2日目終了――ッ!!
「このサイズにこの傷跡――報告にあった逃走中のグラキエル・ペンギオスの皇帝級で間違いないですね」
「やっぱり皇帝級かー、んじゃ一部お肉は引き取りますんで」
飛び去って行く鎧ゴーストウェポンを不服ながらも見送った後、俺たちはペンギオスの死体を回収しダンジョンから退出した。情報量が多いしそれなりに疲れたからね、別に探索ノルマがあるという訳でもないから問題ないだろう。
ってな訳で、現在本日の成果を報告しているのだが――やはりというべきかあのペンギオス、件の皇帝級だったことが判明。相模原ダンジョンで遭遇した"戦艦"の名を持つ追跡ガツオの異常個体といい、そういう手合いに縁があるなぁ……美味けりゃいいんだけど。
そうそう、帰る途中にあらためてしっかり調べてみたらグラキエル・ペンギオスはちゃんと美味しく食べることが出来るらしい。まぁ、元々のペンギンが食べられていないようだからレシピはほぼ無いに等しいのだが。まぁ色々やってみるか。
「一部お引き取りで了解しました。次にオオユキノシタをはじめ、氷芽に雪白葉など大量の薬草、こちらにつきましてもありがとうございます」
「あ、こちらも一部引き取りで」
「おや、木原様調合もされるのですか?」
「食べます」
「ハイ?」
「食べます」
「え、えーっと……薬草なんですが……」
「食べれるようなので」
「アッハイ」
いいじゃん、食用に持ち帰ってもさぁ!でも薬草を全部食べるために持ち帰ったらそれはそれで体裁が悪いと思ったから大量に採ってきたんだからいいでしょうに。いや、食用に結びつかなかったからこその狼狽か?いや理解してくれたならいいけど。
さて、撮影ドローンを返却して納品も終わったことだしホテルまで戻りましょうかね。卸の担当をしてくれた職員さんにタクシーを呼んでもらうよう依頼して待っていると知っている顔から声をかけられた。薫風というパーティのリーダーを務める女性冒険者、柊だ。後ろには昨日いなかったパーティメンバーたちが揃っている。
「やぁ、昨日ぶり。今日はもうあがりかな?」
「どうも。そ、これからホテルに戻るところ。そちらは逆にこれから?」
「あぁ、私たちはいつもこの時間帯から潜っているんだ。……タクシーを待つ間だけでも情報交換しないかい?」
「ん?まぁいいけど」
「ハァ……ジョージ、チョット行ってくるね」
俺の肩に乗っていたオーロラが分かりやすくため息をついてそんなことを言い出した。どこに行くのかと聞く前にオーロラが指差した先には――あぁ薫風のパーティメンバーの1人ミズキの周りを何かを探すように飛び回る妖精クリスか。
そうだった、オーロラは今認識阻害アイテムで俺以外に姿を隠しているからどこにいるのかと探しているのか。でもそこでため息をつくのであれば会わなくてもいいのでは?と思わなくもないが、付き合いとかあるのだろう。行ってらっしゃい。うわ、クリスすごい勢いで食いついた。落ち着けオーロラ!早々にめんどくさそうな顔するな!
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オーロラが謁見に応じている最中、昨日今日の探索で得た情報を柊と話していたのだが、とある話題で柊が分かりやすく反応を示した。
「そうか、ペンギオスを倒したんだね」
「狙ってたか?」
「狙っていたというか……昨日ペンギオスを逃がしてしまったのは私たちなんだよ。尻拭いをさせてしまったね」
苦笑いを浮かべながら頬を掻く柊、その表情は申し訳なさそうだった。俺としては遭遇に驚きはしたものの、無事討伐出来て食料もゲットできたから尻拭いをしたという感覚は一切ないから気にしなくてもいいのだが。
気にしなくてもいいことを伝えたうえで念のため、ペンギオスが装備していた鎧ゴーストウェポンについて聞いてみると、彼女らが初日にペンギオスに遭遇した時は子分のペンギオスを多数連れてはいたものの、皇帝級のペンギオスは何の装備も付けていない裸一貫の姿だったらしい。――いや、モンスターは一部を除いてほとんどが全裸なんだけどその表現合ってんのか……?
「その場から離れた手甲のゴーストウェポンと鎧のゴーストウェポン……なんだか合体しそうじゃないかい?」
「否定はしない」
うん、どうしてもその考えに行きついちゃうよな。どちらのゴーストウェポンも一回活動停止させた後の挙動があまりにも似通っていることから通じている可能性は高い。で、どちらも本来は人体を覆い隠し防御するためのもの……合体ロボよろしく組み合わさって人型になるのが目に見えている。
「今回の木原くんの報告で上もその可能性に行きつくだろうね。……まぁその合体ゴーストウェポンを出現させるには恐らくまだ見ぬゴーストウェポンを倒さなきゃいけないんだろうけど」
いるんだろうな、脚部分のゴーストウェポンとか兜のゴーストウェポン……いや待て。そもそもの話、手甲ゴーストウェポンも1体と決まったわけじゃないな。まぁそいつらを倒し切って集めて現れるのがボスというのも確かではないが……ま、俺は変わらずダンジョンを調査して美味いもんを探すだけだな。ゴーストウェポンは煮ても焼いても食えそうにないからな。積極的に探すことはしないでいいだろう。
おっと、そうこうしているうちにタクシーが来たようだ。軽くお別れの挨拶をして薫風はダンジョンへ、俺たちはホテルへと向かった――あの、オーロラさん。えらくさわやかな笑顔をされていらっしゃいますが……あぁ解放されたから。上に立つ者ってのも大変なんですね。
その後の俺達?あぁ、北海道は回転寿司もレベルが高かった――とだけ言っておこうか。




