みんな大好き検証
早速元ゴーストウェポンのウォーハンマーが持っていたスキル、空打を試したかったが流石にダンジョンの出入り口付近では他の人が出てくる可能性だってある。なので、少し歩いて開けた場所にたどり着いた。
にしても猛吹雪なだけあって視界が制限されてしまうな。集中して目を凝らして見れば狙いを定めることはできるが、昨日のスノーウルフみたいに動き回る連中には少々難しくなるかもしれないな。まぁその時は近づいて来たところを叩けばいい話だ。
さて、ここまでくれば大丈夫だろう。スキルがどんな影響を与えるかわからないため、念のためオーロラには服から出てもらって周囲の警戒に当たってもらおう。
「サムイ」
「いや、魔法使いなってば」
「ブー」
頬を膨らませぶーたれながらもオーロラは服から飛び出て魔法で自身の周りの気温を調整する。やはり外気温が低いとそれだけ温度を高める魔法も強めなければいけないようで、相応に魔力を使うらしい。言うてオーロラならその気になれば維持し続けるのだろうが。
ではAカードからウォーハンマーを取り出して一旦素振り。……ウォーハンマーの素振りの仕方がよく分からないから剣道のように上下振りをしたり野球のバットのように両手、片手と色々変えながら振ってみる。
うん、やはりこの振るときに感じる重さ、いいな。ウォーハンマー、見た目相応に吽形よりもしっかり重いのだが、それ故に安定感があって振っていて非常に楽しい。吽形の重さは慣れちゃったし、硨磲の盾は使用者に重さを感じさせないスキルがあるから、大丈夫と分かっていても敵の攻撃を受けるとき壊れないか一瞬不安になるんだよな。
それじゃ素振りもそこそこにしておいて、そろそろ空打の実験を始めようかな。何も考えずに素振りをしていたが、空打らしき現象は発生しなかったことから意識して念じることでようやく発動するスキルなのだろう。であれば昨日のスノーウルフ戦とかでとっくに発動していたか。
とりあえず、剣道の上下振りをしながら念じてみるかな。えーっと"空打"。
「うおっ?」
「エ?」
おそらく空打の効果と思えるそれは如実に表れた。振り下ろす途中に念じたのだが、力が抜ける感覚と共に何かを殴りつける感覚が手を伝ったかと思うと、振り下ろした先にある積雪部分が大きく凹んだ。まるで鉄球を垂直に落としたかのような跡だ。
力が抜ける感覚とは魔力のことだろうが……なんで雪面を叩いていないのに凹んでいるのかと考えると、やはり振り下ろす中で感じた殴りつける感覚か。しかし、素振りなだけあって当然振ることを邪魔するものなんて――
「クウキじゃない?」
「空気?あぁ、なるほど。そういうことか」
オーロラの言葉に得心がいった。空打の「殴れないものを殴れるようになる」というのは、多分物質かどうかに関係なく、"そこに存在するもの"を殴れるということなんだな。だからさっきは空気を殴って殴られて打ち落とされた空気が雪面を凹ませたと。
「当たらない相手でも、殴ったことにしてくれるスキル……結構有用なのでは?」
「ベンリだけど魔力はダイジョウブ?」
「あー、確かに抜ける感覚はあったがヤドリギに対する軽い願いよりも全然減ってないしあまり気にする必要ないかも」
ヤドリギにはモンスターを倒すだけの願いに留まらず、魚型モンスターを〆てもらったり分裂してもらったり、果てはじょうろ代わりにしてきたこともあったが、そのどれよりも魔力が抜ける感覚は軽微だった。それでこの効果であれば大当たりを引いたかもしれないな。
「ア、ジョージ来たかも」
「スノーウルフ?」
「ウン。1匹だね。」
ガチ一匹狼か。オーロラが指差す先を目を凝らして見てみれば――ンン、ちょっと待って吹雪が鬱陶しい。あ、見えた。積雪にほんの少しこんもりとしたものが出来てそれがこちらに向けて少しずつ近づいてきている。スノーウルフは待ち伏せばかりかと思っていたが吹雪の時は視界の悪さを利用して進んで襲ってくるのか。まぁ見つけてしまえばこっちのもの。
ククク、喜ぶがいい。君は崇高なる実験の被験者第一号となるのだ……!
「ぃよいしょっ!」
バットを振るう要領でウォーハンマーを振り、空打を発動させる。殴りつけられた空気はまっすぐスノーウルフに向かって――いや見えないなこれ!殴ったの空気だから当然か!?
「ギャインッ!?」
あ、でもなんか悲鳴と共にスノーウルフが吹っ飛んだ。スノーウルフがいた地点の雪は結構抉れ、もはや地面まで見えており、その威力の高さが伺える。さて吹っ飛ばされたスノーウルフは……何とか立ち上がったようだがその足は覚束ない。一撃で仕留めれはしなかったが、かなりのダメージは与えられたようだ。
撤退しようとしているのかそのふらふらしながらも俺のいる方向から反対へ進もうとしているが、そうは問屋が卸さない。今一度ウォーハンマーをフルスイングして空気弾と飛ばし今度も直撃。今度は悲鳴を上げることもできず、スノーウルフは倒れ伏し絶命した。
「オーロラ、他はどう?」
「ンー、大丈夫!」
オーロラに確認して周りに敵がいないことを確認してスノーウルフの死体を回収する。そういや地面が露わになっていたんだっけな。さーて、雪の下には何があるかな……こ、これは!ユキノシタ!にしては葉っぱ大きい気もするけどユキノシタじゃないか!




