そんな合体シークエンス子供泣くだろ
スマートフォンに冒険者組合から送られてきた地図とオーロラの感覚を基に異常を検知した地点へと向かう俺達。先ほどの職員の声音から事態は割と深刻なのかもしれないので、出来るだけ早く走っているのだが……如何せん整備されていない雪道なのでスピードが出ない。
ヤドリギ先生は万が一の時のために力を温存しておきたいから使えない。オーロラの魔法も同じだ。戸中山ダンジョンでやったことのある木から木へジャンプというのも、枝に積もった雪に滑って転落するリスクを考えると現実的ではないな。であれば――
「ぃよいしょー!」
ウォーハンマーのスキル、空打で空気の弾を打ち飛ばして雪を吹っ飛ばし、その上を走る。これならば俺の消費も軽微だし一々ウォーハンマーを振るわなければいけない手間はあるが幾分かは楽になるだろう。
そうして振っては走り振っては走りを続け、ようやくその地点に近づいて来たところで視線を上に受けてみると、そこにはわかりやすく異変があった。
「なんだアレ……!?」
「エェ……?」
思わず足を止め俺が驚愕、オーロラが困惑の声を漏らしてしまったが、致し方ないことだろう。何故ならそれほどまでに変な光景がそこにはあったのだから。
目に入った情報を簡潔に伝えるのであれば、バラバラになった鎧のパーツ、兜/胴/手甲×2/脚甲×2の計6つが浮いてました。その内の1つ――胴の部分には見覚えがあるな。
「ありゃペンギオスが付けてた鎧……だよな?」
「ウン、間違いないと思う」
巨大ペンギンことグラキエル・ペンギオスの皇帝級が装備していた鎧ゴーストウェポンと瓜二つなのだ。あのトゲトゲとした見た目……間違いない。だが、あの時と違う点がある。ペンギオスが装備していた時よりも一回り大きくなっている気がする。
いや、まぁ、うん合体するんだろうな。あそこまで綺麗に鎧のパーツが揃ってまるで見せつけるように円を描きながら浮いているんだから合体するんだろうな。俺としては戦隊もののように――こう、ガシンガシン変形しながら合体していく様を見たいんだよな……ん?
よく見ると鎧の各パーツ、本来であれば手や足、体を突っ込む穴からなんか溢れ出してきているな。どす黒くてドロドロして……ありゃ泥?いや、スライムか?控えめに言って嫌悪感を覚えるそれは今まで鎧のどこに詰まっていたのかと突っ込みたくなるくらい溢れると各パーツのスライム同士結合し合っている。
おや、なんか爆発のようなものが合体途中の鎧の周りで発生しているが、バリアのようなもので防がれているな。なんだあれ、変身途中の邪魔をさせない特撮のお約束バリアか?
「ジョージ、ヤドリギは?」
「あー、そうね一応……ダメだわ」
オーロラからの提案に乗ってヤドリギを投げてみようかと思ったが、無理ぽ。"当たれ"ぐらいの願いならいけそうだが、"合体の邪魔しろ"とか"射貫け"とかはダメだな。そんでただ当たるだけでも多分あれはどうにもならんな。
「ひとまず急ぐか……!」
「オー!」
まだ完全に合体はしていないようだが終わり次第暴れそうな予感がひしひしと伝わる。その前に少しでも近づくことが重要だろう。とりあえず分かりやすい目印が出来たからペース上げていこうかな。俺はヤドリギをAカードにしまい、改めてウォーハンマーを合体中のゴーストウェポンのいる方角へ振りまくった。
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進んでいる最中、声にならない叫びのようなものが聞こえたかと思えば空気が震えたのを感じた。恐らく合体が完成したのだろう。合体したものが実は味方側で迫りくるモンスターから冒険者たちを護っていたのだった――なんて展開は流石に出来過ぎなようだ。
その地点に到着した俺たちがまず最初に見たものは――手甲の拳が一人の冒険者を叩き潰そうとしている瞬間だった。
「ジョージアレ!」
「チッ!」
舌打ちをつきながら周りの状況を見る。他の冒険者――あれは柊か――がそれに気づいて助けに向かおうとしているが、間に合いそうにない。ヤドリギ――トネリコの弓は出してる暇ないか!
構えて狙いを定める時間を惜しんだ俺はAカードからヤドリギの矢を引き抜き、その勢いのまま願いを伝えて手甲目掛けてブン投げる。"弾け"と。ンン゛ッ疲れるなぁ!?
一瞬、ヤドリギの矢の軌道がブレた気がしたが、すぐに取り直し手甲に直撃した。そして俺の望み通り、ヤドリギの矢は手甲をまるで磁石の反発のように弾き返す。その一撃を喰らった手甲の根本、合体ゴーストウェポンは倒れ――ないな。バランス崩して尻餅ついたりはしてくれないか。
「木原君か、すまない助かる!」
「ハイハイー!」
潰されそうだったのは柊が率いる"薫風"のメンバーだったか。命の危機だったことでへたり込んでしまったそいつをお姫様抱っこで抱え上げた柊が俺に気づいたのか礼を言ってくる。俺はそれを軽く返し再び柊たちに襲わんと手を伸ばす合体ゴーストウェポンに向けて今度はウォーハンマーの空打空気砲で迎撃する。
それにしても離れていても分かっていたが、改めて近場で見てみると――
「デカ過ぎんだろ……」




