1週間も何してたの?』
『男か?』
『ネイムル牧場ダンジョンに行ってたんだろ!』
『調査期間と休んでる期間ピッタリすぎるんだよw』
「はい」
「ハイ」
『はい』
『はい!?』
『もっとこう、はぐらかすとかないんですか?』
「はぐらかしてほしいのか?ネイムル牧場ダンジョンの調査に参加してました」
『なんというド直球ストレート』
『キャッチャー球威で吹っ飛んだだろ』
はい、ネイムル牧場ダンジョンに行っていたことバラしました。隠すほどのものじゃないしなぁ……言ってしまえば今までと同じようにダンジョンに行っていたことと何ら変わりないし。
それに変にはぐらかしてしまえばそれこそ変な勘繰りとかされてしまうし。今のだって『男』ってなんじゃい、アホか。
「んじゃ空けてた期間の説明も終わったことだし、料理持ってくるから。待っててなー」
「イッテラッシャーイ!」
『え、調査についてkwsk』
『待って背中にロゼちゃんぶらさがってない?w』
『猫かよw』
『グリフォンなら広義的に言えば猫ちゃんと言っても差し支えない……ない?』
そんなコメント達を尻目に、俺は背中に下へ引っ張られるような重さを少し感じながらも気にも留めずキッチンへ料理を取りに向かうのであった――
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「お待たせー、一旦これ等が今日の酒の肴になりまーす」
「マッテましたー!」
『氷の上にのった……肉のタタキ?にカツか?天ぷらもあるな?』
『相変わらず料理スキル高いな。どれも美味そう』
『料理の説明もしてほしいんだけど、背中のロゼちゃんについても説明してもらえない?』
「ん?あぁほら、ロゼ挨拶しとけ」
「ぴぁ」
背中に張り付いていたロゼが俺の肩から顔を覗かせ、しっかりと視聴者に向けて挨拶の意の一鳴きをあげる。
さて、ロゼがこんな風になってしまったのは昨日家に帰ってからだ。そう、ネイムル牧場ダンジョンからブラックさんに戸中山ダンジョンまで送り届けてもらった後、武道さんからロゼを引き取った際は預ける前と変わらない様子だった。そもそも毎夜ビデオ通話してたしな。
だが、家に到着して犬用キャリーバッグから出した瞬間食事とトイレ以外ずっとくっついているようになってしまった。オーロラが言うには単純に寂しかったようで色々と充電中なのだとか。「アシタにでも元通りになるんじゃない?」ってさ。まぁこれで埋め合わせになるんならいいけども。武道さん宅ではとてもいい子にしていたそうで、武道さんの奥さんである冬子さんとも仲良くなったそうだ。
「――ということ」
『はぇー、かわいい』
『うちのネコちゃんなんて1週間出張で顔合わせなかっただけでやんのかステップしてきたぞ』
『顔覚えないほどお前に興味なかった可能性』
『ひどない!?』
「ほら、メシにするからロゼも降りな?ロゼの分もちゃんとあるから」
「ぴぁ」
言えばおとなしく降りてくれるんだよな。降りたとて胡坐かいてる俺の足の上に座るんだけども。
「じゃ料理の説明な。まずこのオーロラ作の氷の皿にのっている肉料理はスノーウルフのタタキだな」
『ウルフ系って食えるんか?』
『冒険者じゃない人からしたら馴染みないかもだけど普通に食えるぞ』
そんなスノーウルフのタタキが氷の皿の上にのっているのは何も演出という訳ではない。調べたところによると、スノーウルフの肉は熱い時よりも冷えている時の方が味が出るそうで、調理のために少し火を通した後はずっと冷やす必要がある。だから氷の皿にのせる必要があったんですね。
「はい、これはネイムル牧場ダンジョンで採取した山菜たちの天ぷらね」
『種類をお伺いしても?』
「えーっと、これがオオユキノシタでしょ?氷芽に雪白葉、氷縫草に氷柱の露草……」
『待て。まて』
『ジョージさん、それは世間一般的に言う薬草では?』
「……そうともいうね」
『え?食べるの?すでに天ぷらになってるけど』
「調理しておいて食べない方が失礼では……?ちゃんと卸す分は卸してるが?」
『氷柱の露草ってダンジョンの氷柱にごく稀に生えるレア薬草じゃなかったか……?』
「3本採って2本納めたんだから許されるだろ」
『ほ、ほなええか……?』
いやー、氷柱の露草を見つけたのは中々幸運だったと我ながら思わずをいられないな。合体鎧を倒した翌日にぶらりと探索していた際に偶然見つかった。ダンジョン省としては3本すべて卸してほしそうだったが――そこは諦めてもらった。
「で、最後のこれね。これはグラキエル・ペンギオスのカツ」
『ペンギンみたいな名前だなw』
『ペンギンのモンスターだもの』
『え。くえんの?』
『食える食える。ペンギオスの群れと戦うのはキツいけど。ジョージ1人で狩ったの?』
「いや?」
『そらそうやろwオーロラちゃんいるしw』
「あ、いやそういう意味じゃなくてだね。斃したの1匹だけなんだよ。他のペンギオスとは遭遇してなくて」
『ハグレものってこと?』
「あー、ハグレもの……でいいのかな?ペンギオスの皇帝級」
あ、コメント止まった。多分俺の言ったことを咀嚼しているんだろうな。ちなみにこの情報についてはダンジョン省から公開しても問題ないと許可をいただいたうえで話しているから後で怒られるというのはない。
むしろ、俺自身のことをいくらか話さないように他の冒険者に伝えてねーとは周知してもらった情報の方が多いかもしれない。いや、多いわ絶対。
『皇帝級?』
『いわゆるボス的な?』
「安心して最終的なダンジョンボスではないから」
『中ボスでも相当だろ』
『もしかして:ネイムル牧場ダンジョン高難易度ダンジョン?』
『公開されても行くのやめよかな……』
「あ、ダンジョン内の動画とか写真いくらかあるけど見る?」
またコメント止まった。おかしいな……流石に連続で視聴者たちの手が止まるとは考えづらい……YouTube君不機嫌か?
無論、動画写真もダンジョン省から「これならええよ」と渡されたデータだ。それをさらに俺の方で何回も確認したから他の冒険者に迷惑をかけるなんてことは無い筈だ。フラグでは断じてない。




